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ZEB化とは?具体的な導入方法やメリットをわかりやすく解説

ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、ゼブと読みます。政府が数値目標を掲げ、普及を推進している建築物省エネ施策の1つです。新築はもちろん、既存建築物もZEBにできます。

しかし、具体的な進め方やコストの相場がわからず、施主への説明に不安を抱く人もいるのではないでしょうか。

今回はZEB化について、概要や導入方法、コスト面、利用できる補助金まで詳しく解説します。

 

ZEBとは何か

はじめに、ZEBとは何か、また似た用語であるZEHとの違いを解説します。

ZEBとは

ZEBは、1年に消費する一次エネルギー収支が実質ゼロになる仕様の建築物です。次の2つの考え方が基盤となります。

  1. 省エネ技術を駆使し、エネルギー消費量を削減する
  2. 再生可能エネルギー設備を導入し、エネルギーを創り出す(創エネ)

政府が掲げるZEBの数値目標

政府は2014年に「第4次エネルギー基本計画」を策定し、ZEBの普及に数値目標を設定しました。とりまとめでは、2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す、とされています。

ZEBに関する政府発表の詳細は、資源エネルギー庁のホームページをご覧ください。

ZEBとZEHの違い

ZEBは、ビルや工場、学校といった、大勢の人が利用する建築物に対するエネルギー対策です。一方、ZEH(ゼッチ)は一般住宅向けのエネルギー対策を指します。どちらも省エネ性能の高い建築物に関して定めますが、対象となる建物用途が異なります。

ZEBの種類

ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)|環境省

 

ZEBは、建物の用途および一次エネルギー消費量削減率により、4種類に分けられます。

ZEBの種類 建物用途 省エネのみ 創エネを含む
ZEB すべて 50%以上 100%以上
Nearly ZEB すべて 50%以上 75%以上
ZEB Ready すべて 50%以上
ZEB Oriented 事務所・学校など 40%以上
上記以外の用途 30%以上

 

ZEBとNearly ZEBは、創エネ設備の導入が必要です。

ZEB ReadyとZEB Orientedはエネルギー使用量の削減のみで、認定を受けられます。

また、ZEB Orientedは、延床面積1万m2以上の建築物が対象で、未評価技術の導入が必須です。未評価技術とは、省エネ効果が認められるものの、ZEBを評価するプログラムでまだ評価されていない技術です。

 

建築物をZEB化する方法

ZEB化は、「建築物の消費エネルギーをいかに減らすか」「エネルギーをどのように・どれくらい創るか」という2つを軸に進めます。省エネと創エネの観点から、ZEB化の方法を解説します。

ZEB化と省エネ

省エネは、建築物の使用エネルギーを減らす施策(パッシブ技術)と、必須エネルギーの使用効率を上げる施策(アクティブ技術)とから成ります。

断熱性向上や日射利用は、パッシブ技術の例です。外皮性能向上による高断熱は室内の温度維持に貢献し、日射を適切に遮蔽・利用すれば冷暖房効率が向上します。

アクティブ技術は、高効率設備の導入で実現します。中央熱源方式・個別分散熱源方式などは空調効率を高め、LED照明や照明制御技術は照明の効率を向上させます。

ZEB化と創エネ

太陽光発電システムは、もっとも汎用的な創エネ技術です。とくに、オフィスビルや商業施設への太陽光発電システム導入は効果的。施設の利用時間と発電時間が重なるため、創エネした電力を自家消費できます。

ZEBの創エネは、原則的に敷地内に設置されたエネルギー源であることが求められます。創エネ設備の導入が難しい場合は、「電力プランとしての再エネメニューの導入」「環境証書・カーボンクレジットの導入」でも認定を受けられます。

 

ZEB化のメリット

ZEB化すると、建築物の性能が向上します。省エネ・創エネによって光熱費が削減できるため、建築物の競争力が高まり、テナント誘致ではセールスポイントとなるでしょう。高性能な建築物ゆえに、資産価値の向上も見込めます。

発電システムを持っていると、有事に備えられる点もメリットです。地域の拠点として、街の顔として、魅力的な建築物になると期待できます。

 

既存建築物のZEB化に必要なコスト

既存建築物のZEB化には、どのくらいのコストがかかるのでしょうか。事例から、具体的な金額を見てみましょう。

ZEB化コストの事例2つ

  • 久留米市環境部庁舎は、既存の建物をZEB化しました。ZEB化の総工費は、2億500万円(必須設備のみ改修した場合は6,300万円)です。ただし、ZEB化の補助金が1億3,000万円あり、実質負担額は7,500万円と、標準改修から1,200万円アップに留まりました。ZEB化により年間で290万円のコスト削減が見込まれており、ZEB化投資は6.7年で回収できる計画です。

久留米市環境部庁舎|環境省

  • むいかいち温泉 ゆ・ら・らは、2億4,800万円をかけて既存の建物をZEB化しました。必須設備のみ改修した場合の想定工費は、1億1,570万円。ZEB化により、1億3,230万円の工費超過となりましたが、補助金を1億1,300万円受けており、実質的なコスト増は230万円で済んでいます。ZEB化により年間で削減できるコストは、435万円の見込みで、11年でZEB化費用を回収できる見通しです。

むいかいち温泉 ゆ・ら・ら|環境省

ZEB化は既存技術の応用でも実現可能

既存建築物は、建築物を使用しながらの改修工事となるため、工期や設備システムの入れ替えに制約が生まれます。一方で、ZEB化には最新技術・設備が必須とのイメージも先行しており、設計に制約が生まれる既存建築物のZEBは困難である、と考える向きもあるようです。

しかし、実際には汎用技術の組み合わせだけでも、ZEB化は可能です。これまでにZEB化した建築物にも、外皮断熱や高効率空調機、LED照明、太陽光発電など、ありふれた技術が多々、使われています。

下の図は、環境省の補助事業に採択された、既存建築物のZEB化改修で使われた技術をまとめています。最先端の技術・設備が必須ではないことが分かります。

ZEB PORTAL|環境省

 

ZEB化は、先進技術の使用が目的ではありません。大切なのは、建築物の省エネ化です。建築物の状態や地域の気候を踏まえ、既存技術をどのように組み合わせればZEB化が可能か、アイデアを凝らしてみてください。

 

ZEB化促進のための補助金

ZEBは、国が普及を促進する施策です。

ZEB化を進めるため、さまざまな補助金も用意されています。一例を見てみましょう。

ZEB実証事業

ZEB実証事業は、大規模建築物のZEB化を支援する補助金です。

 

対象建築物 新築 10,000m²以上
既存 20,000m²以上
補助率 3分の2
補助対象 ZEB化のための設備費、工事費など(太陽光発電設備は対象外)

 

ZEB実証事業は民間建築物のみが対象です。

また、ZEB・Nearly ZEB・ZEB Ready・ZEB OrientedのすべてのZEBランクが共通です。

ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物の実証事業

ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物の実証事業は、ZEB実証事業の対象とならない建築物のZEB化を支援する補助金です。

 

対象建築物 新築 10,000m²未満
既存 20,000m²未満
補助率 ZEB:5分の3
Nearly ZEB:2分の1
ZEB Ready:3分の1
補助対象 ZEB化のための設備費、工事費など(証明設備は対象外)

 

ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物の実証事業は、公共建築物も対象となります。ただし、2,000m2未満のZEB Readyは対象外です。

また、ZEB実証事業では対象外だった太陽光発電設備(再エネ設備)も、対象となります。一方で、照明設備は対象にならない点に注意してください。

レジリエンス強化型ZEB実証事業

2023年まで、レジリエンス強化型ZEB実証事業という補助金も実施されていました。

ZEB化を支援する制度の多様性を押さえる一助として、紹介します。

 

対象建築物 新築 10,000m²未満
既存 20,000m²未満
補助率 ZEB:3分の2
Nearly ZEB:5分の3
ZEB Ready:2分の1
補助対象 ZEB化のための設備費、工事費など(証明設備は対象外)

 

レジリエンスとは、「困難に打ち勝つ力」という意味です。

その名前の通り、レジリエンス強化型ZEB実証事業は、災害時の活動拠点となれるような公共性の高い業務用建築物を対象としていました。

 

ZEB化を進める手順

既存建築物のZEB化は、以下の5ステップを基本に進めると良いでしょう。

  1. 建築物の現状を正しく把握する
  2. ZEBプランナーに相談する
  3. ZEB化改修計画を策定する
  4. 改修工事を行う
  5. ZEB化された建築物を適切に運用する

ZEBプランナーとは、国の制度に登録されたZEBの専門家です。地域や建物用途などを踏まえ、希望に合う専門家を探して相談します。また、ZEBには認証が必要です。計画がまとまったら、早めに認証を取得しておくと、その後の工程が円滑に進みます。

 

まとめ

ZEB化とは、多くの人が利用する建築物の省エネ性能を高める手段の1つです。

断熱性の向上や日射取得の工夫、創エネなどにより、建築物が消費する一次エネルギー量の収支がゼロになることを目指します。

ZEB化には、専門的な知見が欠かせません。

また、設計がZEB基準を満たしているか、正確に計算する必要があります。

 

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