認定低炭素住宅(エコまち法)は、多くの二酸化炭素が排出される都市部において、環境に優しい住宅の建築等を促進するための制度です。
認定低炭素住宅には税制優遇や容積率不算入など多くのメリットがあるため、都市部を中心に認定を受ける方が増えています。
一方で、住宅建築の着工前までに申請が必要など、デメリットもあるため注意が必要です。
この記事では、認定低炭素住宅が受けられる優遇措置や、注意点について詳しく解説していきます。
認定低炭素住宅のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
認定低炭素住宅(エコまち法)とは
認定低炭素住宅(エコまち法)とは、排出される二酸化炭素の量が少なく、環境への配慮が認められた市街化区域等内に建つ住宅のことです。
近年、人口が集中する都市部を中心に大量の二酸化炭素が放出され、社会問題となっています。
現状の改善に向けて、平成24年12月に制定されたのが「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」です。
認定低炭素住宅はエコまち法に基づく制度の1つであり、所管行政庁(都道府県や市区)への申請及び審査を通過することで、認定が受けられます。
認定低酸素住宅の認定は、申請や審査に関する算定や提出書類の準備という手間はかかりますが、税制面での優遇措置などを受けることができます。
認定低炭素住宅(エコまち法)の基準
認定低炭素住宅(エコまち法)の基準は、主に以下の4点です。
項目 | 認定基準 |
外皮性能(誘導基準) | ZEH水準の外皮性能が必要 |
一次エネルギー消費性能(誘導基準) | ZEH水準の外皮性能が必要 |
再生可能エネルギー利用設備の導入 |
太陽光発電設備など、自然エネルギーを活用した発電設備の導入が必要。 |
低炭素化に資する措置 ※選択項目 |
「節水に資する機器の設置」や「住宅の劣化の軽減に資する措置」など、9つの措置から最低1つを満たすことが必要。または、標準的な建築物と比べて低炭素化に資する建築物と所管行政庁が認めるもの(例:CASBEE評価書) |
認定低炭素住宅には、上記4つの基準をすべて満たす必要があります。
認定低炭素住宅の基準について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
参考:「【2023年最新】認定低炭素住宅(エコまち法)の新基準について専門家が徹底解説」
認定低炭素住宅(エコまち法)のメリット
低炭素化住宅として認められるには、高い省エネ性能や低炭素化の対策が必要です。
それでは、認定低炭素住宅と認められた際のメリットには、どのようなものがあるでしょうか?
認定低炭素住宅のメリットは、以下の4つです。
- 税制優遇を受けられる
- 住宅ローン(フラット35利用時)の融資時の金利引下げを受けられる
- 補助金を受けられる可能性がある
- 容積率の不算入を受けられる
それぞれ詳しく解説します。
税制優遇を受けられる
1つ目のメリットは、税制に関する優遇が受けられることです。
具体的には、以下の通り所得税(住宅ローン減税・投資型減税)及び登録免許税の優遇があります。
【所得税】
■住宅ローン減税(令和7年12月31日までに入居した方が対象)
居住年 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 最大控除額 | |
新築住宅・買取再販 | 令和4年から令和5年まで | 5,000万円 | 13年 | 0.7% | 455万円 |
令和6年から令和7年まで | 4,500万円 | 409.5万円 | |||
既存住宅 | 令和4年から令和7年まで | 3,000万円 | 10年 | 210万円 |
認定低炭素住宅では、一般住宅に比べて借入限度額及び最大控除額が優遇されます。
具体的には、令和4年から令和5年までに住み始めた新築住宅では、一般住宅が借入限度額3,000万円、最大控除額273万円であるのに対し、認定低炭素住宅では借入限度額5,000万円、最大控除額455万円まで優遇されます。
なお、適用を受けるための主な要件は以下の6つです。
- 適用を受ける方が所有し、かつ主として居住の用に供する家屋であること
- 住宅の引渡し又は工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
- 床面積が50平米以上あること
- 店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
- 借入金の償還期間が10年以上あること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
なお、「③床面積が50平米以上あること」については、2023年までに建築確認を受けて住宅を新築又は2023年までに建築確認を受けた未入居の住宅を取得し、合計所得金額が1,000万円以下の場合、40平米以上50平米未満でも対象です。
■投資型減税(令和5年12月31日までに入居した方が対象)
投資型減税とは、住宅ローンを使わない場合(住宅を現金で購入する場合)や、10年未満のローン期間により住宅ローン減税を使えない場合でも利用可能な優遇措置です。
具体的な減税額は、以下の計算により算定します。
[投資型減税額]=標準的な性能強化費用相当額×10%
性能強化費用相当額とは、低炭素住宅にするために一般住宅より多くかかった費用のことです。
標準的な性能強化費用相当額は、45,300円に床面積を乗じた額であり、上限は650万円です。このため、投資型減税額は65万円となります。
なお、投資型減税は住宅ローン減税と併用できないので、注意して下さい。
【登録免許税(令和6年3月31日までに取得した方が対象)】
登録免許税では、所有権保存登記及び所有権移転登記にかかる税率が優遇されます。
登記の種類 | 本則 | 一般住宅(特例) | 認定低炭素住宅 |
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% |
なお、適用を受けるための主な要件は以下の3つです。
- 適用を受ける方が主として居住の用に供する家屋であること
- 住宅の新築又は取得から1年以内に登記をすること
- 床面積が50平米以上あること
登録免許税の税率が優遇されることで、負担する税額を減らすことができます。
出典:国土交通省「認定低炭素住宅に対する税の特例 (所得税、登録免許税)」
住宅ローン(フラット35利用時)の融資時の金利引き下げを受けられる
2つ目のメリットは、住宅ローン(フラット35利用時)の融資時の金利引き下げを受けられることです。
フラット35Sは、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。
具体的には、低炭素住宅に認定されると、フラット35Sのうち「金利Aプラン(当初10年間・年0.25%の金利引下げ)」が適用されます。
認定低炭素住宅は、このフラット35Sが適用されるため、住宅ローン金利を引き下げられます。
出典:住宅金融支援機構「【フラット35】Sとは?」
補助金を受けられる可能性がある
3つ目のメリットは、補助金を受けられる可能性があることです。
具体的には、「地域型住宅グリーン化事業」という補助金制度の対象になる場合があります。
地域型住宅グリーン化事業とは、長期優良住宅や低炭素住宅など、環境への影響が少ない木造住宅を対象としている補助事業です。
認定低炭素住宅では最大90万円の補助が受けられます。
ただし補助金制度の対象は、国が決めた施行事業者グループが建築を行った住宅に限られるため注意して下さい。
出典:地域型住宅グリーン化事業(評価)「補助事業の概要」
容積率の不参入を受けられる
4つ目のメリットは、容積率の不算入を受けられることです。
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことで、容積率に応じて敷地に建てられる建築物の面積が決められます。
認定低炭素住宅では、蓄電池や発電設備などの低炭素化に資する設備に必要な面積は、延べ面積の1/20を限度として容積率の計算に不算入とすることが出来ます。
これにより、低炭素化に資する設備を設けたことで生活空間が狭くなるというケースを避けられます。
認定低炭素住宅(エコまち法)のデメリット・リスク
認定低炭素住宅のデメリット・リスクは、以下の3つです。
- 初期費用がかかる
- 「市街化区域」でないと認定申請できない
- 着工前までに申請を行う必要がある
それぞれ詳しく解説します。
初期費用がかかる
認定低炭素住宅には設備の設置による費用がかかります。
低炭素住宅の認定を受けるためには、太陽光発電設備や高効率のエアコン、蓄電池など、省エネや低炭素化に資する設備が必要です。
これらの設備を設けることで、電気代などランニングコストの削減につながりますが、設置による初期費用がかかります。
「市街化区域」でないと認定申請できない
認定低炭素住宅の認定申請は、市街化区域内のみで行われています。
エコまち法は、都市における低炭素化の促進を目的とした取り組みです。
そのため、認定制度の対象を、人口が集中し二酸化炭素の排出量が多い都市部に絞っています。
市街化区域外の場合は、低酸素住宅の基準を満たしていても低炭素住宅の申請はできません。
低炭素住宅の認定を受ける場合は、敷地が市街化区域に該当するか、あらかじめ確認して下さい。
着工前までに申請を行う必要がある
認定低炭素住の申請は、着工前までに行う必要があります。
申請には、審査機関による技術的審査を経て交付される「適合証」も必要であり、取得するための時間も確保しなければなりません。
着工後の申請はできないため、計画的に申請準備を行う必要があります。
出典:国土交通省「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」
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この記事では、認定低炭素住宅のメリット・デメリットについて解説しました。
低炭素住宅として認定されると、税制面での優遇措置や金利引下げの措置が受けられます。
また、補助金が受給できることや、容積率への不算入もメリットです。
一方で、低炭素住宅の認定を受けるには市街化区域内であることが条件であり、基準を満たすための建築・設備費用もかかります。
低炭素住宅の認定には大きなメリットがある一方で、留意すべきデメリットも多いので、慎重な検討が必要です。
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※補助金の詳細に関しましては管轄している事務局や行政庁にご確認ください。
※専門的な内容となりますので、個人の方は設計事務所や施工会社を通してご相談された方がスムーズです。
このコラムに関して詳細を確認したい場合や、省エネ計算届出に関しての質問などはお気軽にお問い合わせください。
※個人の方はまずは身近な設計事務所や施工会社にご相談された方が手続きがスムーズです。