昨今、世界でも個人単位でも環境に対する意識が高まってきました。
建築物においても、環境に配慮した設計や取り組みが増えています。中でもこれから建てられる新築の建築物においては、環境への配慮がされた「BELS(ベルス)」という評価指標が注目されています。
省エネ性能表示(BELSやZEH・ZEB等)の取得による保有建物の環境性能に対する外部アピールを行う企業が増えており、これから建てられる建築物においては、環境への配慮が義務化されてきていると言えるでしょう。
この記事では、基本的なBELSの仕組みや、新築時にBELSを取得するメリットや費用についてまとめています。新築でBELSの取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
BELS(ベルス)とは?
BELSとは、建築物エネルギー性能表示制度の略称で、省エネルギー性能の評価・表示制度です。これまでは非住宅のみを対象としていましたが、2016年の法改正により住宅用途の建物も評価対象に加わりました。
BELSでは、建築物の一次エネルギー消費量(冷暖房、換気、給湯、照明などで消費するエネルギーの合計)に基づき、第三者評価機関が5段階で評価することで、省エネルギー性能を表示します。そのため、BELSを取得している住宅は「環境面に配慮されている住宅である」ことが証明されていることになります。
BELS評価による住宅・建築物の省エネルギー性能の「見える化」を通じて、市場で適切に評価されるような環境整備が期待されています。
参考:BELSの種類や計算方法、取得するメリットから費用まで、専門家が徹底解説
新築建築物でBELSを取得する理由
近年、大手不動産会社を中心にBELSを取得する取り組み件数が増加していますが、ただでさえ時間がタイトな建築設計の段階でなぜBELSを取得するのでしょうか。
新築の段階では最新の設備が導入されているにもかかわらず、わざわざコストをかけてまでBELSを取得するメリットがどこにあるのか、いまひとつ腑に落ちない方も多いでしょう。
この章では、新築建物であるからこそBELSを取得することが経済的合理性の高い行為であることをわかりやすく解説していきます。
不動産マーケットでの評価が上がる
BELSを取得することの最大のメリットは、「第三者が省エネ性能を証明している優良物件としてテナントの評価を得られること」です。それによって、リーシングや賃料増額の交渉に有利に働きます。
また、不動産を担保に資金調達する際や売却時においても、BELSで多くの星を獲得している建物は評価が高まるため、環境性能のアピールを適切に行うことで数億円単位のメリットを生み出すことも可能です。
分譲住宅であれば、入居後の快適性を強くアピールできるため、他社の分譲案件とは大きく差別化したセールス活動に繋がります。数十万円のBELS評価コストを支払うだけでこれだけの経済効果があるので、効率的な投資と言えます。
新築の場合は、事前に設計を改善できる
新築の場合は、設計時点でBELS取得を見据えた省エネ計算が可能なため、設計段階で外皮性能や空調設備などの仕様を見直すことができます。設計段階で省エネ計算を行い、数値が低ければ仕様の調整を行うことができるため、既存の建築物よりBELS取得の難易度が下がると言えるでしょう。
既に竣工した建築物では考えられない、大胆な改善ができるのは新築ならではと言えます。
省エネ適合性判定と併せてBELS評価書を取得できる
省エネ適合性判定を要する非住宅の建築物については、省エネ適合性判定の際に使用した計画書と適合判定通知書を用いて、BELS評価書を取得することが可能です。
省エネ適合性届出義務のある300㎡以上の非住宅の新築は、BELSも併せて取得するのが効率的と言えます。
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BELS新築の対象建築物
BELSの対象建築物は、新築・既存建物全てが対象となりますが、建築物のうち一部分だけでもBELS申請が可能です。
大規模建築物になるほど地権者の数は増える傾向にあるので、環境意識の異なる所有者間での争いが起きないように、BELS制度に柔軟性を持たせています。
建物種類 | 住宅 | 非住宅 |
建物全体 | 住棟 | 建物 |
建物一部分 | 住戸 | 1フロアごと ※ |
テナント区画 ※ | ||
建物用途 |
ただし、後述する非住宅でのZEBの評価対象には、「1フロアごと」や「テナント区画」(上図※)などは除外されるので注意が必要です。
BELSの評価基準
BELSは、国が定める建築物エネルギー消費性能基準に基づく一次エネルギー消費量から算出されるBEI(一次エネルギー消費量基準)の値によって評価されます。
評価対象となる設計段階中の建物において、地域区分や床面積などの共有条件のもと、実際の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量が、標準仕様(平成28年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー消費量と比べ、以下の計算式にてBEIを算出します。
[BEI=設計一次エネルギー消費量➗基準一次エネルギー消費量]
このBEIが1.0以下であれば設計建築物が省エネ基準に適合していることになり、数値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。
BELSの評価ランク
BELSの評価は、以下表の通り対象建築物が標準仕様の建築物のエネルギー消費量からどのくらい削減できたのかにより、☆の数にて評価されます。
評価 |
基準値からの削減率 | ||
住宅 | 非住宅1 ※1 | 非住宅 ※2 | |
☆☆☆☆☆(キラ星) | 20%以上+α (BEI<0.8) |
40%以上+α (BEI<0.6) |
30%以上+α (BEI<0.7) |
☆☆☆☆☆ | 20%以上 (BEI:0.8) |
40%以上 (BEI:0.6) |
30%以上 (BEI:0.7) |
☆☆☆☆ | 15%以上20%未満 (BEI:0.85) |
30%以上40%未満 (BEI:0.7) |
25%以上30%未満 (BEI:0.75) |
☆☆☆ | 10%以上15%未満 (BEI:0.9) |
20%以上30%未満 (BEI:0.8) |
20%以上25%未満 (BEI:0.8) |
☆☆(国が定める基準) | 0%以上10%未満 (BEI=1.0) |
0%以上20%未満 (BEI:1.0) |
0%以上20%未満 (BEI:1.0) |
☆(既存建築物の基準) | 10%増加 (BEI:1.1) |
10%増加 (BEI:1.1) |
10%増加 (BEI:1.1) |
※1 事務所・学校・工場等
※2 ホテル・病院・百貨店・飲食店・集会所等
なお、省エネ基準の10%オーバー(1.1)までは星がつく仕様になっています。
ZEHやZEBの表示について
ZEH/ZEBは、それぞれ住宅/非住宅におけるBELSの上位互換にあたる評価基準を指します。
ZEHやZEBを取得することで、BELS評価書の星がキラ星5つ表示となり、評価書の下部に「ZEB」や「ZEH」といった認定マークが記載されます。
ZEH(ゼッチ)は住宅に付与される認定で、消費するエネルギーを全て太陽光発電等の再生可能エネルギーで賄い、エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目標にした指標です。
また、ZEB(ゼブ)は非住宅に付与される認定で、消費するエネルギーを全て太陽光発電で賄い、エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目標にした指標を指します。
ZEB・ZEHともに、BELSにて5つ星を取得した上で、省エネにて低減した電力使用量などを自ら太陽光発電等で創り出す、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせた概念です。
これら認定マークを取得し、BELS評価を最高ランクまで引き上げることにより、不動産マーケットでの更なる評価向上を図ることができます。
BELS申請から評価書交付までの流れ
BELS評価書取得までの基本的な流れは下図の通りです。
出典:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「建築物エネルギー性能表示制度について」
初めにBELS申請に必要な書類を準備の上、BELS評価機関に審査を依頼します。なお、BELS評価機関は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページで検索可能です。
申請後、専門の評価員による審査を経てBELS評価書及び認定マークを受け取ることができます。
また、他の制度で省エネ性能の評価を受けている場合は、重複する書類の提出や審査を省略できるので、BELS評価機関にお問合せください。
BELSを申請するタイミング
BELSの評価は、建築物の着工前・着工後・竣工後のいずれのタイミングでも申請可能です。
新築の場合は、設計が完了し設置する設備が決まっていれば、BELS申請ができます。
省エネ計画書・省エネ適合性判定通知書の写しによるBELS評価の申請は、計画が確定した際に行うことが効果的です。
評価は基本的には提出図書上の内容をもとに実施されるため、実際にBELS検査員が現地をチェックすることは原則ありません。
BELS申請に必要な書類
BELS申請の主な書類は、以下の通りです。
書類名・部数 | 内容 |
BELSに係る評価申請書 正副 | BELS申請の頭紙になる書面 |
設計内容(現況)説明書 2部 | 省エネ性能に関する設計の概要を示したもの |
申請添付図書 2部 | 配置図・仕様書・平面図・求積図・設備仕様書等 |
一次エネルギー消費量及び外皮計算書 2部 | 消費エネルギー量と外皮などの性能を示す計算書 |
BELSに係る評価物件掲載承諾書 | ホームページに掲載することに関する承諾書 |
これら書類は、各BELS評価機関のホームページでダウンロード可能です。
BELS評価書
評価を受けると、省エネ性能が記載されたBELS評価書と表示マークが交付されます。表示マークは通常盤と、広告などに表示する用の簡易版があります。
また、別料金を支払うことで建物に表示するための金属製のプレートも作成可能です。
オフィスや共同住宅のエントランスホールに設置するなどして、来客者に対象建物の省エネ性能をアピールすることができます。
BELS評価書は2ページあり、1ページ目には「申請者名」「建築物の概要」「評価結果(一次エネルギー消費量基準)」「評価結果(外皮性能基準)」「ZEB/ZEHの取得有無」「評価機関名」が記載されます。
2ページ目に記載される内容は、設備毎の単位面積あたりのエネルギー消費量などより詳しい内容や参考情報です。
新築建築物のBELS取得費用水準
BELSの取得には、審査費用と省エネ計算代行費用の2種類の費用が必要です。
評価費用はBELS評価機関に支払う報酬で、代行費用は省エネ計算代行会社に支払う報酬です。
BELS評価は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会の登録機関である民間会社が実施します。一戸建て住宅であれば数万円から、集合住宅であれば十数万円から数十万円の費用です。
また、非住宅の場合は、「モデル建築法」か「標準入力法」のどちらの計算手法を採用するかで金額が大きく異なりますが、数万円から数十万円となります。
BELSの申請は事業主が行いますが、省エネ計算や書類整備など非常に煩雑な業務となるので、申請代行会社に委託するのが一般的です。
こちらの費用の目安は十数万円から数十万円程度で、用途・規模によって異なります。
上記、評価費用と申請代行費用を合わせると、数十万円から百数十万円程度のコストとなります。
ただし、BELSを取得することで、賃貸物件であればリーシングに有利に働いたり、投資家や金融機関への評価が高まったりすることを考えると、単なるコストではなく「投資」として捉えることができるのではないでしょうか。
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上記の通り、新築建物は設計段階から省エネ計算を実施し、適宜設計変更を加えながら多くの星を獲得するなど、不動産の付加価値向上に向けて戦略的にBELSを活用するのがおすすめです。
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