CASBEE川崎(川崎市建築物環境配慮制度)とは、神奈川県川崎市の環境性能を評価するシステムです。
近年、世界的に省エネへの取り組みが推進される中で、日本国内でも環境に配慮した建築物が増加しています。
そのような中で、建築物の環境への配慮を総合的に評価するために全国的に用いられている評価方法が、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)です。
一部の地方自治体では、自治体の地域性や条例等を考慮した独自のCASBEE評価を設けています。
本記事では、川崎市で用いられているCASBEE川崎の評価基準やメリットを詳しく解説します。CASBEE川崎の申請を検討している方や高い評価を獲得したい方は、ぜひ参考にしてください。
CASBEE川崎(川崎市建築物環境配慮制度)とは
CASBEEとは、「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency(建築環境総合性能評価システム)」の頭文字をとった言葉で、全国の建築物の環境性能を客観的に評価するために国土交通省支援のもと開発されたシステムです。
近年、CASBEEの評価基準をもとに、各自治体の特性や条例等を考慮した地域独自の評価システムが開発されています。
川崎市では、環境に配慮した建築物の普及を促すために、平成18年10月にCASBEE川崎(川崎市建築物環境制度)を開発し、運用を開始しました。
CASBEE川崎は、省エネや環境負荷低減への取り組みなどを総合的に評価するシステムであるCASBEEの基準に、川崎市の地域特性などを踏まえた独自の評価基準を追加した建築物の環境性能評価システムです。
CASBEE川崎を用いて評価をすることによって、より地域に適した建築物の評価が可能となります。
なお、CASBEEについては、下記の記事で分かりやすく解説しています。理解を深めたい人はぜひ参考にしてください。
参考:CASBEEとは?主な評価ツールの種類や仕組みなどを、わかりやすく解説!
CASBEE川崎の特徴
CASBEE川崎には、全国版のCASBEEをもとに地域特性などを考慮した「環境配慮重点項目」と「川崎市独自の評価基準」が独自の評価基準として追加されています。
川崎市の定める環境配慮重点項目は、以下の4点です。
【川崎市環境配慮重点項目】
- 緑の保全・回復
- 地球温暖化防止対策の推進
- 資源の有効活用による循環型地域社会の形成
- ヒートアイランド現象の緩和
また、川崎市独自の評価基準として、バリアフリー計画への条例の反映や緑の量の増加等を行っています。
CASBEE川崎では、全国版CASBEEと比較して、川崎市の地域特性や条例等を踏まえた地域独自の評価を行うことが可能です。
CASBEE川崎の届出手続き
CASBEE川崎の届出手続きは、以下の流れで行われます。
- CASBEE川崎を用いて建築物の評価を行う
- 建築物環境計画書を作成し、提出する
- 川崎市によって書類チェックが行われる
- 評価ランクが決定し、計画書の一部が公表される
詳しく説明します。
①CASBEE川崎を用いて建築物の評価を行う
はじめに、CASBEE川崎の評価基準を用いて、建築物の環境性能を建築主自身で評価します。
②建築物環境計画書を作成し、提出する
①で確認した環境性能の評価結果をもとに建築物環境計画書を作成し、建築確認申請(または計画通知)の21日前までに関連書類とともに県へ提出します。
③川崎市によって書類チェックが行われる
書類提出後は、川崎市によって建築物環境計画書や届出内容のチェックが行われます。
内容チェック後、市が必要に応じて指導・助言・勧告を行います。
④評価ランクが決定し、計画書の一部が公表される
市によるCASBEE川崎のチェックを通過すると建築物の評価ランクが決定し、作成した建築物配慮計画書の一部が公表されます。
CASBEE川崎の対象建築物
CASBEE川崎の届出対象となる建築物は、川崎市内の建築物です。
「特定建築物」と「特定外建築物」の2つがあり、特定建築物とは、床面積の合計が2000㎡以上の建築物のことです。
特定建築物の新築・増改築を行う際には、CASBEE川崎の届出が義務付けられています。
一方、特定外建築物とは、床面積の合計が2000㎡未満の建築物のことです。
特定外建築物の新築・増改築を行う際は、CASBEE川崎の届出は任意提出となっています。
ただし、一戸建ての住宅・長屋は、いずれもCASBEE川崎の評価対象外です。
【CASBEE川崎対象建築物】
建築場所 | 床面積 | 届出 | 工事種別 |
川崎市内 | 【特定建築物】 2000㎡以上 | 義務 | 新築・増築・改築 |
【特定外建築物】 2000㎡未満 | 任意 | 新築・増築・改築 |
なお、川崎市外の市区町村については、下記の通りで分けられます。
行政のホームページ | 解説記事 | |
横浜市 | 横浜市建築物環境配慮制度(CASBEE横浜) | 【期日要注意】CASBEE横浜について徹底解説!CASBEEとの違いとは |
川崎市・横浜市を除く神奈川県内の市町村 | 建築物温暖化対策計画書制度(CASBEEかながわ) | CASBEEかながわとは|神奈川県でCASBEEを取得する方法を徹底解説 |
CASBEE川崎の評価ソフト・マニュアル
CASBEE川崎の評価ソフト・マニュアルは「評価ソフト・マニュアル(CASBEE川崎)」にて確認することができます。
なお、令和5年(2023年)4月より、CASBEE川崎のマニュアルが改訂されているので注意してください。
CASBEE川崎の手続きは専門家に無料相談しよう!
初めてCASBEE川崎の手続きをする場合は、専門家に相談することがおすすめです。
申請の手順や自身での評価方法、申請に必要な書類の送付などのサポートが受けられます。
また、専門家に確認することで申請する建築物のおおよその評価や受けられるメリットも事前に把握できるためお得です。
お問い合わせ、お見積もりは無料で対応しているため、CASBEE川崎について詳しく知りたい方は、「環境・省エネルギー計算センター」へご相談ください。
CASBEE川崎の評価基準
CASBEE川崎では、建築物の「環境品質(Q:Quality)」と「環境負荷(L:Load)」をそれぞれの環境配慮項目ごとに算出し、評価しています。
そして、前述のQとLを用いて「環境性能効率(BEE:Built Environment Efficiency)」を算出し、算出したBEEの値によって建築物の環境性能がランクづけされます。
【環境性能効率 BEE計算式】
CASBEE川崎では、BEEによる評価を用いて、SランクからCランクの5段階評価が行われています。
建築物のランク | ランクの表示 | 評価 | BEEの数値 |
S | ★★★★★ | 素晴らしい | 3.0以上、かつQ=50以上 |
A | ★★★★ | 大変良い | 1.5以上3.0未満 |
B + | ★★★ | 良い | 1.0以上1.5未満 |
B – | ★★ | やや劣る | 0.5以上1.0未満 |
C | ★ | 劣る | 0.5未満 |
ランクに応じて表示される星の数が異なり、Sランクを獲得した建築物は5つの星、Cランクの建築物は1つの星が表示されます。
CASBEE川崎は川崎市のホームページで公表される!
CASBEE川崎は、川崎市の「計画書等の公表(CASBEE川崎)」で公表されます。
届出を行う必要がある人は注意してください。
CASBEE川崎の事例
CASBEE川崎のランク評価事例を以下で紹介します。
川崎生命科学・環境研究センター LiSE(環境総合研究所)【Sランク】
川崎生命科学・環境研究センター LiSE(環境総合研究所)は、多摩川沿いで2012年に竣工された建築物で、Sランクを獲得しています。
川崎生命科学・環境研究センター LiSE(環境総合研究所)がSランクの建築物として評価されたポイントには、以下の2点が挙げられます。
【川崎生命科学・環境研究センター LiSE(環境総合研究所)の評価ポイント】
- 多摩川に面する建物北側に立体のコミュニケーションスペースが設けられており、周囲の景観を生かした開放的な空間で人々の交流が活発化するように配慮されている点
- 上部の暖気を回収する循環空調によって暖気が均一に行き渡り、省エネと快適性を実現している点
Brillia e-SQUARE【Sランク】
Brillia e-SQUAREは、東京建物(株)によって2010年10月に竣工された建築物で、Sランクを獲得しています。
Brillia e-SQUAREがSランクの建築物として評価されたポイントには、以下の2点が挙げられます。
【Brillia e-SQUAREの評価ポイント】
- エコキュートやIHクッキングヒーターなど火を使用しない安心安全なオール電化が採用されている点
- 室内照明やクーラー等の電化製品使用時の概算消費電力・電気料金を自宅のパソコンで確認でき、ランニングコストを削減できる点
宮前区宮崎6丁目計画【Aランク】
宮前区宮崎6丁目計画は、川崎市で2022年3月に竣工された建築計画で、Aランクを獲得しています。
宮前区宮崎6丁目計画がAランクの建築物として評価されたポイントには、以下の2点が挙げられます。
【宮前区宮崎6丁目計画の評価ポイント】
- 次世代省エネ基準を超える断熱性能、通風への配慮、適切なエアコン設置、化学汚染物対策によって快適・健康・安心な室内環境が実現されている点
- 屋根下地材や床地材に再生可能素材やリサイクル材が使用されており、部材生産、施工の各段階での廃棄物削減を推進している点
CASBEE川崎届出のメリット
CASBEE川崎を届出することによって、環境面への配慮に加え、財政的メリットを豊富に得ることができます。
ただし、CASBEE川崎の評価ランクによって、得られるメリットが異なるため注意が必要です。
以下で、CASBEE川崎を届出された建築物が得られるメリットを紹介します。
光熱費の削減
CASBEE川崎は、建築物のエネルギー消費量や断熱性能も評価対象に定めています。
そのため、評価ランクの高い建築物であるほど冷暖房効率に優れており、光熱費が削減できる可能性があります。
CASBEE川崎では建築物の環境性能が総合的に評価されるため、音環境や光環境、換気性能などの住み心地を比較する際に、CASBEE川崎の評価を指標とすることも可能です。
住宅ローンの金利優遇が受けられる
CASBEE川崎の届出を行った建築物は、評価ランクに応じた住宅ローンの金利優遇を受けることができます。
ただし、建築物の評価ランクによって受けられる金利優遇の幅が異なるため、検討する際には対象の金融機関へ直接確認しましょう。
CASBEE川崎の届出による住宅ローンの金利優遇は、以下の金融機関で受けることができます。
- 三井住友信託銀行
- 横浜銀行
- 横浜信用金庫
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