近年、事務所や工場などだけでなく、戸建て住宅においても環境負荷を低減するための取り組みが求められています。
環境への配慮が求められる中で、「CASBEE戸建(新築)」を取得することで戸建て住宅の環境性能が良好であることを証明できます。
しかし、CASBEE戸建(新築)の評価項目や評価方法は複雑です。
この記事ではCASBEE戸建(新築)について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
CASBEE戸建(新築)とは?
CASBEE戸建(新築)は、設計内容をもとに戸建て住宅の環境性能を包括的に評価するツールです。
1年間に建築される戸建て住宅は、およそ40万戸にのぼります。
これらの戸建て住宅が、長期利用やより良い住環境の提供、省エネルギー・省資源に配慮して建築されることによって、住生活の質を向上させるだけでなく、環境への影響を減らすことにもつながります。
CASBEE戸建(新築)の普及目的は、環境に配慮した優良住宅を増やすことです。
CASBEE戸建(新築)の評価対象
CASBEE戸建(新築)で評価対象となるのは、「一戸建専用住宅」および「二世帯住宅」です。
CASBEE戸建(新築)は、戸建て住宅の環境に関する性能を総合的に評価する評価方法です。
評価対象には建物そのものだけでなく、外構や建物供給側から居住者に向けた情報提供、居住者の持ち込み機器、部材製造段階や施行現場における取り組みなども含みます。
評価対象の中には、建物供給側が直接的に関与することが難しいものも含まれていますが、環境に影響すると考えられるものは原則として全て評価することになっています。
CASBEE戸建(新築)の評価項目
CASBEE戸建(新築)では、「戸建て住宅自体の環境品質(Q)」と「戸建て住宅が外部に与える環境負荷(L)」の2つに分けて評価します。
QとLの評価分野は以下に示すようにそれぞれ3つに分類されており、さらにその中で具体的な取り組みを評価する仕組みとなっています。
環境品質・性能(QH)が高いことを評価する
- QH1:室内環境を快適・健康・安心にする
- QH2:長く使い続ける
- QH3:まちなみ・生態系を豊かにする
環境負荷(LR)を減らす取り組みを(LRH)で評価する
- LRH1:エネルギーと水を大切に使う
- LRH2:資源を大切に使いゴミを減らす
- LRH3:地球・地域・周辺環境に配慮する
CASBEE戸建(新築)の評価項目は、上記の6分野を含む46項目で構成されています。
CASBEE戸建(新築)の評価ランク
それぞれの評価項目は5点満点で採点され、戸建て住宅の環境効率(BEEH)は以下の式で算出されます。
環境効率(BEEH)=環境品質(QH)/環境負荷(LR)
算出した環境効率(BEEH)にもとづき、以下のように総合的な格付(赤星によるランク表示)を行います。
ランク | 評価 | BEEH値 | ランク表示(赤星) |
S | Excellent 素晴らしい | BEEH=3.0以上 | ★★★★★ |
A | Very Good 大変良い | BEEH=1.5以上~3.0未満 | ★★★★ |
B+ | Good 良い | BEEH=1.0以上~1.5未満 | ★★★ |
B− | Fairy Poor やや劣る | BEEH=0.5以上~1.0未満 | ★★ |
C | Poor 劣る | BEEH=0.5未満 | ★ |
環境効率(BEEH)にもとづく格付とともに、ライフサイクルCO2の評価結果にもとづく格付(緑星によるランク表示)も行います。
ライフサイクルCO2とは、建物のライフサイクル(資源調達から施行、運営、解体まで)の中で排出されるCO2量の合計数値のことです。
なお、それぞれの格付はMicrosoft Excelを使用して専用ソフトウェアで行うことができます。
以下が専用ソフトウェアを使用した評価結果の表示画面例です。
出典:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター(IBEC)
CASBEE戸建(新築)の評価ソフト・評価マニュアルはこちらから
CASBEE戸建(新築)の評価ソフトや評価マニュアルは、以下からダウンロードおよび購入できます。
評価ソフト | https://www.jsbc.or.jp/research-study/casbee/tools/cas_home.html |
評価マニュアル | https://www.ibec.or.jp/tosyo/index.html |
CASBEE戸建(新築)の活用方法
CASBEE戸建(新築)は、以下のようなシーンで活用されることが想定されています。
- 新築の戸建て住宅における環境配慮設計ツール
- 施主・設計者・施工者間のコミュニケーションツール
- 環境性能をラベリングするツール
- 住宅政策における指針
- 民間の金融機関などにおける活用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.新築の戸建て住宅における環境配慮設計ツール
設計者がCASBEE戸建(新築)を使用して設計中の住宅の環境性能を総合的に評価することによって、環境性能の目標設定や達成度をチェックできます。
チェックすることによって、新築の戸建て住宅において適切な環境配慮設計をすることが可能となります。
2.施主・設計者・施工者間のコミュニケーションツール
施主と設計者、施工者は、住宅の環境性能を高める手法・設計について、CASBEE戸建(新築)を使って検討を進めることができると考えられています。
CASBEE戸建(新築)では住宅の仕様を評価するだけでなく、入居者に対する情報提供や入居者が持ち込む家電機器なども評価項目に含まれています。
そのため、施主と設計者が住宅での暮らし方を想像しつつ、戸建て住宅の適切な環境性能を検討することが可能です。
住宅供給者側においても、設計者が施工者に設計の趣旨などを説明する場面などでCASBEE戸建(新築)を活用できます。
3.環境性能をラベリングするツール
近年、住宅供給者や自治体、NPO団体などによる、優れた環境性能を持つ住宅を販売・普及させようとする動きが強まってきています。
販売・普及の際にCASBEE戸建(新築)を使って格付結果を示すことによって、戸建て住宅の環境性能を消費者に分かりやすく伝えることができます。
4.住宅政策における指針
CASBEE戸建(新築)は、住宅の環境に関する取り組みを幅広く評価しています。
そのため、自治体がその行政エリアにおいて住宅や住宅地の整備を誘導する際に指針として活用することが可能です。
CASBEE戸建(新築)は、性能を総合的に評価するだけでなく地域ごとに特に重要な項目を重点的に評価しています。
たとえば愛知県では、総合的な評価に愛知県独自の基準を加えた「CASBEEあいち[戸建]」が評価基準として適用されます。
5.民間の金融機関などにおける活用
CASBEE戸建(新築)が住宅の環境に関する取り組みを幅広く評価しているため、住宅購入者などが金融機関から融資をしてもらう際にも、ローンの金利を優遇するなどの融資条件として活用することが可能です。
CASBEE戸建(新築)では環境性能を総合的に評価するだけでなく、ライフサイクルCO2についても評価・表示をしています。
そのため、金融機関において地球温暖化防止性能に着目して活用することも可能です。
CASBEE戸建(新築)の評価手順
CASBEE戸建(新築)は自己評価となっており、基本的には誰でも評価することができます。
しかし、住宅購入者などに評価結果を提示する場合は、評価結果の信頼性が重要です。
信頼性を高めるための支援制度として挙げられるのが、「CASBEE評価認証制度」と「CASBEE戸建評価員登録制度」です。
評価結果の信頼性が重要になる場面では、この2つのいずれかを使うことが望ましいとされています。
以下で、2つの制度について詳しく見ていきましょう。
CASBEE評価認証制度
CASBEE評価認証制度とは、第三者機関が評価内容を審査しその評価内容が的確であることを認証する制度です。
CASBEEの評価認証制度は、評価ツールごとに以下の5つに分類されます。
- CASBEE建築評価認証
- CASBEE戸建評価認証
- CASBEE不動産評価認証
- CASBEEウェルネスオフィス評価認証
- CASBEE街区評価認証
5つの認証制度の中で、CASBEE戸建(新築)に対応している制度が「CASBEE戸建評価認証」です。
CASBEE戸建評価認証を取得するためには、建築主・設計者・施工者・販売者などの物件の建築に責任を持つ主体が申請をする必要があります。
申請先は、IBECが認定した認証機関です。
申請書類の作成方法などについては、各認証機関に問い合わせる必要があります。
CASBEE戸建評価員登録制度
CASBEE戸建評価員とは、CASBEEのツールの中でも「CASBEE戸建(新築)」「CASBEE住戸ユニット(新築)」の各ツールを使って正しい評価ができる者として、IBECに登録された資格者のことです。
CASBEE戸建評価員には、現在4000人以上が登録されています。
資格を得るためには、「CASBEE戸建評価員講習」を受講し「CASBEE戸建評価員試験」に合格する必要があります。
また、CASBEE戸建評価員の資格は5年ごとの更新制です。
資格を継続的に保持するためには、有効期限内の受付期間中に登録更新を行う必要があります。
CASBEE戸建(新築)の取得を検討しているなら「環境・省エネルギー計算センター」に無料で相談しよう!
CASBEE戸建(新築)は原則として自己評価ができますが、自己評価をする場合は評価ソフトの使い方や評価マニュアルを理解する必要があるなど、専門知識が必須になります。
また、評価結果の信頼性の高さを証明するためには、「第三者機関に評価内容の審査を依頼する」「CASBEE戸建評価員資格を取得したうえで評価する」といった手段を取る必要があり、多くの時間を要します。
当社「環境・省エネルギー計算センター」では、CASBEE戸建(新築)の代行業務を行っております。
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