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住宅トップランナー制度とは?概要と今後の見通しをわかりやすく解説

「住宅トップランナー制度の基準や対象事業者について、あらためて確認したい」と、情報をお探しでしょうか。

今回は、複雑でわかりにくい点も多い制度の概要や現状を、わかりやすく解説します。

今後、見直しが検討されているポイントもまとめました。

最新情報を押さえ、適切に対応を進めるヒントにしてください。

 

住宅トップランナー制度とは?

住宅トップランナー制度は、建築業界の省エネ化を推進するため、2017年4月1日から始まった制度です。

はじめに、住宅トップランナー制度を、目的・内容・対象事業者の3つの観点から解説します。

住宅トップランナー制度の目的

住宅トップランナー制度の目的は、市場に供給される住宅の省エネ性能の底上げです。

一定以上の住宅を供給する、大手住宅事業者を対象とします。

市場に多くの住宅を供給する大手事業者が住宅の省エネ化に舵を切れば、省エネ住宅の建築技術向上と、スケールメリットによる建築コスト削減が期待できます。

技術力向上とコスト削減の恩恵は中小事業者に波及し、やがて中小事業者も省エネ住宅を建築しやすくなるでしょう。

その結果、省エネ住宅の普及が促進されるというシナリオです。

住宅トップランナー制度の内容

住宅トップランナー制度の対象事業者は、国が定めたトップランナー基準を達成する努力義務を負います。

「努力義務を怠った」と国が判断した事業者は、国から勧告を受ける可能性があります。

勧告に従わない場合、社名の公表や罰則等の命令がされる場合があります。

勧告を受けるのは省エネ性能の向上努力が不十分だと判断された場合です。

期限年度までに目標を達成していない」などのケースが該当します。

トップランナー基準の詳細は、後ほど詳しく解説します。

住宅トップランナー制度の対象事業者

住宅トップランナー制度の対象は、年間に一定量以上の住宅を供給する事業者です。

住宅トップランナー基準の見直しについて|国土交通省(数値、以下同)

 

住宅トップランナー制度の基準

住宅トップランナー制度が定める基準「トップランナー基準」は、性能基準と目標年度の2点がポイントです。それぞれを詳しく解説します。

住宅トップランナー制度の性能基準

トップランナー基準は、外皮基準と一次エネルギー消費量基準の2つで構成されます。

住宅仕様 外皮基準 一次エネルギー消費量基準
(省エネ基準に対しての削減量)
建売戸建住宅 省エネ基準に適合 15%
注文戸建住宅 25%(当面は20%)
賃貸アパート 10%
分譲マンション 強化外皮基準に適合 20%

 

外皮基準は、地域区分ごとに決められたUA値・ηAC値以下でなければなりません。

一次エネルギー消費性能は「BEI」で表される数値です。

建売戸建住宅は0.85以下、注文戸建住宅は0.8以下、賃貸アパートは0.9以下、分譲マンションは0.8以下になる必要があります。

外皮基準は、目標年度に供給する全住宅で達成が求められます。

一次エネルギー消費量基準は、目標年度に供給する全住宅の平均値で達成していれば、問題ありません。

住宅トップランナー制度の目標年度

基準達成が判断される目標年度は、住宅仕様によって異なります。

  • 建売戸建住宅:2020年度
  • 注文戸建住宅:2024年度
  • 賃貸アパート:2024年度
  • 分譲マンション・2026年度

トップランナー基準は、適宜追加されてきました。

開始年度が異なるため、達成目標年度も一律ではない点に注意してください。

 

住宅トップランナー制度の達成状況

住宅トップランナー制度は2017年に始まり、分譲マンション以外の住宅仕様は目標年度を迎えています。実際の達成状況はどうなのでしょうか。簡潔に解説します。

※分譲マンションに対する住宅トップランナー制度は、2023年度に始まったばかりです。達成状況の集計は、まだ実施されていません。

外皮基準の達成状況

2022年度時点で、年間に供給するすべての住宅が外皮基準(省エネ基準)に適合していた事業者の数と割合を表にまとめました。

住宅仕様 事業者数(社) 割合
建売戸建住宅 77/84 91.7%
注文戸建住宅 39/68 57.4%
賃貸アパート 3/12 25.0%

 

また、外皮性能が省エネ基準に適合している住宅の戸数割合は、以下の通りです。

住宅仕様 割合
建売戸建住宅 99.7%
注文戸建住宅 99.7%
賃貸アパート 97.1%

 

一次エネルギー消費量基準の達成状況

同じく2022年度時点で、一次エネルギー消費量基準を達成していた事業者の割合を、表にまとめました。

住宅仕様 目標となる平均BEI 事業者数(社) 割合
建売戸建住宅 0.85 77/84 91.7%
注文戸建住宅 0.8 61/68 89.7%
賃貸アパート 0.9 9/12 75.0%

 

一次エネルギー消費量基準が、トップランナー基準を達成していた住宅戸数の割合は、以下の通りです。

 

住宅仕様 割合
建売戸建住宅 86.7%
注文戸建住宅 81.3%
賃貸アパート 90.3%

住宅トップランナー制度未達への勧告実施状況

住宅トップランナー制度は、事業者の省エネ住宅供給に対する努力が相当に不足していると判断された場合は、国が事業者に勧告できます。

ただ、国土交通省の資料公開(2024年5月29日)時点で勧告を受けた事業者はゼロです。

しかし、「勧告を受けないなら、住宅トップランナー制度を厳守しなくても良いのでは」と考えてはいけません。

建売戸建は、目標年度(2020年度)以降に基準未達成だった場合、事業者に未達の理由や改善計画の報告を求めています。

さらに2023年度以降は、基準未達の事業者にヒアリングも実施しています。

今後、社名が公表されれば、市場からの信頼にも影響しかねません。

 

住宅トップランナー制度見直しの動き

現在、国は住宅トップランナー制度の見直しを検討しています。見直しに至った背景と、今後の見通しを解説します。

住宅トップランナー制度が見直される背景

住宅トップランナー制度が見直しされる背景は、2つあります。

まず、目標年度を迎える住宅仕様がある点です。

住宅トップランナー基準の見直しについて|国土交通省(画像、以下同)

画像中、赤枠で囲まれた3つの住宅仕様で目標年度を迎えています。

現状を踏まえ、今後の方針と新しい基準の制定が早急に必要です。

また、国土交通省と経済産業省、環境省が連携して設置した省エネ推進のための会合「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」(2021年8月)が、現状より高い省エネ基準(以下)を示したことも、住宅トップランナー制度の見直しに影響しています。

◎住宅トップランナー制度を2025年に以下の通り見直し、目標年度を2027年とする

注文住宅トップランナー BEI=0.75(現行は0.8)+強化外皮基準
注文住宅トップランナー以外 BEI=0.8程度+強化外皮基準

 

見直しポイント(1) 性能面

2027年を目標に、以下の基準への変更が検討されています。

対象:トップランナー事業者が供給するすべての住戸

・外皮性能:強化外皮基準に適合

・一次エネルギー消費量基準:平均値で0.75(注文戸建)~0.8(建売戸建・賃貸アパート)

検討中の新しい基準を達成できている事業者の割合は、以下の通りです(2022年度時点)。

新しい基準が2025年に施行、2027年度までに達成を求められると、事業者には相当の負担がかかると予想されます。

全住宅が強化外皮基準を達成済みの事業者割合 新しいBEI基準を平均値で満たす事業者割合
建売戸建住宅 11.9% 66.7%
注文戸建住宅 5.9% 48.5%
賃貸アパート 0% 41.7%

 

見直しポイント(2) 太陽光発電システムの取り扱い

一般家庭への再生可能エネルギー(太陽光発電システム)導入も、一層推進される見通しです。

検討中の具体的な数値は、以下の通りです。

  • 2030年、新築戸建住宅の6割に太陽光発電システムを設置
  • 2050年、設置が合理的と考えられる住宅・建築物に標準搭載

現状、新築戸建住宅への太陽光発電設備の設置率は、31.4%(令和4年度)。太陽光発電設備の導入はコストもかかり、建築主への説明や合意形成への努力が必要になると考えられます。

 

建築業界をめぐる動向と見通し

2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、エネルギー消費の約3割を占める建築物分野での省エネ対策は、今後も続く見通しです。

分譲マンションにおける住宅トップランナー制度の概要等について|国土交通省

建築業界には、さらに高性能な住宅の開発や普及が求められています。建築主への丁寧な説明と合意形成の努力も必要となり、社内のリソースが不足する可能性もあるでしょう。省エネ計算や申請手続きなど、煩雑な業務は積極的にアウトソーシングし、リソースをコア業務に集約する業務改革を検討しても良いかもしれません。

 

省エネ計算の代行・建築物の性能評価は「環境・省エネルギー計算センター」にお任せください

住宅トップランナー制度は、大手住宅供給事業者を対象とし、高性能な省エネ住宅の普及を目標値をもって推進する制度です。2024年度には分譲マンション以外の住宅仕様が目標年度を迎え、基準の見直しが進められています。

地球温暖化対策は喫緊の課題であり、国も建築分野の省エネ化に一層力を入れる様相です。

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※専門的な内容となりますので、個人の方は設計事務所や施工会社を通してご相談された方がスムーズです。

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