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【2023年最新】認定低炭素住宅(エコまち法)の新基準について専門家が徹底解説

認定低炭素住宅(エコまち法)は平成24年12月に施行された制度です。

令和4年10月から新基準となり、認定基準の引き上げや要件項目の追加などが行われました

この記事では、認定低酸素住宅の概要や改正による新基準・変更点について詳しく解説していきます。

認定低炭素住宅の新基準について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

認定低炭素住宅(エコまち法)とは

認定低炭素住宅とは、二酸化炭素の排出量が少なく、省エネ効果が高いことが認められた、市街化区域等内にある住宅のことです。

近年、人口の多い都市部では建築物や自動車から排出される二酸化炭素の量が問題となっています。

このような状況を改善するため、平成24年12月に「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」が施行されました。

低炭素住宅の認定は、エコまち法に基づいた制度であり、認定を得ることで様々な優遇措置が受けられます

具体的には、低金利で住宅ローンが組める、所得税等の軽減といった措置です。

なお、認定を受けるためには所管行政庁(都道府県や市区)へ申請をして、審査を受ける必要があります。

認定低炭素住宅(エコまち法)の必須4項目

低炭素住宅と認定されるためには、以下の4項目の基準を満たす必要があります

  1. 一次エネルギー性能基準
  2. 外皮性能基準
  3. 再生可能エネルギー利用設備の導入
  4. [選択項目]低炭素化に資する措置

それぞれ詳しく解説します。

必須項目①:一次エネルギー性能基準

低炭素住宅と認定されるための必須項目の1つ目が、一次エネルギー性能基準です。

一次エネルギーとは、石油や太陽光などの自然から得られるエネルギーを指します

これに対し、住宅等で使われる電気や都市ガスなどは二次エネルギーと呼ばれ、一次エネルギーを加工・変換したエネルギーです。

二次エネルギーの消費量は、電気のkWhや都市ガスのm3のようにそれぞれ単位が異なるため、住宅等のエネルギー総消費量の算出には向きません。

このため、二次エネルギー消費量を一次エネルギー消費量に換算し、MJやGJなど共通の単位で表すことで、エネルギーの総消費量を算出します。

このような理由から、低炭素住宅と認定されるための必須項目として、一次エネルギー性能基準が設けられています。

非住宅の一次エネルギー性能基準

非住宅の一次エネルギー性能基準(誘導基準)では、省エネ基準から30〜40%以上の削減が必要です

なお、割合は建築物の用途に応じて変わります。

具体的には、ホテルや病院、飲食店などは30%以上、事務所や学校、工場などは40%以上の削減率です。

用途に応じた削減率が定められている点が、非住宅の一次エネルギー性能基準(誘導基準)の特徴と言えます。

住宅の一次エネルギー性能基準

住宅の一次エネルギー性能基準(誘導基準)では、省エネ基準から20%以上の削減が求められます

具体的には、再生可能エネルギー利用設備が最低1つの設置が必須であったり、その他高効率の設備の設置が望ましいです。

認定低炭素住宅と認定されるには、省エネ基準を上回る省エネ性能が必須です。

必須項目②:外皮性能基準

必須項目の2つ目が、外皮性能基準です。

外皮性能とは、建築物の断熱性の高さなどを示す性能のことです

例えば、外皮性能の低い住宅では、断熱性の低さから冷暖房の効率が悪くなります。

一方で、外皮性能の高い住宅では、少ないエネルギーで冷暖房の運用が可能です。

また、外皮性能が高ければ、夏場の暖気や冬場の冷気を遮断できるため、冷暖房の使用頻度を下げられます。

このように、外皮性能基準は建築物のエネルギー消費量に直結するため、認定低炭素住宅の必須項目とされています。

また、低炭素住宅と認定されるためには、外皮性能基準(誘導基準)として、ZEH・ZEB 基準の省エネ性能が必須になります

ZEHの外皮性能の計算方法について知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

参考:外皮性能の計算方法とは?住宅の評価方法の違いについても詳しく解説!

非住宅の外皮性能基準

非住宅の外皮性能基準としては、PAL*(パルスター)の基準値以下が求められます

PAL*とは年間熱負荷係数のことで、建築物の外皮の断熱性能に関する指標です。

PAL*には、建築物の用途や地域ごとに基準値が定められています。

非住宅の外皮性能基準では、PAL*の基準値以下の達成が必要です。

なお、PAL*は次の式で計算します。

PAL*[MJ/m2/年]=【各階の屋内周囲の空間(ペリメータゾーン)における年間熱負荷[MJ/年]】÷【ペリメータゾーンの床面積の合計[m2]】

PAL*は、数値が低いほうが建築物の断熱性が高いです。

住宅の外皮性能基準

住宅の外皮性能基準(誘導基準)としては、外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)について、地域ごとに定められた数値を下回ることが求められます。

具体的には、以下の通りです。

●UA値

 

1・2地域 3地域 4〜7地域 8地域
0.4以下 0.5以下 0.6以下

 

●ηAC値

 

1〜4地域 5地域 6地域 7地域 8地域
3.0以下 2.8以下 2.7以下 6.7以下

なお、UA値とηAC値は次の式で算出します。

UA値[W/m2・K]=【単位温度差当たりの総熱損失量[W/K]】÷【外皮表面積[m2]】

ηAC値=単位日射強度当たりの総日射熱取得量÷外皮表面積×100

いずれも、地域区分によっては評価の対象外になるので注意が必要です。

出典:中小機構「Q1202. PAL*(パルスター)って何?

必須項目③:再生可能エネルギー利用設備の導入

低炭素住宅と認定されるための必須項目の3つ目は、再生可能エネルギー利用設備の導入です。

具体的には、以下いずれかの設備を導入する必要があります

  • 太陽光発電設備
  • 太陽熱・地中熱を利用する設備
  • 風力・水力・バイオマス等を利用する発電設備
  • 河川水熱等を利用する設備
  • 薪・ペレットストーブ等の熱利用設備

また戸建住宅の場合には、次の条件も満たす必要があります。

【省エネ量と再生可能エネルギー利用設備から得られる創エネ量の合計】≧【基準一次エネルギー消費量の50%】

低炭素住宅と認定されるためには、省エネ基準の半分以上のエネルギーを省エネと創エネで作り出す、環境に優しい戸建住宅であることが求められます。

[選択項目]低炭素化に資する措置

必須項目の4つ目が、低炭素化に資する措置です。

低炭素化に資する措置は選択項目となっており、9つの措置から1つ以上を選択する必要があります

9つの措置について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1:節水に資する機器(便器・水栓など)の設置

1つ目は、節水に資する機器の設置です。

具体的には、以下いずれかの措置を講じる必要があります。

  • 設置する便器の半数以上に節水に資する便器を採用している
  • 設置する水栓の半数以上に節水に資する水栓を採用している
  • 食器洗い機を設置している

上記のいずれかの措置を講じることで、節水に資する機器を設置していると認められます

2:雨水、井戸水又は雑排水の利用のための設備の設置

2つ目は、雨水、井戸水又は雑排水の利用のための設備の設置です。

例えば、雨水をタンクに集め、散水やトイレの洗浄などに利用できる設備が挙げられます。

このような設備を設置することで、措置要件を満たすことができます。

3:HEMS又はBEMSの設置

3つ目は、HEMS又はBEMSの設置です。

HEMSとはホームエネルギーマネジメントシステムのことで、住宅で使用するエネルギーを節約するための管理システムを指します。

具体的には、日ごとや時間帯ごとの電気使用量が確認できるモニター機器などです。

また、BEMSとはビルエネルギーマネジメントシステムのことで、HEMS同様に電気の使用量などを見える化する機器や、照明や空調を制御・管理するシステムを指します。

このようなHEMS・BEMSを設置することで、措置要件を満たせます。

4:再生可能エネルギーと連系した蓄電池の設置

4つ目は、再生可能エネルギーと連系した蓄電池の設置です。

太陽光や水力など再生可能エネルギーを利用した発電設備と、その発電設備に連系する蓄電池を設置する必要があります。

なお、蓄電池は定置型でなければならないので注意が必要です

5:一定のヒートアイランド対策(屋上・壁面緑化等)の実施

5つ目は、一定のヒートアイランド対策の実施です。

具体的には、以下いずれかの措置を講じる必要があります

  • 緑地や水面の面積が総敷地面積の10%以上
  • 日射反射率の高い舗装の面積が総敷地面積の10%以上
  • 緑化を行う又は日射反射率等の高い屋根材の使用面積が屋根の面積の20%以上
  • 壁面の緑化を行う面積が外壁面積の10%以上

上記いずれかの措置により、要件を満たすことができます。

6:住宅の劣化の軽減に資する措置

6つ目は、住宅の劣化の軽減に資する措置です。

例えば、床下に一定数以上の換気口を設けたり、水回りに腐食しにくい素材を使用したりするなどの措置があります。

具体的な措置要件について知りたい方は、所管行政庁や事前審査機関に確認して下さい。

7:木造住宅又は木造建築物である

7つ目は、木造住宅又は木造建築物であることです。

木造の住宅・建築物は、鉄筋やコンクリートなどの住宅・建築物に比べて、建築する際の二酸化炭素の排出量を抑えられます

そのため、木造建築物であることが脱炭素化に資する措置の1つになっています。

8:高炉セメント又はフライアッシュセメントの使用

8つ目は、高炉セメント又はフライアッシュセメントの使用です。

高炉セメントとは、普通セメントと同等の性能を持つセメントの種類で、普通セメントに高炉スラグの粉末を混ぜて作られます。

これにより高炉セメントは、普通セメントに比べて作る際に排出される二酸化炭素の量を抑えることが可能です

また、フライアッシュセメントとは、産業廃棄物であるフライアッシュを混ぜて作られるセメントのことを指します。フライアッシュは石炭の灰のことで、石炭火力発電所で生じます。

フライアッシュセメントは、普通セメントに比べて製造時の二酸化炭素排出量の抑制が可能です。

そのため、高炉セメント又はフライアッシュセメントを構造耐力上の主要な部分に使用することが、脱炭素化に資する措置の1つとなっています。

9:V2H充放電設備の設置

9つ目は、V2H充放電設備の設置です。

V2Hとは、Vehicle to Home(車から家へ)の略で、電気自動車などに蓄えた電力を家で使用する電力に活用することを指します。

なお、低炭素化に資する措置としてはV2H充放電設備の設置が条件になるため、家の電力を電気自動車などの動力として活用する設備の設置でも問題ありません。

認定低炭素住宅(エコまち法)の認定基準見直しについて

認定低炭素住宅の認定基準はエコまち法に基づく告示の改正が行われ、令和4年10月から見直されました

認定基準見直しの内容を一言で表すと、「2050年のカーボンニュートラルを目標とした、より高い条件への引き上げ」です。

令和4年10月以前の基準に比べ、引き上げられた項目や数値について、漏れなく把握することが重要です。

出典:東京都都市整備局「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)

認定低炭素住宅(エコまち法)の認定基準の変更点

認定低炭素住宅の認定基準における変更点は、以下の4つに分けられます。

  • 非住宅の認定基準の変更点
  • 住宅の認定基準の変更点
  • 共同住宅の認定基準の変更点
  • その他の基準の認定基準の変更点

それぞれ詳しく見ていきましょう。

非住宅の認定基準の変更点

非住宅の認定基準の変更点は、以下の通りです。

 

低炭素建築物認定基準(エコまち法)
改正前(〜令和4年10月) 改正後(令和4年10月〜)
用途(非住宅) 一次エネルギー性能基準 用途(非住宅) 一次エネルギー性能基準
0.9 事務所等、学校等、工場等 0.6
ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等 0.7

 

非住宅の認定基準は、改正により2つの区分に分けられました。

また、一次エネルギー性能基準について、改正前は一律0.9だった数値が、改正後は区分によって0.6及び0.7に変更されています

なお、外皮性能基準に変更はありません。

出典:国土交通省「誘導基準及び低炭素建築物の認定基準の省エネ性能(非住宅)

住宅の認定基準の変更点

住宅の認定基準の変更点は、以下の通りです。

 

低炭素建築物認定基準(エコまち法)
地域の区分 1 2 3 4 5 6 7 8

改正前(〜令和4年10月)
一次エネルギー性能基準 0.9

外皮基準
UA値 0.46 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
ηAC値 3.0 2.8 2.7 6.7

改正後(令和4年10月〜)
一次エネルギー性能基準 0.8

強化外皮基準
UA値 0.40 0.40 0.50 0.60 0.60 0.60 0.60
ηAC値 3.0 2.8 2.7 6.7

 

一次エネルギー性能基準は、一律で0.9 → 0.8に引き上げられました

また、外皮基準は強化外皮基準となり、UA値が引き上げられていますが、ηAC値に関しては変更ありません。

出典:国土交通省「誘導基準及び低炭素建築物の認定基準の省エネ性能(住宅)

共同住宅の認定基準の変更点

共同住宅の認定基準に関しては、認定申請単位に変更がありました。

具体的には、住戸の認定が廃止され、住宅部分・非住宅部分の認定が可能となりました

その他の基準の認定基準の変更点

その他の基準の認定基準の変更点は2つです。

1つ目は、再生可能エネルギー利用設備の導入が必須項目になりました

特に戸建住宅では、省エネ量と創エネ量の合計が基準一次エネルギー消費量の50%以上であることが求められます。

2つ目は、低炭素化に資する措置の選択項目として、V2H充放電設備の設置が追加された点です。これにより、選択項目は9つとなっています。

認定低炭素住宅(エコまち法)や環境性能の評価システムについては「環境・省エネルギー計算センター」に相談しよう!

この記事では、認定低炭素住宅の認定基準や、令和4年10月の改正による変更点について解説しました

認定低炭素住宅と認定されると、税金が優遇されるなど様々な優遇措置が受けられます。

一方で、申請には数値算定や提出資料の作成など、多くの負担がかかります。

環境・省エネルギー計算センター」では、認定低炭素住宅や環境性能の評価システムに関する相談を受け付けておりますので、ぜひ一度お問い合わせください。

※補助金の詳細に関しましては管轄している事務局や行政庁にご確認ください。

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