近年、環境に配慮した経済活動が求められる中で、不動産の開発や保有において建築物の環境性能を評価する手法である「CASBEE」(キャスビー)の取り組みが一般的になりつつあります。
しかし、評価手法としてCASBEEの認知度は向上していますが、具体的な評価方法について理解している方はまだまだ少ないのではないでしょうか。
この記事では、CASBEEの評価項目や評価方法について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
CASBEEとは
CASBEEは、建築環境総合性能評価システムの略で、建築物の品質を総合的に評価する手法です。
CASBEEでは、省エネルギーや建築設備の環境負荷といった評価から室内の快適性や景観への配慮なども含めた評価をすることができます。
また、CASBEEの評価ツールには、建築物の新築・改築建築物を対象とする「CASBEE建築」と既存建築物を対象とする「CASBEE不動産」、オフィスビルを対象とする「CASBEEウェルネスオフィス」が存在します。
CASBEEファミリー
CASBEEには、前述の3つの評価ツール以外にも複数の種類が存在しており、CASBEEのツール群は2021年10月時点で下図の構成となっています。
主な評価である「CASBEE建築」と「CASBEE不動産」、「CASBEEウェルネスオフィス」は2021年に改訂が行われ、評価員の資格範囲が明確になりました。
また、自治体版CASBEEは24の自治体で導入されており、地方行政主導の環境に配慮したまちづくりが進められています。
出典:IBECs「CASBEEの最新動向と評価マニュアルの改訂概要」
CASBEE評価マニュアル
CASBEEには、各種評価マニュアルが用意されています。
マニュアルは2021年に改訂されており、「一般社団法人 住宅・建築SDGs推進センター」のホームページから購入できます。最新版は有料ですが、2016年版は無料でPDFダウンロードが可能です。
CASBEE「建築(新築)」
CASBEE「建築(新築)」は、建築物の新築時の設計内容に基づいて評価を行うツールです。CASBEE「建築(新築)」は、戸建住宅を除いて建築物一般に適用することができます。
- CASBEE「建築(新築)」評価マニュアル2016年版(PDFダウンロード)
- CASBEE「建築(新築)」評価マニュアル2021年版(販売ページ)
CASBEE「不動産」
CASBEE「不動産」は、築1年以上の建築物(オフィスビル・店舗・物流施設・集合住宅等)を対象とした評価システムです。
評価・認証がスピーディーに行われるため、不動産運営会社が積極的に取得しています。
- CASBEE「不動産」評価マニュアル2016年版(PDFダウンロード)
- CASBEE「不動産」評価マニュアル2021年版(販売ページ)
CASBEE「ウェルネスオフィス」
CASBEE「ウェルネスオフィス」は、建築物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建築物の仕様や性能、取組みを評価するツールです。
ビルの運営管理や、オフィス専有部におけるテナントの取組みなど、オフィスワーカーの健康への影響が大きいと考えられる内容について評価されています。
- CASBEE「ウェルネスオフィス」評価マニュアル2021年版(販売ページ)
CASBEE建築の評価を行ううえで重要な2つの評価観点
建築物の環境性能の評価を行う際には、以下の2つの観点が重要とされています。
- 建築物の環境品質
- 建築物の環境負荷
建築物は、環境品質を向上させ環境負荷を低減することを目指す必要があります。
以下で、それぞれの評価方法について詳しく解説します。
評価観点①:Q(建築物の環境品質)
Qは「Q1:室内環境」、「Q2:サービス性能」、「Q3:室外環境(敷地内)」の3項目に分けて評価を行います。
さらに、Q1〜Q3は以下に細分化され、それぞれのスコアを計算する必要があります。
- Q1:音環境、温熱環境、光・視環境、空気質環境
- Q2:機能性、耐用性・信頼性、対応性・更新性
- Q3:生物環境の保全と創出、まちなみ・景観への配慮、地域性・アメニティへの配慮
評価観点②:L(建築物の環境負荷)
Lは「L1:エネルギー」、「L2:資源・マテリアル」、「L3:敷地外環境」の3項目で評価を行います。
さらに、L1〜L3は以下に細分化され、それぞれでスコアを計算する必要があります。
- L1:建物外皮の熱負荷制御、自然エネルギー利用、設備システムの高効率化、効率的運用
- L2:水資源保護、非再生性資源の使用量削減、汚染物質含有材料の使用回避
- L3:地球温暖化への配慮、地球環境への配慮、周辺環境への配慮
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前述の通り、CASBEEの評価には多数の書類やデータを完備する必要があり、実際の計算には専門知識が必要です。
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CASBEE「建築(新築)」の評価方法
CASBEE「建築(新築)」は、多岐にわたる項目について評価可能な新築時の環境配慮設計を支援するためのツールです。
しかし、その分評価項目数も多く、評価項目ごとに根拠資料を作成する必要もあります。そのため、申請の手間やコストが大きく、評価・認証には時間がかかります。
以下で、CASBEE「建築(新築)」の具体的な評価項目と計算方法を解説します。
評価項目
CASBEE「建築(新築)」の評価項目は、約110項目と非常に多いのが特徴です。
Q(建築物の環境品質)及びL(建築物の環境負荷)の各評価項目の得点をもとに、BEE(建築物の環境効率)を算出します。
そして、BEEの算出結果をもとに「Sランク(素晴らしい)」、「Aランク(大変良い)」、「B+ランク(良い)」、「B-ランク(やや劣る)」、「Cランク(劣る)」の5段階で評価を行います。
BEEの計算方法
BEE(建築物の環境効率)は、前述のQとLを用いて算出を行います。
BEEを算出する際にLはLR(建築物の環境負荷低減性)として評価します。QはQ1〜Q3、LRはLR1〜LR3の合計6つに分類されます。
評価項目ごとの点数を重み係数で加重し、分野別の総合得点(SQ1〜SQ3、SLR1〜SLR3)と、QとLRの得点(SQ、SLR)をそれぞれ算出します。
BEE値は、Qの得点SQとLRの得点SLRに基づき、以下の計算式で求めます。
BEE={25✖️(SQ-1)}➗{25✖️(5-SLR)}
求められたBEE値により、以下のランクが与えられます。
ランク | 評価 | ランク表示 | BEE値、Q値 |
S | 素晴らしい | ★★★★★ | BEE=3.0以上、かつQ=50以上 |
A | 大変良い | ★★★★ | BEE=1.5以上3.0未満 |
B+ | 良い | ★★★ | BEE=1.0以上1.5未満 |
B- | やや劣る | ★★ | BEE=0.5以上1.0未満 |
C | 劣る | ★ | BEE=0.5未満 |
CASBEE「建築(新築)」評価ソフト
BEEの評価には、一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC)から公開されている評価ソフトを活用します。
QとLRの点数をMicrosoft Excelで開発された評価ソフトにそれぞれ入力することによって、CASBEE「建築(新築)」の評価結果が得られる仕組みです。
- CASBEE「建築(新築)」2021年SDGs対応版の評価ソフト(ダウンロードページ)
CASBEE「不動産」の評価方法
CASBEE「不動産」は、築1年以上の建築物を評価するツールで、主に不動産のブランディングツール及びチェックリストとして位置づけられたものになります。
CASBEE「不動産」では、建築物の維持管理の状態やエネルギー消費実績を評価し、運用段階の環境性能を見える化する仕組みが整えられています。
CASBEE「不動産」にて高い評価を得ることができれば、テナントリーシングに有利に働いたり、金融機関からの評価が高まったりするため、近年、不動産会社等にて導入が加速しています。
評価項目
海外の環境認証制度であるBREEAMやLEED等との読み替えを可能にするために評価項目は厳選され、得点は加算方式による評価を行います。
評価結果は、CASBEE建築(新築)と同様に、点数に応じて★の数で表示します。
評価項目は以下の5つに分類されており、約20項目で点数付けを行います。
- エネルギー/温暖化ガス
- 水
- 資源利用/安全
- 生物多様性/敷地
- 屋内環境
加点方式
上記の5分野、約20項目で与えられた点数の範囲内で配点を行います。
CASBEE「不動産」では、まず必須事項を充足することが求められており、必須事項をクリアするだけでBランクが与えられます。
評価の基準は以下の通りです。
ランク | 評価 | ランク表示 | 総合得点(100点満点) |
S | 素晴らしい | ★★★★★ | 78点以上 |
A | 大変よい | ★★★★ | 66点以上 |
B+ | よい | ★★★ | 60点以上 |
B | 必須項目を満足 | ★★ | 50点以上 |
CASBEE「不動産」評価ソフト
CASBEE「不動産」の評価には、JSBCから公開されている評価ソフトを活用します。
評価項目5分類のうち、「エネルギー/温暖化ガス」の項目の配点が100点中35点(集合住宅は30点)と最も高く、その中でも「エネルギー使用(計算値)(≒省エネ計算の一次エネルギー消費量)」が25点を占めています。
CASBEE「不動産」は、一定のルールに基づき配点を行うため、ある程度簡易に評価できることが特徴です。
- CASBEE「不動産」2021年SDGs対応版の評価ソフト(ダウンロードページ)
CASBEE「ウェルネスオフィス」の評価方法
CASBEE「ウェルネスオフィス」は、建物利用者の健康性、快適性の維持、増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを評価するツールになります。
評価マニュアル及び評価ツールを用いて評価された結果について、第三者が審査し評価結果が的確であることを認証します。CASBEE認証の有効期間は5年間です。
建物用途が事務所の建築物、または複合用途建築物における事務所用途部分が計算対象となっており、認証のタイプは「CASBEEウェルネスオフィス」または「CASBEEスマートウェルネスオフィス」の2パターンから選択することができます。
ただし、「CASBEEスマートウェルネスオフィス」は、既にCASBEE認証を受けた物件(自治体版CASBEEを含む)かつ評価結果がB+以上の建築物に限られます。
評価項目
CASBEE「ウェルネスオフィス」の採点基準は、大項目が「基本性能」「運営管理等」の2項目となっており、「基本性能」は12項目、「運営管理等」は4項目に評価項目が分類されています。
「基本性能」は主に建築物のハード面における評価です。
一方、「運営管理等」は運営などのソフト面での評価となっています。
2項目に分類し評価することによって、ハード面・ソフト面のどちらにおいても、オフィスワーカーの健康性・快適性・利便性・安全性に重きを置いた評価を行うことが可能です。
ランク表示は、CASBEE「新築」と同様に5段階で表示されるのが特徴です。
ランク | 評価 | ランク表示 | 総合得点(100点満点) |
S | 素晴らしい | ★★★★★ | 75点超 |
A | 大変良い | ★★★★ | 65点以上 |
B+ | 良い | ★★★ | 50点以上 |
B- | やや劣る | ★★ | 40点以上 |
C | 劣る | ★ | 40点未満 |
入居テナントの取り組みも評価対象
CASBEE「ウェルネスオフィス」の最大の特徴は、働く人により近い場所にある専有部の内装や什器計画、入居しているテナントの取り組みも評価対象に含むことです。
ビルオーナーとテナントが協力することにより、テナント企業の働き方改革や知的生産性向上を図ることができ、テナントのブランディングにもつながります。
また、特に「プログラム」の評価では、社員の健康推進プログラムなどのソフト面での取り組みが大きく評価されており、より快適な執務空間を追求する姿勢が求められています。
CASBEE「ウェルネスオフィス」評価ソフト
CASBEE「ウェルネスオフィス」の評価にも、JSBCから公開されている評価ソフトを活用することができます。
- CASBEE「ウェルネスオフィス」2021年版の評価ソフト(ダウンロードページ)
CASBEEを取得する理由
企業経営において、脱炭素対策や働き方改革は必要不可欠であり、重要な課題であるといえます。
不動産と人材は、企業活動に欠かせない資産です。今後も企業活動に必要な不動産と人材を確保するためには、まずは現状を把握したうえで、改善を継続することが重要になります。
CASBEEを取得するメリットは、建築物の新築・保有・管理運営において、環境性能を客観的に見える化できることです。
そして、CASBEEの評価を受けることによって、数多くの社会的便益に貢献していることの証にもなります。
CASBEEを取得し、環境性能などをアピールすることによって、環境に配慮した不動産の保有だけでなく、人材の確保にもつながるでしょう。
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