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断熱範囲図とは?基礎知識や省エネ適判等で求められる記載項目を解説

省エネ適合判定や住宅性能評価の認定を受ける際、断熱範囲図の提出を求められるケースがあり、どの点に気を付けて記載すべきか悩まれる方が多くいらっしゃいます。

そこでこの記事では、断熱範囲図の概要と省エネ適判等で要求される記載項目について解説します。

断熱範囲図以外で断熱構造を証明する方法についても記載するので、図面作成業務の手間を省きたい方は参考にしてください。

 

断熱範囲図とは

断熱範囲図とは断熱材の施工部位を図示する図書で、平面図や立体図で作成します。

建築物に施された断熱仕様を証明するもので、主に省エネ性能の認証制度で使用します。

すべての省エネ認証制度で使用するわけではなく、省エネ適合判定や住宅性能評価等の申請を行った後、断熱性能を確認するための追加資料として要求される可能性がある図面です。

 

断熱範囲図の書き方と3つの記載項目

断熱範囲図の提出を要求される可能性がある省エネ適合判定において、記載が望ましい項目は下記の3点です。

  • 断熱材の仕様
  • 断熱材の施工部位・厚さ
  • 方位別の外皮面積

それぞれの内容について、詳しく解説します。

断熱材の仕様

断熱範囲図には壁や床・屋根等に使用する断熱材の仕様について記載しますが、記載内容は断熱材によって異なります。

引用:国土交通省「建築物エネルギー消費性能基準への適合義務対象建築物に係る設計図書作成マニュアル

 

断熱材の種類は、「グラスウール断熱材」や「吹付け硬質ウレタンフォーム断熱材A種1」などと記載します。

熱性能が規格等で規定されている場合は「グラスウール断熱材(JIS A 〇〇〇)」と規格まで記載し、熱性能が規定されていない場合は熱伝導率も示しましょう。

断熱材の施工部位・厚さ

断熱範囲図には断熱材の種類にかかわらず、施工部位や断熱材の厚さを記載します。

断熱材の種類とともに、施工部位と厚みを明示しましょう。

たとえば外壁にモデル建物法対象の断熱材を使用する場合は、下記のように示します。

 

例:【外壁】グラスウール断熱材 t=50

 

本来断熱を施す必要のある外壁や屋根等で無断熱の場所は、「外壁:無断熱」などと明示します。

方位別の外皮面積

断熱範囲図では、建築物の方位別の外皮面積についても記載が必要です。

外皮面積は熱的境界である、外壁・屋根・天井・床・窓・ドアなどが対象となります。

また外皮面積は、方位・建物の仕様用途・断熱材の仕様別に記載する必要があります。

記載例については、国土交通省の「建築物エネルギー消費性能基準への適合義務対象建築物に係る設計図書作成マニュアル」から詳細をご確認いただけます。

 

建築物で断熱構造が必要な部位と断熱仕様

建築物で断熱範囲図の対象となる断熱構造が必要な部位は、温度的にみて外気と室内を区分する「熱的境界」です。

引用:一般社団法人住宅生産団体連合会「省エネ計算の実践講習会【令和元年度版】

具体的な部位や必要な断熱仕様について、2025年4月からの省エネ基準である「断熱性能等級4」に応じた、国土交通省が告示する「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する基本的な方針」と「住宅部分の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する誘導基準及び一次エネルギー消費量に関する誘導基準」に基づき、それぞれ詳しく解説します。

屋根・外気に接する天井

屋根や天井は、外気に接する部分が断熱施工の対象です。

屋根の下にある小屋裏に換気口がある場合は、天井に断熱施工をおこないます。

仕様基準の断熱性を満たす断熱材は、断熱建材協議会の「省エネ基準断熱材・窓等 製品リスト」で確認できます。

また断熱性の向上には、家全体を断熱材ですっぽり包む必要があるため、天井と屋根の取り合い部を途切れなく断熱していることを図面でも表すのが大切です。

特に天井埋め込み型照明器具まわりは、断熱材や防湿フィルムを使用する天井断熱では連続性の確保が難しいので、屋根断熱や桁上断熱を選択しましょう。

壁・床

壁や床は、外気と接する部分の断熱施工を主とし、部屋と部屋を仕切る壁や2階の床などは対象外です。

1階床より下を断熱する方法は、床断熱と基礎断熱があります。

 

断熱部位

断熱方法

床断熱

・床下に発泡プラスチック系断熱材や繊維系断熱材を施工する

・換気口や基礎天端と土台の間に基礎パッキン材を設置して、床下の換気を確保する

基礎断熱

基礎外側断熱

・コンクリート同時打ち込みを基本に、吸水性の少ないボード状プラスチック系断熱材を用いる

・立ち上がりの最下部から天端まで施工

・シロアリが食害する恐れがあるため、防蟻対策が必要

基礎内側断熱

・コンクリートと同時打ち込む、または後張りでボード上プラスチック系断熱材を施工する

・基礎の天端と土台の取り合い部は現場発泡断熱材を使用して結露防止を促す

・シロアリの食害を受けにくい

引用:国土交通省「令和2年度国土交通省補助事業住宅省エネルギー技術講習テキスト

仕様基準の断熱性を満たす断熱材は、屋根・天井と同様に断熱建材協議会の「省エネ基準断熱材・窓等 製品リスト」で確認が可能です。

木造建築物に多い木造軸組構法では、壁と床、壁と天井の取り合い部分に隙間が生じやすいため、壁の上下の気流止めを施工するのが重要です。

またコンセントやスイッチ類は、可能な限り断熱施工を有する充満断熱の外壁は避け、間仕切り壁に取り付けると、断熱性能を損ないにくくなります。

開口部

開口部である窓やドアは、屋根や壁と比較して室内の熱が外に逃げやすいため、高い断熱性能のあるものを選ぶのが非常に重要です。

窓には断熱性能表示制度という、窓の断熱性能と日射熱取得率について表示する仕組みで断熱性の高さを確認できます。

引用:経済産業省資源エネルギー庁「省エネ性能向上のための窓の性能表示制度

 

断熱性能

窓から熱が出入りするのを抑え、室内の熱を保てるかを示す指標。

6つの星マークで表示し、星マークが多いほど断熱性能が高い。

日射熱取得率

夏場は太陽光を遮り、冬場に太陽光を室内に取り入れる性能を示す指標

3つのマークで表示。

 

☆の数が2つでも断熱性能等級4をクリアできる可能性がありますが、2030年に断熱性能等級5が基準になるのを見据え、☆の数が3つ以上の窓を用いるのが理想です。

また、庇(ひさし)、軒(のき)の有無によっても求められる断熱性が異なります。

断熱構造の対象から除外される部位

建築物の部位によっては、断熱構造の対象から除外される場所があります。

基本的に除外される部位は、下記のとおりです。

  • 玄関や勝手口などに分類される部分にある土間床
  • 断熱構造となっている浴室の下部にある土間床
  • 断熱構造となっている外壁から突き出したベランダ・軒・袖壁など
  • 外気に通じる床裏、天井裏、小屋裏に接する壁
  • 居室に面する部分が断熱構造となっている物置や車庫などに分類されるエリアの、居室に面しない部位

たとえば浴室に断熱構造となっているユニットバスを使用している場合、土間床部分の断熱構造は不要となります。

 

断熱範囲図以外で建築物の断熱構造が確認できる図面

断熱範囲図以外で建築物の断熱構造が確認できる図面のひとつとして、「矩計図」があります。

ここでは、建築現場に欠かせない矩計図について、詳しく解説します。

矩計図とは

矩計図とは建築物の一部を垂直に切断し、部材の寸法や接合部分・取り付け部分等を詳細に記載した図面です。

建築現場でプランと実際の施工の誤差が生まれないよう、情報が細かく書かれているため、「詳細断面図」とも呼ばれています。

矩計図に記載されている主な内容は、下記のとおりです。

  • 断熱材仕様、厚み
  • 基礎の形状、配筋
  • 躯体に使用する材料の厚み
  • 躯体の仕上げまでの取り合い、寸法、納まり
  • 仕上げ材の仕様、寸法
  • 各部屋の構造の取り合い
  • 地面からの立ち上がりの高さや基礎の深さなど、建築物におけるすべての高さの寸法

内装の納め方から外装の仕上げ方まで、建築物全体で施工主がこだわったポイントが明確に記載されているので、プラン通りの建築物を施工するために不可欠な図面です。

 

矩計図で確認・証明できる断熱構造

矩計図で確認や証明ができる断熱構造は、下記のとおりです。

  • 断熱材の仕様
  • 断熱材の厚み
  • 断熱材が施されている部位や仕上げ方、納まり方 など

矩計図は、断熱範囲図に記載すべき内容の多くを網羅しているといえます。

方位別の外皮面積については別途資料を用意するか、追加で記載する必要があります。

モデル建物法の対象外である断熱材や、熱伝導率等の熱性能が規格等で規定されている断熱材以外の断熱材を使用する場合は、熱性能についても記載しましょう。

 

まとめ

断熱範囲図は断熱材の施工部位を図示する図面で、省エネ適合判定や住宅性能評価で提出が求められます。

2025年より省エネ基準適合の義務化が開始されるため、設計士など設計業務にかかわる職種では作成の意図や記載内容について把握しておくことが大切です。

一方矩計図など断熱構造が詳細に記載された図面をすでに作成している場合は、手書きで必要事項を追加するだけでクリアできる場合もあります。

断熱範囲図の提出が本当に必要か迷う場合は、省エネ適合判定や住宅性能評価業務の代行をおこなう弊社にご相談ください。

 

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