非住宅の建築物の省エネ適合性判定やBELSの取得をお考えですね。
非住宅の建築物の省エネ計算の方法には、「モデル建物法」と「標準入力法」の2種類があります。
省エネ適合性判定やBELSの取得においては、どちらの計算方法を採用するべきかについて戦略的に判断することが重要です。
計算方法の選択を誤らないためにも、省エネ計算を行う目的をしっかり理解するところから始めましょう。
この記事では、省エネ計算やその計算方法である「モデル計算法」と「標準入力法」の違いを詳しく解説します。
省エネ適合性判定やBELSの取得を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
省エネ計算とは
省エネ計算とは、建築物のエネルギー性能を示すために行う計算のことで、建築物省エネ法にて建築主に一定の義務が課されています。
建築主が300㎡以上の非住宅建築物を新築・増改築する場合は、省エネ基準に適合させる必要があり、基準に適合していなければ工事の着工や建築物の使用を開始することができません。
計算を行うタイミングは、建築物の設計が終了し工事に着手する前です。
設計内容が省エネ対応しているかを客観的に判断するために計算し、工事着手前に所管行政庁に省エネ計算書の提出を行う必要があります。
非住宅建築物における省エネ計算の具体的な方法は、外皮性能を間接的に反映した「一次エネルギー消費量基準(BEI)」を求め、数値が1.0以下であれば基準適合と判断できます。
非住宅の省エネ計算の対象
非住宅建築物の省エネ適合義務対象は、床面積が300㎡以上の建築物です。
2021年4月1日から、非住宅建築物の省エネ適合義務対象の床面積が2,000㎡以上から、300㎡以上に拡大されました。
さらに、10㎡超300㎡未満の小規模建築物は、省エネ適合に関する努力義務と建築士から建築主に対しての説明義務が新設されています。
つまり、300㎡以上の非住宅建築物では、必ず省エネ計算を行う必要があり、10㎡超300㎡未満の建築物でも省エネ計算が推奨されます。
なお、所管行政庁が基準に適合せず、必要と認める時は行政より指示・命令がなされ、基準適合命令に違反した場合は、300万円以下の罰金がかせられます。
非住宅の建築物の省エネ計算法は3種類ある
省エネ計算方法には、合計3種類の方法が用意されており、入力する情報の精度が異なるのが特徴です。
一般的には「標準入力法」が最も精度が高く、続いて「モデル建物法」「小規模版モデル建築法」の順に精度が下がっていきます。
ただし、精度が高い標準入力法を採用することで、他の計算方法より手間や費用が大きくなるので注意が必要です。
なお、「小規模版モデル建築法」の適用範囲は床面積300㎡未満の建物となり、省エネ適合性判定やBELSに使えないため、省エネ計算のほとんどは「モデル建物法」か「標準入力法」が選ばれます。
また、所管行政庁や適合判定機関に提出されている案件の90%以上はモデル計算法で、確認済証の交付が目的であれば、基本的にモデル建物法での計算・評価で問題ありません。
モデル建物法とは
モデル建物法とは、国が過去の実績を用いてモデル化したデータを活用し、主たる室用途に設備機器の情報を入力する簡易計算方式となっています。
モデル建物法は、省エネ適合性判定で最も利用されている計算方法です。
あらかじめ定められたモデル建物用途にあてはめ計算を行うため、入力項目が少なく、かつ分かり易い内容となっています。
全ての室にて計算を行うのではなく、例えば事務所ビルであれば「執務室」「給湯室」「トイレ」といった代表的な室のみ計算・評価の対象とするのが特徴です。
標準入力法とは
標準入力法は、対象建築物に設ける全ての部屋単位で床面積、設備機器の内容、外皮性能などの情報を用いて計算を行う最も詳細な計算法です。
部屋単位で入力を行うため、複数用途の建築物であっても一度の計算で省エネ基準の適否判定を行うことができます。
一般的には、モデル建物法よりも標準入力法の数値が1割から2割程度良くなる傾向があり、BELSで多くの星を得たい場合などには有効です。
その反面、部屋数が多い建築物では入力が煩雑になり、その分時間とコストが必要になります。
完了検査でも全部屋の確認が必要となるため、所管行政庁や適合判定機関に支払う手数料も高くなります。
モデル建物法と標準入力法の違い
モデル建物法と標準入力法の主な特徴は以下表の通りです。
評価方法 | モデル建物法 | 標準入力法 | |
特徴 | 建物の用途ごとにモデル建物を用いて計算する簡易的な評価方法 | 建物の全ての情報を部屋ごとに詳細に入力することで計算を行う精緻な評価方法 | |
対象部分 | 主たる部屋のみ | 全ての部屋 | |
メリット | ・入力項目が少なく、分かり易い内容 ・費用が安く、確認済証取得に十分対応可能 |
・高評価の計算結果が得やすい ・複合用途であっても、一度の計算で評価可能 |
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デメリット | ・比較的保守的な計算結果(低め)となる ・複合用途の場合は、それぞれでモデル建築法による計算が必要 |
・対応できる計算代行会社が少ない ・時間とコストがかかる |
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費用水準 | - | 規模によるが、モデル建物法の1.5倍から2倍程度 |
モデル建物法の一番のメリットは、省エネ計算の資料作成にかかる時間・費用が削減できることです。
対して、標準入力法の一番のメリットは、モデル建物法よりも高い評価を得やすいことです。
どちらの方法にもメリット・デメリットがあるので、省エネ計算を行う目的に照らしてどちらかの方法を選択してください。
次からは、BELSを交えながら省エネ計算を行う目的についてお伝えします。
BELSを取得するなら、ほとんどの場合「モデル建物法」で十分!
省エネ計算を行う目的のなかで、最も分かりやすいのは、300㎡以上の非住宅建築物の建設で確認済証を取得したいケースです。
それに加え、BELS認定取得においても、モデル建物法が活用できます。
モデル建物法では、建築基準法上の建物用途の全てに「モデル建物の選択肢」が用意されており、設備が多く複雑な百貨店や、水泳場のような特殊なスポーツ施設も単純化されたモデルで対応可能です。
昨今、建築物の環境性能をアピールするためにBELSの認定を受ける企業は増加傾向にあります。
適合判定機関側も大量のBELS申請に応えるため、計算・評価が簡易的に行えるモデル建物法の活用意義は大きいです。
一部「標準入力法」が必要な場合も!
省エネ計算を行う目的で、確認済証取得のためとありましたが、モデル建物法で省エネ適合性判定上の数値が基準に満たなかった場合(BEI≦1.0をクリアできない)、標準入力法で評価を精緻化し再計算する必要性があります。
また、建物の環境性能をアピールするため、BELSでより多くの星を獲得したい場合や、ZEB認定を得たい場合は、標準入力法が有利です。
その他のメリットとしては、標準入力法を活用し、BELSで高評価を得たりZEB認定を受けたりすることで、オフィスビルであれば賃料アップを狙うことができます。
さらに、環境性能が高い物件には投資資金が集まり易く、物件評価を数億円単位で向上させることも不可能ではありません。
確かに標準入力法は、モデル建物法よりも十数万円程度費用はかかりますが、その費用負担と比しても余りある経済的効果を享受することができる計算方法と言えます。
非住宅のBELSで迷ったら「環境・省エネルギー計算センター」に相談しよう!
非住宅のBELSは複数の省エネ計算方法があり、それぞれメリットやデメリットが存在します。
これらを理解した上で、目的に即した計算方法を選択することが重要です。
ところが、省エネ計算代行会社では、簡易なモデル建物法は扱っていても、複雑な業務である標準入力法に対応できないケースが多く見受けられます。
多くの省エネ計算業務の実績を誇る弊社「環境・省エネルギー計算センター」では、モデル建物法と標準入力法の両方に対応が可能で、お客様の目的に即してどちらの方法が適切か比較検討した上で、最適な提案ができます。
実際の業務も高品質でありながら短時間で納品でき、かつ適正価格で承れます。
ちょっとした疑問などでも結構ですので、ぜひお気軽にご連絡ください。