住宅の購入を考えている方は「長期優良住宅」という言葉をよく耳にすることがあるでしょう。
長期優良住宅は、住む人にとってメリットの多い制度です。
一方、きちんと制度を理解せずに長期優良住宅を購入してしまった場合、購入後に後悔してしまう可能性があります。
この記事では、長期優良住宅を購入して後悔しないように、後悔している人が挙げる理由や後悔しないための方法をご紹介します。長期優良住宅を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことです。
快適性・安全性・耐久性・利便性・維持管理性などが一定の基準を満たしており、長期間にわたり住み続けることができるよう設計されています。
令和4年10月の法改正により、新築住宅だけでなく既存住宅でも基準を満たしていれば長期優良住宅として認定されることになりました。
長期優良住宅に認定されると、税の特例措置や補助金による支援が受け取れるなど、多くのメリットが得られます。
出典:国土交通省「長期優良住宅認定制度の概要について(新築版)」
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅に認定されるためには「長期優良住宅の認定基準」を満たす必要があります。
評価は以下のような10項目で行われます。
性能項目 |
評価基準の概要 | |
新築 | 既存住宅 | |
劣化対策 | 住宅性能評価の劣化対策等級3かつ構造の種類に応じた基準 | |
耐震性 | 次のいずれかに該当する場合 ・耐震等級2(階数が2以下の木造建築物等で壁量計算による場合にあっては等級3) ・耐震等級1かつ安全限界時の層間変形が1/100以下(木造の場合1/40以下) ・耐震等級1かつ各階の張り間方向及びけた行方向について所定の基準に適合するもの(鉄筋コンクリート造等の場合に限る) ・品確法に定める免震建築物 |
次のいずれかに該当する場合 ・耐震等級1(新耐震基準相当) ・品確法に定める免震建築物 |
省エネルギー性 | 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6 | 次のいずれかに該当する場合 ・断熱等性能等級4 ・断熱等性能等級3かつ一次エネルギー消費量等級4 |
維持管理・更新の容易性 | 維持管理対策等級3(専用配管・共用配管)かつ更新対策等級3(共用排水管) | |
可変性 (共同住宅及び長屋) |
構造躯体の天井高さ2,650mm以上 | 次のいずれかに該当する場合 ・構造躯体の天井高さ2,650mm以上 ・居室の天井高さ2,400mm以上 |
バリアフリー性 (共同住宅等) |
高齢者等配慮対策等級3(共用部分) | |
居住環境 | 景観計画・地区計画等の区域内にある場合、これらの内容と調和を図っていること ※申請先の所管行政庁に確認が必要 | |
住戸面積 | 一戸建ての場合、床面積の合計が75㎡以上 共同住宅の場合、床面積の合計が40㎡以上 ※少なくとも1の階の床面積が40㎡以上(階段部分を除く面積) ※地域の実情を勘案して所管行政庁が別に定める場合は、その面積要件を満たす必要がある |
|
維持保全計画 | 住宅の構造耐力上主要な部分・住宅の雨水の侵入を防止する部分・住宅に設ける給水又は排水のための設備の箇所は、定期的な点検および補修に関する計画を策定すること。 | |
災害配慮 | 災害発生のリスクのある地域においては、そのリスクの高さに応じて所管行政庁が定めた措置を講じていること。 ※申請先の所管行政庁に確認が必要 |
各項目に関しての具体的な内容は、下記の記事で詳しく解説しています。
参考:【2023年版】長期優良住宅の基準とは?専門家が詳細を徹底解説!見直しされた点も説明
結論:長期優良住宅は取得した方がお得になる可能性が高い
手間をかけて申請をしてもそれ以上にメリットが大きいのが長期優良住宅の認定制度です。
新築と既存住宅とで内容に違いがありますが、どちらの場合も税の特例措置や補助金を受けることができるため、一般的な住宅の建設よりお得になる可能性が高いです。
たとえば、長期優良住宅を建設すると固定資産税減税措置期間が延長されます。一般的な住宅だと3年間ですが、長期優良住宅の場合5年間(マンション等の場合は7年間)です。
また、地域型住宅グリーン化事業の補助金で最大140万円の補助金を受けられる可能性もあります。
このように減税や補助金による支援を受けることができるため、長期的に見ると通常の住宅より、長期優良住宅の方がお得になる可能性が高いです。
長期優良住宅がいらない・後悔すると言われる理由
長期優良住宅の認定を受けると、補助金を受け取ったり節税に繋げたりできるので、大きなメリットがあります。
一方で、「定期的なメンテナンスが大変」、「住宅購入時に予定よりお金がかかってしまった」などの理由から、長期優良住宅を購入したことを後悔している方もいます。
長期優良住宅を購入したあとに後悔すると言われる具体的な理由は以下です。
- 長期優良住宅の取得に費用がかかる
- 長期優良住宅の取得に時間がかかる場合がある
- 定期点検をする必要がある
それぞれ詳しく解説します。
長期優良住宅の取得に費用がかかる
長期優良住宅は一般的な住宅より性能が高いため、設備を揃えるために追加費用がかかる場合があります。
住宅の耐震性や省エネ効果に重点をおいている大手のハウスメーカーでは、一般住宅でも長期優良住宅の認定基準をクリアしていることが多いです。その場合は、一般住宅の建設費用と長期優良住宅の建設費用はほとんど変わりません。
しかし、中小工務店で建設を依頼した場合、一般住宅よりも耐震性・省エネルギー性・バリアフリー性などの項目において追加で設備を整える必要が出る場合があります。その場合、一般住宅に比べて20%〜30%ほど建設コストがかかることが多いです。
また、長期優良住宅の申請自体にもお金がかかります。
行政によってばらつきがありますが、審査・申請の手数料は5万円〜6万円ほどです。
もしハウスメーカーなどに申請の代行をしてもらう場合は、20万円〜30万円ほどかかります。
長期優良住宅の取得に時間がかかる場合がある
長期優良住宅の着工には、一般住宅より1ヶ月ほど時間がかかる場合があります。
時間がかかる理由は、着工前に長期優良住宅の認定を受ける必要があるからです。
長期優良住宅の認定を得るためには、まず登録住宅性能評価機関に審査を依頼します。
審査に通ると確認書が交付されるので、その確認書と申請書類を併せて所管行政庁に提出します。
このように長期優良住宅の取得をする際は、申請自体に時間がかかるのです。
早く工事を進めたい方は、長期優良住宅の建設経験が豊富なハウスメーカーに代行申請を依頼することをおすすめします。
定期点検をする必要がある
長期優良住宅の認定を受けた場合、維持保全計画に基づいて定期的なメンテナンスを行う必要があります。
具体的には、定期的な点検・補修等に関する計画に基づいた点検や補修が必要です。
点検や補修を行う際は、建築時やメンテナンスの状況を記録として残す必要があるため、面倒に感じる方も多いです。
また、認定を受けた住宅に対して、所管行政庁より状況報告を求められることがあります。
そこで維持保全が適切ではないと判断された場合は、認定計画実施者に改善命令が出されます。
このように、長期優良住宅の認定を受けたあとも定期点検が必要になるため、手間に感じる方もいます。
リフォーム必須の場合がある
既存の住宅で認定基準を満たすためには、リフォームが必要になるケースが多いです。
長期優良住宅は、既存の住宅でも認定基準を満たしていれば認定されます。しかし、既存の住宅が既に全ての認定基準を満たしているケースは少ないです。
その場合、リフォームをすることで認定基準を満たす必要があるため、手間に感じる方も多いです。
ただ、長期優良住宅の認定のためにリフォームを行う場合は補助金を受けられる可能性があるので、認定を受けるか悩んでいる方は参考にして下さい。
実際は長期優良住宅には多数のメリットがある
これまで触れてきた通り、長期優良住宅には多数のメリットがあります。
長期優良住宅として認定されると、下記のように税制面や住宅ローンの金利面で多くのメリットがあります。
税の特例措置や補助金を受け取ることで、通常よりお得に住宅を建てることができるのです。
①住宅ローンの金利引き下げ | フラット35を利用する場合、借入金利を5年間年利0.5%引き下げる。 また、6〜10年目も年利0.25%引き下げる。 |
②住宅ローン控除対象限度額の引き下げ | 住宅ローンの控除対象限度額を3,000万円から5,000万円へ引き上げる。 |
③性能強化費用相当額の一部が控除対象になる | 標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%相当額を、その年の所得税額から控除 |
④登録免許税の引き下げ | 所有権保存登記の税率が一般住宅の0.15%に対して、0.1%に引き下げられる。 所有権移転登記の税率が一般住宅0.3%に対して、0.2%に引き下げられる。(戸建ての場合) |
⑤不動産取得税の控除額の増額 | 不動産取得税の控除額が1,200万円から1,300万円に増額される。 |
⑥固定資産税の減税措置適用期間を延長 | 住宅を購入した場合、固定資産税の優遇措置がある。 一般住宅は3年間減税期間があるが、長期優良住宅の場合5年間まで延長される。 |
⑦地域型住宅グリーン化事業の補助金 | 国土交通省が推進している地域型住宅グリーン化事業で、最大140万円の補助金を受けることができる。 |
※取得時期、入居時期等の条件があります。
長期優良住宅についてのメリット・デメリットについては下記の記事で詳しく解説しています。
参考:【2023年最新】長期優良住宅の認定に関するメリットとデメリットを専門家が徹底解説
長期優良住宅に否定的な意見があるのはなぜ?
長期優良住宅に否定的な見解を上げるのは、一部の住宅会社のようです。
なぜ一部の住宅会社が否定的かというと、長期優良住宅の建設にはお金と住宅会社の手間が増えるからです。
設備のいい住宅を建てると、工程が増え点検も必要になります。
それらの手間を削減する為に長期優良住宅に否定的な意見を伝える住宅会社があるのです。
長期優良住宅を検討している方は、是非メリット・デメリットを比較したうえで、判断されてはいかがでしょうか。
環境性能評価システムを検討しているなら「環境・省エネルギー計算センター」に相談しよう!
長期優良住宅は、長い期間良い状態で住み続けることができ、住む側にとって非常に安心感のある住宅です。
事業者の方で、長期優良住宅に限らず環境性能評価システムの取得についてお考えの方は、「環境・省エネルギー計算センター」にご相談ください。
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