建築基準法が2025年4月に改正されます。改正箇所が多く、「省庁発行の資料を見ても、いまいち要点がつかめない」と困っている設計担当者の方も、多いのではないでしょうか。
今回は、迫る建築基準法改正に向けて、必ず押さえたい要点を6つに絞り、分かりやすく解説します。忙しい業務の合間でも把握できるよう、現行制度との変更点を中心に簡潔にまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
建築基準法とは
建築基準法は、国民の生命や健康、財産を保護するため、また公共の福祉を守るために設けられた法律です。建築物の敷地・構造・設備・用途などに関して、最低限満たすべき基準を定めています。
災害時においても倒壊せず、人命を守る強度を建築物に求める、根拠となる法律です。
建築基準法は社会情勢や人々の生活様式の変化に合わせて、改正が重ねられています。2025年4月の改正では、建物の構造・仕様などの基準が一部変更されます。
2025年改正建築基準法の目的と施行スケジュール
2025年4月に迫る、建築基準法の改正目的と施行スケジュールを解説します。改正建築基準法の施行日以降に建築確認申請する建築物は、新しい基準への適合が求められるため、スケジュールには特に注意してください。
建築物基準法改正の目的
※参照:改正建築基準法について|国土交通省(以下同)
2025年の建築基準法改正の主な目的は、建築物分野での省エネ対策の加速です。
日本は2050年のカーボンニュートラル達成に向け、国を挙げて省エネ対策に邁進しています。国内のエネルギー消費の約3割を占める建築分野での省エネ対策の加速は、カーボンニュートラル達成のために重要な意義を持つと考えられ、基準の変更に至りました。
建築分野での木材利用の促進が言及されているのも、省エネ対策に関連します。木材は、空気中の炭素を固定するようにはたらきます。建築分野で木材利用を拡大できれば、温室効果ガスの一因である炭素を吸収することになり、カーボンニュートラルの達成につながると期待されています。
改正建築物基準法の施行スケジュール
2025年の改正建築基準法は、以下のスケジュールで施行されます。
同時に改正される建築物省エネ法も同じ日程で進みます。
2022年6月17日 公布(済) |
2025年4月1日 施行 |
建築基準法改正の要点6つ
建築会社が押さえておきたい改正建築基準法の要点は、全部で6つあります。
- 4号特例の縮小
- 構造規制の合理化
- 省エネ基準適合の義務化
- 大規模木造建築物の防火規定変更
- 中層木造建築物の耐火性能基準合理化
- 既存不適格建築物に対する現行基準の一部免除
それぞれの要点を、詳しく解説します。
1. 4号特例が縮小される
2025年の改正で最重要ともいわれる変更点が、4号特例の見直しです。実質的な縮小であり、これまで4号建築物だった区分は、「新2号建築物・新3号建築物」に再編成されます。
「4号特例」とは
4号特例とは、木造の戸建住宅を建築する際、構造審査を省略できる特例でした。
以下の要件を満たす建築物が4号特例に該当します。
【4号建築物の要件】 | 一般建築物 | 特殊建築物 | |
---|---|---|---|
木造 | 階数 | 2階建て以下 | |
延べ面積 | 500m2以下 | 100m2以下 | |
高さ | 13m(軒高9m)以下 | ||
非木造 | 階数 | 平屋 | |
延べ面積 | 200m2以下 | 100m2以下 |
一般建築物は戸建住宅や事務所など、特殊建築物は学校や病院、店舗、共同住宅が該当します。
4号建築物はこれまで、「建築士が設計」「工事監理者(建築士)が、設計図書通りの施工を確認」していれば、構造耐力関係規定等の審査を省略できました。一般的な戸建住宅の大半は4号建築物に該当するため、申請が少なくて済み、スピーディーに施工できるというメリットもありました。
改正後の「新2号建築物」と「新3号建築物」とは
2025年4月から、4号特例は「新2号建築物」と「新3号建築物」に再編されます。
- 新2号建築物:木造2階建て・延べ面積200m2超
- 新3号建築物:木造平屋建て・延べ面積200m2以下
これまで4号建築物はすべて、審査を省略できました。しかし、2025年4月以降は、基本的に審査が必要になります。
※ 都市区域外に建築する新3号建築物は、引き続き審査省略が可能です。
また、建築確認申請の折、省エネ基準・構造安全性基準適合性を示す図書を提出しなければなりません。
2. 構造規制の合理化が図られる
建築技術の発展や施主ニーズの多様化により、多様な木造建築物が建てられるようになってきました。ただ、現行の建築基準法は、最新の実態に対応できていないのが実情です。
2025年の改正では、実情に合わせて構造規制が合理化されます。
階数の高い木造建築物増加に合わせた改正とは
現行の建築基準法は、高さ13m(軒高9m)を超える高層木造建築物に、詳細な構造計算を課しています。また、一級建築士でなければ設計や工事監督ができない規則もあります。
ただ近年は、環境や資源の配慮などから、高層木造建築物の需要が高まっています。高層化が続く木造建築物を円滑に施工するため、階数の高い木造建築物の構造計算が合理化されることになりました。
改正後は、「3階以下かつ、高さ16m以下」までの木造建築物は、簡易な構造計算で建築可能で、二級建築士も設計を手掛けられるようになります。
ただし、構造計算が必要な延べ面積の要件は縮小されます。これまでの500m2超に対し、改正後は300m2超の建築物で構造計算が必要です。
実情に合わせた壁量基準等の見直しとは
現行の建築基準法は、必要な建築物の壁量・柱の小径は、屋根の重さ・軽さを基準として算定するよう定めています。
ところが、近年は建築物の総重量が大きくなる傾向があります。省エネ性能の高い住宅は総じて、断熱性を高めるためにトリプルガラスサッシを採用したり、創エネのための太陽光発電パネルを屋根上に設置したりするためです。
重い建築物は、従来の基準以上に、地震動への配慮が欠かせません。
そこで、2025年の建築基準法改正では、木造建築物は実際に応じて、必要な壁量や柱の小径を算定できるよう見直しされます。
3. 省エネ基準適合が義務化される
2025年4月から、原則的にすべての新築建築物に対して、省エネ基準への適合が義務化されます。施行日以降に着工する建築物が対象です。
これまで届出義務・説明義務に留まっていた建築物も、基準適合が必須となるため、施主への丁寧な説明と合意形成が重要になります。
省エネ基準は、住宅・非住宅ともに適用される「一次エネルギー消費量基準(BEI)」と、住宅のみに適用される「外皮基準」から成ります。建築物の省エネ性能の計算結果を持って、省エネ適判(省エネ適合性判定)を受けなければならず、施工スケジュールにも影響する大切なポイントです。
なお、増改築の場合は、増改築部分のみが省エネ基準に適合していれば問題ありません。従来のように増改築後の建築物全体で、省エネ基準に適合する必要はない点を押さえてください。
4. 大規模木造建築物の防火規定が変更される
建築基準法の改正によって、建築物のデザイン性向上も期待されています。
現行基準では、 3,000m2を超える木造の大規模建築物に対して、耐火に関する厳しい規定があります。壁や柱を耐火構造とする場合、木造部分を不燃材料で覆わなければなりません。せっかくの木のぬくもりを隠さざるを得ず、デザインも画一的でした。
改正後は、新しい構造方法の導入により、構造木材の「表し(あらわし)」使用が可能になります。木材利用の促進という、建築基準法改正の目的にも適った改正ポイントです。
5. 中層木造建築物の耐火性能基準が合理化される
建築物の火災を防ぐため、現行の建築基準法は階数に応じた耐火構造性能を求めています。
<現行基準>
- 最上階から階数4以内: 1時間耐火性能
- 最上階から階数5以上14以内: 2時間耐火性能
- 最上階から階数15以上:3時間耐火性能
火災発生時の安全確保のためには、当然明瞭な基準が必要です。しかし現行基準では、5階建てと14階建ての建築物に、同水準の耐火性能が求められます。
2025年の改正では、中層建築物に対する耐火性能基準が合理化されます。例えば、5階建て以上・9階建て以下の建築物の最下層で、90分耐火できれば木造での設計が可能になります。
6. 既存不適格建築物に対する現行基準の一部が免除になる
現行の建築基準法の施行前に建てられた建築物の中には、現法に適合しない事例も多々あります。接道義務や道路内建築制限に違反している建築物が、代表例でしょう。そもそもの立地や土地条件が違法だと、どうリノベーションしても現行法に適合させられない問題が発生しています。
今回の改正では、特定条件を満たせば、現行基準を適用除外とする特例が設けられました。古い建築物の再利用が促進され、地域の活性化にもつながると期待されています。
まとめ
建築基準法は、人々の生命や安全を守るために定められています。
2025年4月の改正では、4号特例の廃止や構造規制の合理化などが盛り込まれ、今後の建築業界に多くの影響を与えると考えられています。
同時期に省エネ基準への適合義務化も予定されており、一気に押し寄せる変更に戸惑う建築会社もあるかもしれません。省エネ計算や適判の代行などは、積極的に外注し、自社のリソースをコア業務に向ける経営判断が奏功する場面も増えるでしょう。
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