世界中で「サステナブル建築」が注目を集める中、日本でも取り組みが進んでいます。
サステナブル建築とは、環境に配慮された持続可能な建築物の構築のことです。
この記事では、サステナブル建築の概要やメリット・デメリット、関連する補助金などについて解説します。
また、より理解しやすいようにサステナブル建築の事例についても紹介しているので詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
サステナブル建築とは
サステナブル建築とは、持続可能な建築物の構築を指します。
具体的には、建築物の設計・施工・運用の各段階で、地域や地球規模の生態系に影響を与えない範囲で、以下3つの要件を備えた建築物の構築のことです。
- 建築のライフサイクルを通じての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制を図ること
- その他地域の気候、伝統、文化および周辺環境と調和すること
- 将来にわたって人間の生活の質を適度に維持あるいは向上させていくことができること
サステナブル建築は建築物による環境負荷を抑えた、地球に優しい建築物の構築です。
出典:一般社団法人 日本建設業連合会「サステナブル建築」
サステナブル建築のメリットとデメリット
サステナブル建築にはメリットとデメリットがあります。
具体的には以下です。
【メリット】
・地球環境への悪影響を減らせる
・建築物の快適性が高い
・補助金を活用できる場合がある
【デメリット】
・建築完了までの時間が長くなる
・費用負担が大きくなる
サステナブル建築の住宅を検討する際には、それぞれの利点や欠点を理解することが重要です。以下で詳しく解説します。
サステナブル建築のメリット
サステナブル建築を行う一番のメリットは、環境の負荷がかかりにくいことです。
サステナブル建築では、設計から運用までの各段階で省エネや地域環境との調和が求められます。
これにより、建築にともなう二酸化炭素やその他有害物質の排出を削減できるため、建築による環境汚染を防ぐことが可能です。
また、サステナブル建築は快適性の面でも優れています。高気密性や高断熱性を備えているため、生活をするうえでも実用的な建築物といえます。
他にもサステナブル建築では、要件を満たすことで補助金を受けることができます。
このように、サステナブル建築には多くのメリットがあるのです。
サステナブル建築のデメリット
サステナブル建築には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
サステナブル建築は、一般的な建築物に比べて建築完了までに時間がかかります。理由は、高い省エネ性能を満たす設計や設備の設置が必要な為です。
また、環境への配慮を満たす設計や設備の設置には、高い費用がかかります。
このように、時間も費用もかかることがサステナブル建築のデメリットです。
サステナブル建築物の補助金
サステナブル建築物の補助金として、サステナブル建築物等先導事業(CO2先導型)があります。
以下で代表的な補助金について紹介します。
サステナブル建築を検討している方は、是非参考にしてください。
サステナブル建築物等先導事業(CO2先導型)
サステナブル建築物等先導事業(CO2先導型)とは、サステナブル建築等の取り組みが広がることや、意識の啓発につながる先導的な事業に対して、国が補助する制度です。
募集部門や主な事業要件、補助率等について、以下の表にまとめています。
募集部門 | 主な事業要件 | 補助率 | 補助限度額 |
一般部門 (建築物(非住宅)、共同住宅、戸建住宅) | ・新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を満たすものであること ・材料、設備、設計、運用システム等において、CO2の削減、健康、災害時の継続性、少子化対策等に寄与する先導的な技術が導入されるものであること | 補助対象費用の1/2 | 1プロジェクトあたり原則5億円 ※標準単価方式による場合は採択プロジェクトの総事業費の3.5%と比較していずれか少ない金額が本事業の補助限度額 |
中小規模建築物部門(非住宅) | |||
LCCM低層共同住宅部門 ※LCCM=ライフサイクルカーボンマイナス | ・強化外皮基準(ZEH水準の断熱性能)を満たすもの ・再生可能エネルギーを除き、一次エネルギー消費量が現行の省エネ基準値から25%削減されているもの ・ライフサイクルCO2の評価結果が0以下となるもの | 1戸あたり75万円かつ1プロジェクトあたり5億円 | |
分譲住宅トップランナー事業者部門 | ・強化外皮基準(ZEH水準の断熱性能)を満たすもの ・再生可能エネルギーを除き、一次エネルギー消費量が現行の省エネ基準値から20%削減されているもの ・波及効果・普及効果に関して提案するもの | 1戸あたり30万円かつ1プロジェクトあたり2,500万円 |
※非住宅及び共同住宅(一般部門)の新築事業、LCCM低層共同住宅及び分譲住宅トップランナー事業者部門については、建設工事費に該当する費用の補助額は当該建設工事費の5%以内の額
※戸建住宅(一般部門:新築、改修、マネジメント、技術の検証)については、原則として建設工事等に係る補助額の上限は、1戸あたり200万円
サステナブル建築物等先導事業(CO2先導型)は、定められた期限内に提案書を郵送提出することで応募可能です。
また採択事業は、学識経験者等で構成される「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)評価委員会」による評価をもとにして、国立研究開発法人 建築研究所が出す評価結果を踏まえて、国土交通省が決定します。
出典:国立研究開発法人 建築研究所「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)公募要領」
サステナブル建築の3つの事例
サステナブル建築について、3つの事例をご紹介します。
事例①:オーク東京ビル
1961年竣工のオーク東京ビルは、1999年に全面リニューアル工事を行いました。
オーク東京ビルは、大林組の東京本社ビルとして建築された建物です。このため、省エネルギーの診断・計画・改修工事・効果検証までを一貫して大林組が実施しています。
具体的に、省エネルギー診断では改修前のエネルギー消費量の把握や用途別に基準値を求め、省エネルギー計画へ反映しました。
省エネルギー計画においては改修前を基準に、省エネルギー手法を採用する場合の費用対効果を算定します。
算定結果をもとに、高効率照明器具や省エネ運転管理用中央監視設備など、経済性を踏まえた最適な省エネルギー手法の組み合わせを検討・採用しています。
これらの実施により、改修前に比べて34%の省エネルギーを実現しました。
事例②:サンヨーソーラーアーク
サンヨーソーラーアークは長さ315m、高さ37mという大きさが特徴の太陽光発電施設です。
太陽光発電システム単体としては世界最大規模を誇り、環境保護に対するメッセージ性が込められています。
サンヨーソーラーアークの南面には5,046枚のソーラーパネルが設置され、年間53万kwの発電が可能です。
また、LED照明やLEDサインを取り入れることで、エネルギーの長寿命化や高効率化を図っています。
さらに、サンヨーソーラーアークの内部は自然光が十分に行き届く、快適性を備えた空間になっています。内部空間は可変性や更新性を備えているため、様々な展示会に対応可能です。
他にも、建設前後での風環境の変化を把握・評価する風環境評価を実施するなど、周辺環境への配慮も十分になされたサステナブル建築です。
事例③:イオンモール草津
滋賀県草津市に建設されたイオンモール草津もサステナブル建築の1つです。
イオンモール草津では、「自然に溶け込むエコショッピングモール」をコンセプトに掲げ、周辺環境の特性を踏まえた配置計画や外装計画の元、建築が行われました。
特に外装色は、滋賀県の伝統的な焼物である信楽焼の色を基本にしており、地域文化への配慮がされています。
また、モール空間は、自然光を上手く取り入れることで省エネ性とデザイン性を兼ね備えた造りになっています。
他にも、高効率照明や氷蓄熱空調、雨水などの活用を行うことで、CASBEE Sクラスの取得に至りました。
出典:一般社団法人 日本建設業連合会「サステナブル建築事例集」
よくある質問
本章では、サステナブル建築に関するよくある質問について回答します。
サステナブル建築について詳細を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
SDGs建築賞(サステナブル建築賞)とは?
SDGs建築賞(サステナブル建築賞)とは、SDGs(持続可能な開発目標)を達成するために顕著な取り組みをした建築物に対して与えられる賞です。
つまり、この賞を受賞することで、持続可能な建築物の普及が促進され、より多くの人々に顕彰された建築物の重要性が伝えられることを期待しています。
また、SDGs建築賞は、SDGs達成に向けた取り組みを顕彰することで、より持続可能な社会を実現するための一助となることを目的としています。
2022年度の第1回では、国土交通大臣賞の2点など、計11点が受賞しています。
なお、SDGs建築賞の前身が、サステナブル建築賞です。
サステナブル建築の課題とは?
サステナブル建築の課題は、既存の建築物と新しく造られる建築物がサステナブルかどうかを評価する共通の尺度がないことです。環境負荷の低いサステナブル建築が社会に浸透していくためには、評価の判断基準を明確にすることが重要です。
共通の尺度がない現在は、複数の評価指標によって、建築物の環境性能が評価されています。
その中でも、代表的な指標がCASBEE(キャスビー)です。なお、建築物総合環境性能評価システムであるCASBEEについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
CASBEEとは?主な評価ツールの種類や仕組みなどを、わかりやすく解説!
出典:大成建設技術センター報 第38号(2005)「サステナブル建築の現状と将来について-CASBEEを適用した新たな展開-」
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この記事では、サステナブル建築の概要やメリット・デメリット、具体的な事例についてご紹介しました。
サステナブル建築には、環境負荷が低いことや条件を満たすことで補助金を活用できるなど、多くのメリットがあります。
一方で、一般的な建築物に比べて時間も費用も余計にかかることがデメリットです。
サステナブル建築は、これらのメリット・デメリットを踏まえた上で検討して下さい。
なお、当社「環境・省エネルギー計算センター」では、サステナブル建築に関する無料相談を行っております。サステナブル建築についてお考えの場合には、ぜひ一度ご相談ください。
このコラムに関して詳細を確認したい場合や、省エネ計算届出に関しての質問などはお気軽にお問い合わせください。
※個人の方はまずは身近な設計事務所や施工会社にご相談された方が手続きがスムーズです。