近年、企業に対して環境への配慮が求められるようになってきています。
この動きに伴い、ZEB(ゼブ)やBELS(ベルス)といった環境への配慮に関する認証制度の取得を検討する企業が増えてきました。
認証制度の1つである「CASBEEウェルネスオフィス」では、環境への配慮などに関する60もの評価項目が定められています。
本記事では、CASBEEウェルネスオフィスの評価項目や採点基準をわかりやすく解説します。
CASBEEウェルネスオフィスの取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
CASBEEウェルネスオフィスとは?
CASBEEウェルネスオフィスとは、建物で働く人の快適性・健康性の維持・増進を支援する建物の仕様や性能、取り組みを評価するツールです。
働く人の快適性や健康性に直接影響を与える要素を評価するだけでなく、安全・安心や知的生産性の向上に関する要素も評価します。
評価対象になる主な建築物は事務所となっており、複合用途ビルの場合は主に事務所用途の部分を対象に評価します。
いくつかのフロアが評価の対象になる場合、主要エリアもしくは基準階といった代表的なエリアや階層を対象に評価することも可能です。
CASBEEウェルネスオフィスの評価項目
CASBEEウェルネスオフィスの評価基準は、以下の5つの大項目に分類されており、大項目の下に評価要素と評価項目が定められています。
- 健康性・快適性のための取組み
- 利便性向上
- 安全・安心性
- 運営管理
- プログラム
大項目の下にある評価要素と評価項目について、以下で詳しく解説します。
大項目1:健康性・快適性のための取組み
「健康性・快適性のための取組み」の評価要素は、以下の6つに分類されます。
- 空間・内装
- 音環境
- 光・視環境
- 熱・空気環境
- リフレッシュ
- 運動
評価要素と評価項目は、以下の表の通りです。
評価要素 | 評価項目 |
空間・内装 | レイアウトの柔軟性 |
知的生産性を高めるワークプレイス | |
内装計画 | |
作業環境 | |
広さ | |
外観デザイン | |
音環境 | 室内騒音レベル |
吸音 | |
光・視環境 | 自然光の導入 |
グレア対策 | |
照度 | |
熱・空気環境 | 空調方式及び個別制御性 |
室温制御 | |
温度制御 | |
換気性能 | |
リフレッシュ | オフィスからの眺望 |
室内の植栽・自然とのつながり | |
室外(敷地内)の植栽・自然とのつながり | |
トイレの充足性・機能性 | |
給排水設備の設置自由度 | |
リフレッシュスペース | |
食事のための空間 | |
分煙対応、禁煙対応 | |
運動 | 運動促進・支援機能 |
階段の位置・アクセス表示 |
それぞれの評価要素が具体的にどのような点を評価するのか、確認していきましょう。
空間・内装
「空間・内装」では、内装材に統一感があるか、オフィスで使う道具や備品が、働く人の作業環境に配慮して選ばれているかなどを評価します。
音環境
「音環境」では、騒音レベルはどの程度か、壁・床・天井に吸音材をどれくらい使用しているかなどを評価します。
光・視環境
「光・視環境」では、自然光が入るように設計されているか、建物の開口部においてスクリーンやブラインドを使ってグレア対策をしているかなどを評価します。
熱・空気環境
「熱・空気環境」では、均質な温度環境となるよう配慮した空調方式が採用されているか、窓システムや外壁、屋根、床において室内への熱の侵入に対して配慮がなされているかなどを評価します。
リフレッシュ
「リフレッシュ」では、執務空間で植栽などの自然を感じることができるか、トイレは余裕を持った器具数が設置されているか、食事や軽食を取れるスペースがあるかなどを評価します。
運動
「運動」では、更衣および用具収納などの運動を促進・支援する装備があるか、階段の使用を促進する表示があるかなどを評価します。
大項目2:利便性向上
「利便性向上」には、以下の2つの評価要素が定められています。
- 移動空間・コミュニケーション
- 情報通信
評価要素と評価項目は、以下の表の通りです。
評価要素 | 評価項目 |
移動空間・コミュニケーション | 動線における出会いの場の創出 |
EV利用の快適性 | |
バリアフリー法への対応 | |
打ち合わせスペース | |
情報通信 | 高度情報通信インフラ |
それぞれの評価要素が具体的にどのような点を評価するのか、説明します。
移動空間・コミュニケーション
「移動空間・コミュニケーション」では、会話を誘発するような動線上の工夫があるか、業務空間において打ち合わせ空間が確保できているかなどを評価します。
情報通信
「情報通信」では、OAフロアなどによりレイアウト変更に対応できるようになっているかどうかなどを評価します。
大項目3:安全・安心性
「安全・安心性」の評価要素は、以下の4つに分類されます。
- 災害対応
- 有害物質対策
- 水質安全性
- セキュリティ
評価要素と評価項目は、以下の表の通りです。
評価要素 | 評価項目 |
災害対応 | 耐震性 |
災害時エネルギー供給 | |
有害物質対策 | 化学汚染物質 |
有害物質を含まない材料の使用 | |
有害物質の既存不適格対応 | |
水質安全性 | 水質安全性 |
セキュリティ | セキュリティ設備 |
具体的にそれぞれの評価要素がどのような点を評価しているのか、見ていきましょう。
災害対応
「災害対応」では、建築基準法に定められた耐震性を有するか、揺れを抑える装置を導入しているか、非常用発電設備を備えているかなどを評価します。
有害物質対策
「有害物質対策」では、建築基準法規制対象外となる建築材料を採用しているか、アスベストの封じ込め・囲い込みが実施済みかなどを評価します。
水質安全性
「水質安全性」では、給水管の破損、腐食、詰まりなどによる水質劣化を防止する措置を講じられているかなど、水質安全対策を満たしているかどうかを評価します。
セキュリティ
「セキュリティ」では、監視カメラの設置や、窓などの人感センサーの設置など、防犯を実施しているかどうかを評価します。
大項目4:運営管理
「運営管理」には、以下の3つの評価要素が定められています。
- 維持管理計画
- 満足度調査
- 災害時対応
評価要素と評価項目は、以下の表の通りです。
評価要素 | 評価項目 |
維持管理計画 | 維持管理に配慮した設計 |
維持管理機能の確保 | |
維持保全計画 | |
維持管理の状況 | |
中長期保全計画の有無と実行性 | |
満足度調査 | 満足度調査の定期的実施等 |
災害時対応 | BCP(事業継続計画)の有無 |
消防訓練の実施 | |
AEDの設置 |
それぞれの評価要素の狙いについて説明します。
維持管理計画
「維持管理計画」では、防汚性の高い仕上げ方法や建材・塗装・コーティングを採用するなど維持管理に配慮した設計になっているか、建築・設備の維持保全計画と体制が確立しているかなどを評価します。
満足度調査
「満足度調査」では、入居者や入居組織に対して満足度調査を実施し、以降の改善策に活用しているかどうかを評価します。
災害時対応
「災害時対応」では、ビル運営のBCPを作成しているか、消防計画を作成して法令および消防計画に基づく消防訓練を行っているかなどを評価します。
大項目5:プログラム
「プログラム」の評価要素と評価項目は、以下の表の通りです。
評価要素 | 評価項目 |
プログラム | メンタルヘルス対策、医療サービス |
情報共有インフラ | |
健康維持・増進プログラム |
具体的にどのような点を評価するのか、見ていきましょう。
プログラム
「プログラム」では、健康診断やストレスチェックが行われているか、ビル内の取り組みを周知する掲示板及びサイトを有し、ビルサービスやイベントの情報を周知しているかどうかなどを評価します。
CASBEEウェルネスオフィスの採点基準
CASBEEウェルネスオフィスでは、評価項目ごとに採点基準が定められており、それぞれレベル1〜5の5段階で採点することが可能です。
原則、建築基準法など最低限の必須要件を満たす場合は、レベル1で評価されるような採点基準となっています。
一般的な技術・社会水準に相当すると判断される場合は、レベル3と評価されます。
CASBEEウェルネスオフィスの総合評価
各評価項目の5段階評価をもとに総合得点が算出されると、CASBEEウェルネスオフィスの総合評価が決定します。
CASBEEウェルネスオフィスの総合評価は、以下のようにC~Sまでの5ランクに分かれています。
ランク | ランク表示 | 評価 | 総合得点(100点満点) |
S | ★★★★★ | すばらしい | >75点 |
A | ★★★★ | 大変良い | ≧65点 |
B+ | ★★★ | 良い | ≧50点 |
B- | ★★ | やや劣る | ≧40点 |
C | ★ | 劣る | <40点 |
総合評価が「B+」であれば標準的であると判断されるため、「B+」以上の評価を目指しましょう。
なお、CASBEEウェルネスオフィスには、評価項目や採点方法をまとめた100ページを超える評価マニュアルがあります。
評価マニュアルが必要な方は、以下のリンクから閲覧・購入してください。
CASBEE-ウェルネスオフィス 評価マニュアル(2021年版)
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この記事で解説したように、CASBEEウェルネスオフィスには60もの評価項目があり、評価マニュアルも100ページを超えるものとなっています。
自社内に専門家がいない場合は、評価に多くの人的コストと時間がかかってしまうため、専門家に相談することをおすすめします。
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