熊本県で一定規模以上の建築物を建てる場合、県に「建築物環境配慮計画書」の届出をする必要があります。計画書を作成する際には、「CASBEE熊本」による評価を行います。
CASBEE熊本とは、国土交通省の支援のもと、(一財)建築環境・省エネルギー機構(現:(一財)住宅・建築SDGs推進センター)が開発した「CASBEE」に熊本県の地域特性などを考慮した重点項目を加えた基準です。熊本県独自の基準も含まれるため、全国版のCASBEEとは評価基準が異なる点もあります。
この記事では、CASBEE熊本の評価方法や届出の手順などについて、詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
熊本県建築物環境配慮制度
熊本県は、地球温暖化対策促進のために「熊本県地球温暖化の防止に関する条例」を制定しました。
条例では、建築部門における温室効果ガスの排出量削減に向けた制度として「熊本県建築物環境配慮制度」が定められています。
熊本県建築物環境配慮制度では、一定以上の床面積を有する建築物を新築・増改築する場合、環境配慮に関する取組計画を記載した「建築物環境配慮計画書」を作成し、工事着手の21日前までに提出することが義務付けられています。
対象となる建築物
熊本県建築物環境配慮制度では、床面積によって届出の要否が定められています。
熊本県では、床面積2,000㎡以上の建築物の新築、増改築を行う場合、「建築物環境配慮計画書」の提出が義務付けられています。
一方、床面積2,000㎡未満の建築物の新築又は増改築、建築物の改修を行う場合は、「建築物環境配慮計画書」の届出義務はなく、任意提出となります。なお、戸建住宅は新築・増改築のみが対象です。
熊本県では全国初の取り組みとして、既存建築物の場合も「建築物環境配慮計画書」を任意で提出することが可能とされています。しかし、既存の戸建住宅は現時点では制度の対象外です。
CASBEE熊本とは?
CASBEE熊本とは、熊本県の建築物における環境性能評価ツールです。CASBEE熊本は、下記の4ツールをもとに作成されています。
- CASBEE-建築(新築)
- CASBEE-建築(改修)
- CASBEE-建築(既存)
- CASBEE-戸建(新築)
CASBEEとは、省エネや環境負荷の少ない資材の使用といった環境配慮に加え、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建築物の品質を総合的に評価するシステムです。
CASBEE熊本では、上記CASBEEでのそれぞれの評価に加え、熊本県の地域特性や政策を考慮した重点評価を設定することで、熊本県独自の評価基準となっています。
CASBEE熊本の評価
CASBEE熊本は、下記の5段階で建築物の環境性能が評価されます。
- Sランク(素晴らしい)
- Aランク(大変良い)
- B+ランク(良い)
- B−ランク(やや劣る)
- Cランク(劣る)
CASBEE熊本の種類(新築、改修、既存、戸建)
CASBEE熊本には、建築行為や建物の種類によって、さまざまな評価ツールが用意されています。
「熊本県建築物環境配慮制度」で定められているCASBEEは、以下の4つの評価ツールです。
建築行為等 | 評価ツール |
新築、増改築の場合 | CASBEE熊本(新築) |
改修の場合 | CASBEE熊本(改修) |
既存建物の場合 | CASBEE熊本(既存) |
戸建住宅の新築、増改築の場合 | CASBEE熊本(戸建) |
CASBEE熊本による環境性能評価の概要
CASBEE熊本による環境性能評価は、建築物の環境効率(BEE:Built Environment Efficiency)の値で評価されます。
BEEとは、Q(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)をそれぞれ項目ごとに評価し、その評価結果をもとに算出される指標です。BEEを算出する際、LはLR(Load Reduction/建築物の環境負荷低減性)として評価されます。
BEEは、評価項目ごとの点数に重み係数を乗じて、Qの総合得点をSQ、LRの総合得点をSLRと表し、以下の式で求めることが可能です。
QとLRの評価は、レベル1〜5の5段階で評価されます。
原則、建築基準法等の最低限の必須要件を満たしているものはレベル1、一般的な水準と判断されるものはレベル3の評価となります。
熊本県の重点評価
CASBEE熊本では、熊本県の地域特性を踏まえ、特に取り組みが推進されている重点項目として以下の4項目が規定されています。
- 温室効果ガス排出量削減の推進
- 安全安心で暮らしやすい社会の実現
- 地域資源の有効活用と保全
- 循環型社会の実現
ただし、CASBEE熊本(戸建)の評価を行う場合、重点項目は評価対象外です。
重点評価は、重点評価スコアシートを用いて、総合評価点を自動的に計算することができます。
総合評価は、重点事項ごとに関連づけられたCASBEEの評価項目の評価点を利用し、独自の重み付けを行うことによって算出されます。
重点評価は、熊本県ストップ温暖化県民総ぐるみ運動推進会議シンボルマーク「✖️(バッテン)温暖化」の数が多いほど良い結果です。
出典:熊本県建築物環境配慮制度運用マニュアル(2017年版)
各重点項目の評価基準について、以下で詳しく解説します。
温室効果ガス排出量削減の推進
「温室効果ガス排出量削減の推進」は、建築物の省エネ性能の向上に係る項目や自然エネルギーの利用に関する項目、材料使用量の削減に係る項目等により評価されます。
具体的な評価基準は、下記の6項目です。
- 建築物の断熱性能の向上
- 建築物の省エネ性能の向上
- 建築設備の省エネ性能の向上
- 太陽光発電設備等の利用促進
- 製造エネルギーの使用量削減
- 交通渋滞抑制への取り組み
安全安心で暮らしやすい社会の実現
「安全安心で暮らしやすい社会の実現」は、建物のバリアフリーやユニバーサルデザイン、耐震性、防犯、緑化等に関する項目により評価されます。
具体的な評価基準は、下記の4項目です。
- ユニバーサルデザイン、バリアフリー
- 建築物の耐震性向上
- 敷地内緑化、建物緑化、風通し等
- 地域との連携、防犯、生物環境の保全
地域資源の有効活用と保全
「地域資源の有効活用と保全」は、地域産材の活用やまちなみ・景観の保全、地下水の保全等に関する項目により評価されます。
具体的な評価基準は、下記の3項目です。
- まちなみ・景観の保全
- 地域産材の活用
- 地下水の保全
循環型社会の実現
「循環型社会の実現」は、部品・部材の耐用年数、対応性・更新性、既存建築躯体等の継続使用、リサイクル材の使用など3R(Reduce, Reuse, Recycle)に関する項目により評価されます。
具体的な評価基準は、下記の3項目です。
- 廃棄物を減らす
- 廃棄物を再利用する
- リサイクル
大変なCASBEE熊本は専門家に無料で相談しよう!
上記の通り、CASBEE熊本の計算や届出対応は非常に煩雑です。
普段届出をしていない人が対応すると評価ミスで手戻りが発生したり、建築着工した後で誤りが発覚すると、施工のやり直しを求められたりする可能性があります。
「環境・省エネルギー計算センター」では、CASBEEの専門家がスピーディーに対応し、設計や工事スケジュールに合わせた対応が可能です。
CASBEE熊本の代行を検討する際は、豊富な実績が強みの「環境・省エネルギー計算センター」の無料相談をぜひご利用ください。
【新築、増改築、改修】CASBEE熊本の届出の流れ
建築物の新築や増改築において、CASBEE熊本の届出が必要になるタイミングは下記の3回です。
- 建築物環境配慮計画書の提出(当初の計画時)
- 建築物環境配慮変更計画書の提出(計画の変更時)
- 建築物工事完了届出書の提出(工事の完了時)
それぞれ提出期限が定められているため、提出期日に遅れることがないよう提出期限を確認しておきましょう。
建築物環境配慮計画書の提出(当初の計画時)
CASBEE熊本の申請を行う場合、対象となる建築物の着工21日前までに「建築物環境配慮計画書」の提出が必要です。
熊本県では、建築物の所在地に応じて異なる届出先が定められているため、提出前に届出先を確認しておきましょう。
届出対象となる建築物は「特定建築物」、特定建築物を新築・増改築する建築主は「特定建築主」と表現します。
「建築物環境配慮計画書」は、”正”と”副”の計2通を熊本県に提出する必要があります。
提出後、熊本県より届出内容の確認と概要の公表がされ次第、特定建築主に副本は返却されます。
建築物環境配慮変更計画書の提出(計画の変更時)
「建築物環境配慮計画書」に記載された建築計画の変更や取り下げを行う場合は、変更工事着手の15日前までに「建築物環境配慮変更計画書」の提出が必要です。
「建築物環境配慮変更計画書」も、「建築物環境配慮計画書」と同様に”正”と”副”の計2通を提出する必要があります。
工事完了届出書の提出(工事の完了時)
特定建築物の工事完了後15日以内に「建築物工事完了届出書」を提出する必要があります。
「建築物工事完了届出書」は、”正”のみを提出します。
熊本県によって届出内容の確認と概要の公表がされ次第、CASBEE熊本の申請手続きは完了です。
【既存建築物】CASBEE熊本の届出の流れ
既存建築物のCASBEE熊本の届出を行う場合は、「建築物環境性能届出書」の提出が必要です。
「建築物環境性能届出書」は、”正”と”副”の計2通を提出します。
届出は随時提出可能で、既存建築物の所有者あるいは管理者が任意で行政に届け出ることができます。
くまもと環境配慮建築物マーク表示制度について
熊本県では、建築物の環境性能向上のために積極的な取り組みを行う建築主や設計者等が、建築物の環境性能をPRすることができる「くまもと環境配慮建築物マーク表示制度」が設けられています。
マークを表示する際に留意するべき点や、表示内容は以下の通りです。
表示前に申請が必要
くまもと環境配慮建築物マークを表示するためには、事前の申請が必要です。
建築主や設計者等は申請書に必要事項を記入し、定められた提出先に申請書を提出します。
提出後に要件審査が行われ、建築物が要件を満たす場合は、広告等でマークを表示することが可能なものとして県に登録されます。
表示内容・ラベル
くまもと環境配慮建築物マークでは、CASBEE熊本の評価にもとづき「CASBEE総合評価」と「CO2削減性能」を星の数、「熊本県重点評価」を✖️(バッテン)温暖化の数で表示し、建築物の環境性能を外部にPRすることが可能です。
ただし、CASBEE熊本(戸建)は「熊本県重点評価制度」の対象外となっているため、2項目のみの表示となります。
CASBEE評価結果と、熊本県重点評価結果
原則、表示ラベルには「熊本県表示ラベル作成支援ツール」で作成したものを使用します。縮尺の変更は任意ですが、色・デザイン・縦横比率の変更は認められていません。
表示ラベルでは、前述の3項目が5段階評価で表される仕組みとなっています。
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CASBEE熊本の届出には多数の書類やデータを付け添える必要があり、専門知識も必要です。
また、届出には期限が設けられているため、万が一トラブルや不備が発見されて期限内に届出ができないとなれば、義務違反として罰せられる可能性もあります。
スムーズな届出を行いたい場合、CASBEE熊本についてプロに相談するのが好ましいでしょう。
多くのCASBEE申請代行業務の実績を誇る当社「環境・省エネルギー計算センター」では、当該業務をアウトソースしやすいように、安心価格、迅速な対応、要望に答える柔軟なサービスラインナップを揃えています。
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