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省エネ計算の手間を省く!完了検査のポイントや変更時の注意点を解説

省エネ基準適合の義務がある建築物は、完了検査時に省エネ基準を満たしていることが必須です。

省エネ計画書の作成には複雑な省エネ計算が必要なうえ、完了検査時に計画書と現場に相違が出ると不適合になる場合もあるため、設計などの本業に集中できない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、完了検査のポイントや計画書変更時の注意点について解説します。

省エネ計算の手間を最小限にして、完了検査をスムーズに進めたい方は参考にしてください。

 

2025年4月からすべての新築建築物で省エネ基準適合が義務化へ

建築物省エネ法の改正により、2025年4月より原則すべての新築の住宅・非住宅で省エネ基準への適合が義務付けられます。

建築業界が出す温暖化効果ガスを減らし、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指すのが目的です。

現行制度で省エネ基準の適合義務があるのは、非住宅かつ300㎡を上回る中規模建築物または大規模建築のみです。

改正後は、建築確認手続き中と完了検査時に適合検査が必要になります(エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ない物として政令で定める規模を除く)

省エネ住宅の推進により脱炭素社会の実現に近づきますが、建築主や設計者は省エネ計算の手間やコストがかかるようになるでしょう。

特に完了検査時の適合検査で不備があると、施工した建築物を使用する許可が下りないため、細心の注意が必要です。

 

新築住宅・非住宅における省エネ計算方法

ここでは、省エネ適判の申請時や変更があった場合に必要な省エネ計算方法について解説します。

新築住宅の省エネ計算方法

省エネ性能は、下記2つの点で評価します。

  • 外皮性能
  • 一次エネルギー消費量

外皮性能は、「外皮平均熱貫流率UA」と「冷房機の平均日射熱取得率基準ηAC」があり、計算式は下記のとおりです。

 

【UA=単位温度差当たりの外皮熱損失量÷外皮の部位の面積の合計】

【ηAC=単位日射強度当たりの冷房期の日射熱取得量÷外皮の部位の面積合計】

 

外皮基準は地域によって異なるため、建築予定の地域の基準を満たす必要があります。

一次エネルギー消費量(BEI)の計算式は、下記のとおりです。

【BEI=設計一次エネルギー÷消費量基準一次エネルギー消費量】

省エネ基準を満たすにはBEI≦1.0が最低条件で、BEI数値が小さいほどエネルギー消費量が少ない住宅だと評価されます。

新築非住宅の省エネ計算方法

非住宅の一次エネルギー消費量は計算方法こそ違いますが、算出する数値は住宅と同様です。

外皮性能は、外皮の断熱性能ではなく、ペリメータゾーンの年間熱負荷係数(PAL*)で評価します。

 

【PAL*=各階のペリメータゾーンの年間熱負荷係数÷ペリメータゾーンの床面積の合計】

 

PAL*は義務基準の対象外(誘導基準のみ適用)ですが、PAL*を向上させることにより、一次エネルギー消費性能の向上させることが可能です。

 

検査前に要チェック!省エネ適判完了検査時の確認項目

完了検査時に基準適合をチェックする検査方法は、「書類検査」と「現場検査」の2つです。

それぞれの検査の確認ポイントを解説するので、不適合になるようなミスがないか検査前にチェックしましょう。

書類検査

完了検査申請時には、検査に必要な図書や資料を提出します。

検査機関では、提出した図書等の記載に誤りがないか、図書間の記載事項が相互に整合しているかなどをチェックします。検査機関は書類の正当性を重視しており、ミスがあると再提出になるため注意が必要です。

提出前に、必ず数値や内容に誤りがないか確認しましょう。

計画書と現場の数値に変更が生じた場合の対応方法については、後述します。

現場検査

現場検査は、書類検査での評価や建築主事などが実施する調査の密度に基づいて実施します。

主な検査は、設備機器等の設置状況や型番等の目視です。本来は実地検査が望ましいのですが、膨大な手間と時間がかかるため、施工関連図書との照合性を中心に見て回ります。

仕上げ材に隠れてしまう設備も多いため、目視できないものは書類チェックのみです。

設備の動作確認も、ほとんど行われません。

書類と実際の現場が一致しているかが非常に重要なので、事前に照らし合わせて不適合を防ぎましょう。

 

省エネ適判完了検査の流れと必要な申請書類

前述したとおり、省エネ適判完了検査は書類検査と現場検査の2つで評価されます。

まず完了検査の申請をする際には、下記の図書の提出が必要です。

  • 完了検査申請書
  • 建築物エネルギー消費性能適合性判定に要した図書及び書類
  • 軽微な変更説明書
  • 特定行政庁が工事管理の状況を把握するために必要として規則で定める書類

その後現場検査では、提出した書類と現場に相違がないか、下記の方法で評価します。

引用:国土交通省「省エネ基準適合義務対象建築物に係る完了検査マニュアル

省エネ基準に適合していると判断された場合は、検査済証が交付されます。

万が一不適合の場合は、「検査済証を交付できない旨の通知書(期限付き)」が交付されるので、期限内に指示に従いましょう。

 

もし完了検査前に省エネ計画書に変更が生じたら?

もし省エネ計画書と完了検査時の建物に変更が生じた場合は、完了検査申請時に報告が必要です。

変更内容によって手続きが異なり、ケースによっては完了検査終了まで時間がかかるため注意しましょう。

ここでは、省エネ計画書に変更が生じた場合の手続きについて、変更内容ごとに解説します。

ルートA:省エネ性能が向上する場合

ルートAに該当する変更は、下記のとおりです。

  1. 建築物の高さ又は外周長の減少
  2. 外壁、屋根又は外気に接する床の面積減少
  3. 空気調和設備等の効率向上又は損失の低下となる変更(制御方法等の変更を含む)
  4. エネルギーの効率的利用を図ることのできる設備の新設又は増設

引用:国土交通省「軽微な変更の対象範囲について

ルートAに該当する場合は「軽微な変更説明書」を準備し、完了検査申請時に提出します。

再計算する必要がないため、最小限の手間で済むでしょう。

ルートB:省エネ性能が減少する場合

ルートBは、変更前の設計一次エネルギー消費量が基準一次エネルギー消費量を10%以上、変更後の減少が10%以内であるのが条件です。

それに併せて、空気調和設備や機械換気設備、照明設備など設備ごとに基準が設けられています。

詳しくは、国土交通省の「軽微な変更の対象範囲について」をご確認ください。

ルートBもルートA同様に「軽微な変更説明書」を作成し、完了検査申請時に提出します。

ルートC:再計算で基準適合が明らかな場合

ルートAとルートBの条件を満たさないが、再計算で基準適合が明らかな場合はルートCに該当します。

建築物の用途変更等、根本的な変更は「軽微な変更」とは言えないため対象外です。

ルートCでは、変更後の数値で再び省エネ計算を行い、完了検査申請時に下記の提出が必須です。

  • 軽微な変更説明書
  • 軽微変更該当証明書

「軽微変更該当証明書」の発行は、省エネ適判通知を受けた適判機関や所管行政庁等へ「軽微変更該当証明申請書」の提出が必要です。

さらに発行には手数料がかかるため、他のルートと比べて時間も費用もかかるでしょう。

省エネ基準に適合していない場合

軽微変更説明書を提出したにもかかわらず完了検査をクリアできなかった原因として、下記が考えられます。

  • 施工者と設計者の意思疎通が図れていない
  • 完了検査時に最終的な図面が完成していない
  • 再計算した図面と現場に差異がある

万が一、完了検査で不適合だった場合、計画変更申請を行い、再度完了検査申請が必要です。

完了検査で適合するまではその建物を使用できないため、当然引き渡しが後倒しになります。

完了検査をスムーズにクリアするには、確認申請書類と実際の建物に相違がないようにしましょう。

 

省エネ計算の手間や失敗を減らす3つの方法

設計などの本業に集中するために、省エネ計算や申請にかかる手間やミスを減らしたいですよね。

ここでは、完了検査をスムーズにするためのポイントを3つ解説します。

省エネ計算のソフトを利用する

自社で省エネ計算をするなら、省エネ計算ソフトを利用しましょう。

特におすすめなのが、国土交通省の「WEBプログラム」です。

WEBプログラムは無料なうえ、Webページを開くだけで誰でも利用できます。

制度の更新に即日対応するため、常に最新の省エネ基準で計算できるのがメリットです。

ただしソフトの活用には値把握や根拠資料が必要なため、専門的知識がない場合は負担がかかる場合もあります。

モデル建物法を活用する

非住宅で、設計に標準的な仕様を採用した場合、通常の「標準入力法」ではなく「モデル建物法」を利用できます。

モデル建物法は、国が過去のデータを用いてモデル化したものを活用し、代表的な室(LDK・トイレ・寝室など)の設備機器の情報をそれぞれ入力する簡易計算方式です。

 

省エネ計算方法

入力内容

標準入力法

建築物内のすべての室において、床面積等の仕様及び設備機器等の性能値を入力

モデル建物法

用途別のモデルを選択して、建築仕様及び設備機器等の性能値を入力

引用:国土交通省「省エネ性能に係る基準と計算方法

標準入力法よりも入力・審査項目が少なく、難しい計算が必要ないため、省エネ計算の資料作成にかかる時間や費用を削減できるのがメリットです。

設計の自由度は低く、専門知識も必要ですが、標準入力法よりも省エネ計算の失敗を減らせるでしょう。

住宅の場合、仕様ルートというものがあり、基本的には計算は不要となりますが、現状では設備仕様の適用範囲がそれほど広くないため、実用的とは言えないでしょう。

省エネ計算代行会社に依頼する

省エネ計算ソフトやモデル建物法の利用で、省エネ計算の手間を軽減できます。

しかし省エネ計算は専門性が高いため、人的・時間的コストが大きいと感じる方が多い傾向にあります。そこで省エネ計算の手間を省きたい方にぴったりなのが、省エネ計算代行会社への依頼です。代行会社の指示に従って資料を集めれば、面倒な省エネ計算や申請はすべて任せられます。

ただし、代行会社によって対応力やサービスの質に大きな差があるため、信頼や実績のある会社を選ぶようにしましょう。

 

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