ZEBとは、「室内環境の質の維持」と「エネルギー消費量の収支ゼロ」を目指した建物のことです。
人が活動している以上、エネルギーは消費されるため、エネルギー消費量そのものをゼロにすることは不可能です。
一方で、使うエネルギーを減らす「省エネ」とエネルギーをつくる「創エネ」を組み合わせることで、エネルギー消費量の収支を正味ゼロにすることができます。
この記事では、ZEBの概要や計算方法、種類別の評価基準について解説します。
ZEBの概要では、ZEHやBELSとの違いについても触れることで、理解が深まるようにしています。
複雑なZEBの種類や計算方法について、分りやすく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
ZEBとは
ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の略称です。
快適な室内環境を確保しながら、建物で1年間に消費する一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことを指します。
似ている言葉としてZEHが挙げられますが、ZEHはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称です。
具体的には、エネルギーの使用量を減らす「省エネ」と、エネルギーをつくる「創エネ」により、エネルギー消費量の実質ゼロを実現します。
ZEBとZEHの目的は同じですが、ZEBはビルや学校、工場などの非住宅を対象としており、ZEHでは住宅を対象としています。
また、第三者評価機関による省エネルギー性能の評価及び表示制度であるBELSも似ている用語として挙げられます。
出典:環境省ホームページ「ZEBとは?」
出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)について」
ZEBを取得するメリット
ZEBを取得するメリットは、主に以下の2つです。
- リーシングへの優位性
- 不動産物件価値の上昇
ZEBを取得するメリットについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
参考:「ZEB(ゼブ)を取得するメリットについて専門家が徹底解説!」
ZEBの種類と対象
ZEBの種類と対象となる建築物は、以下の通りです。
ZEBの種類 | 対象となる建築物 |
ZEB | 年間一次エネルギー消費量がゼロまたはマイナス |
ZEB Ready | ZEBを見据えた先進建築物(外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物) |
Nearly ZEB | ZEB Readyの要件を満たし、かつ再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近付けた建築物 |
ZEB Oriented | ZEB Readyを見据えた建築物(外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、さらなる省エネルギーの実現に向けた措置を講じた建築物) |
ZEBには4つの種類があり、様々な環境条件でも対応できるよう、取得難易度が調整されています。
なお、ZEBの種類や特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
参考:「ZEBの種類や特徴とは?BELSとの違いについても専門家が詳しく解説」
ZEBの計算方法
ZEBの計算では、以下の3つを使用します。
- 基準一次エネルギー消費量
- 再生可能エネルギー量
- BEI
それぞれ計算方法について見ていきましょう。
基準一次エネルギー消費量の計算方法
基準一次エネルギー消費量とは、設備ごと・地域ごと・室用途ごとによって定められる基準となる、標準的な一次エネルギー消費量のことです。
ZEBで求められる削減率のもとになります。
具体的には、以下の算定式により、算出可能です。
【基準一次エネルギー消費量】=空調エネルギー消費量+換気エネルギー消費量+照明エネルギー消費量+給湯エネルギー消費量+昇降機エネルギー消費量(+事務・情報機器等エネルギー消費量)
出典:環境省ホームページ「ZEBの定義」
再生可能エネルギー量の計算方法
再生可能エネルギーとは、温室効果ガスを排出しない、自然界に存在するエネルギーのことです。
具体的には、以下の10種類が挙げられます。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電
- 太陽熱利用
- 雪氷熱利用
- 温度差熱利用
- 地中熱利用
- バイオマス
- その他の再生可能エネルギー
上記10種類を用いて得られるエネルギーの合計が、再生可能エネルギー量です。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ「再生可能エネルギーとは」
BEIの計算方法
BEIとは、一次エネルギー消費量の水準のことで、以下の通り「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で除した値です。
【BEI】=(設計一次エネルギー消費量)÷(基準一次エネルギー消費量)
なお、設計一次エネルギー消費量は、以下の算定式により求められます。
【設計一次エネルギー消費量】=空調エネルギー消費量+換気エネルギー消費量+照明エネルギー消費量+給湯エネルギー消費量+昇降機エネルギー消費量(+事務・情報機器等エネルギー消費量)−エネルギー利用効率化設備によるエネルギー消費量(エネルギーの創出)
出典:環境省ホームページ「ZEBの定義」
【種類別】ZEBの評価基準
ZEBの種類別の評価基準は、以下の通りです。
ZEBの種類 | 非住宅建築物 | |||||||
建築物全体評価 | 建築物の部分評価 | |||||||
基準一次エネルギー消費量からの削減率 | その他の要件 | 基準一次エネルギー消費量からの削減率 | その他の要件 | |||||
省エネのみ | 創エネ含む | 省エネのみ | 創エネ含む | |||||
ZEB | 50%以上 | 100%以上 | ー | 50%以上 | 100%以上 | 建築物全体で基準値から創エネを除き20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成すること | ||
Nearly ZEB | 50%以上 | 75%以上 | 50%以上 | 75%以上 | ||||
ZEB Ready | 50%以上 | 75%未満 | 50%以上 | 75%未満 | ||||
ZEB Oriented | 建物用途 | 事務所、学校、工場等 | 40%以上 | ー | ・建築物全体の延べ面積(※1)が10,000㎡以上であること ・未評価技術(※6)を導入すること ・複数用途建築物は、建物用途毎に左記の一次エネルギー消費量削減率を達成すること |
40%以上 | ー | ・評価対象用途の延べ面積※1が10,000㎡以上であること ・評価対象用途に未評価技術(※6)を導入すること ・建築物全体で基準値から創エネを除き20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成すること |
ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等 | 30%以上 | ー | 30%以上 | ー |
建築物の全体評価・部分評価なのかによって、その他の要件に違いがあります。
以下では、ZEBの種類別に評価基準を解説します。
ZEBの評価基準
ZEBでは、以下の2つが求められます。
- 基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギー量を除く)
- 基準一次エネルギー消費量から100%以上の削減(再生可能エネルギー量を含む)
また、建築物の部分評価の場合、再生可能エネルギー量を除く一次エネルギー消費量から20%以上の削減が必要です。
Nearly ZEBの評価基準
Nearly ZEBでは、以下の2つが求められます。
- 基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減(再生可能エネルギー量を除く)
- 基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の削減(再生可能エネルギー量を含む)
また、建築物の部分評価の場合、再生可能エネルギー量を除く一次エネルギー消費量から20%以上の削減が必要です。
ZEB Readyの評価基準
ZEB Readyでは、再生可能エネルギー量を除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上削減することが求められます。
また、建築物の部分評価の場合、再生可能エネルギー量を除く一次エネルギー消費量から20%以上の削減が必要です。
ZEB Orientedの評価基準
ZEB Orientedでは、建物用途別に以下の通り要件を満たす必要があります。
【事務所、学校、工場等】
基準一次エネルギー消費量から40%以上の削減(再生可能エネルギー量を除く)
【ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等】
基準一次エネルギー消費量から30%以上の削減(再生可能エネルギー量を除く)
いずれの用途の場合でも、以下3つを満たすことが必要です。
- 建築物全体の延べ面積が10,000㎡以上であること
- 未評価技術(※)を導入すること
- 複数用途建築物は、建物用途毎に上記一次エネルギー消費量削減率を達成すること
また、建築物の部分評価の場合、全体評価の削減率達成に加えて、以下3つの要件が求められます。
- 評価対象用途の延べ面積が10,000㎡以上であること
- 評価対象用途に未評価技術(※)を導入すること
- 建築物全体で、再生可能エネルギー量を除き、20%以上の一次エネルギー消費量削減を達成すること
※未評価技術は、公益社団法人空気調和・衛生工学会において省エネルギー効果が高いと見込まれ公表されたものを指す
ZEB Orientedは、他の3種類のZEBとは異なり、用途別に達成すべき削減率が違うため、注意が必要です。
出典:環境省ホームページ「ZEBの定義」
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この記事では、ZEBの概要や計算方法、種類別の評価基準について解説しました。
ZEBには、様々な環境条件にも対応できるよう、取得難易度ごとに以下の4種類があります。
- ZEB
- Nearly ZEB
- ZEB Ready
- ZEB Oriented
それぞれ、達成すべき一次エネルギー量削減率や細かい要件が定められているため、
ZEBを取得するには計算方法や評価基準について理解しなければならず、非常に煩雑です。
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