近年、BELS認定を取得した住宅が注目を集めています。
さらに大手住宅メーカーでは、BELS認証の最高ランクを取得した住宅にのみ付与される「ZEH」を獲得した住宅を標準スペックとして販売している企業も増えています。
これらの住宅は環境に配慮した設備が導入されているだけではなく、断熱や空調効率に優れており、日々の光熱費を大幅に削減することができるため、不動産価値の向上に繋げることが可能です。
このようにメリットが多いBELSの住宅ですが、実際に住宅でBELSを取得するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
この記事を読むことで、住宅でBELSを取得することのメリットや、実際にBELSを取得するための方法を知ることができます。住宅でBELS評価の取得を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
住宅のBELS(ベルス)とは?
BELSとは、建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、2014年に国土交通省により制定された、省エネルギー性能に特化した評価・表示制度です。これまで非住宅のみを対象としていましたが、2016年の法改正により住宅用途の建物も評価対象に加わりました。
BELSは住宅の環境性能に応じて5段階で評価され、星の数で表されます。星の数が多いほど「環境性能が高い建築物」であるという証明になります。
住宅でBELSを取得する上で最大の大きなメリットは、不動産市場での物件価値が向上することです。BELSを取得することで、住宅の省エネルギー性能が評価され、不動産としての物件価値が上がります。
それにより、BELS評価が物件売却時の性能証明になるため、高額で見積もりを出してもらうことができます。
また、BELSを取得することでマンションや戸建てでも不動産市場での評価が高まるため、各種取引においても有利に働きます。このように、物件価値向上を狙った住宅メーカーがBELS認定基準を満たした住宅づくりに取り組んでいます。
住宅のBELSで評価される性能とは
BELSでは、「一次エネルギー消費量の基準値に対する削減率」や「基準への適合の可否」に対する評価を行います。
具体的にBELS取得時に評価される観点は、「一次エネルギー消費量基準(BEI値)」と「外皮基準」です。
2017年以前の住宅の評価では、BEI値のみがその対象でした。現在では、BEI値と外皮性能であるUA値(外皮平均熱貫流率)および、ηAC値(冷房機の平均日射熱取得率)の全ての基準を満たす必要があります。
以下で詳しく解説していきます。
一次エネルギー消費量基準について
一次エネルギー消費量とは、冷暖房、換気、給湯、照明などで消費するエネルギーを合計したものです。
評価対象となる建築物において、地域区分や床面積などの共有条件のもと、実際の建築物の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量が、標準仕様(平成28年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー消費量を下回る必要があります。
また、評価対象となる設計段階の建物では、実際の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量と標準仕様(平成28年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー消費量を比較することで、BEIを算出します。以下がBEIの算出方法です。
[BEI=設計一次エネルギー消費量➗基準一次エネルギー消費量]
このBEIが下記の基準を満たしていれば、省エネ基準に適合していることになり、数値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。
- 新築および既存建築物の増改築 BEI≦1.0
- 既存建築物(平成28年4月に現存する建築物)≦1.1
外皮基準について
外皮基準とは、住宅建築物にのみ適用される基準で、住宅の窓や外壁などの断熱性能を示すものです。断熱に関する基準への適合度合いによって評価されます。
住宅の外皮性能は、下記の通りUA(ユーエー)値と、ηAC(イータエーシー)値により構成され、いずれも地域区分別に規定されている基準値以下になることが求められます。
名称 | 略称 | 評価内容 | 計算式 |
外皮平均熱貫流率 | UA値 | 室内から外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値で、値が小さいほど断熱性能が高い | UA=外皮総熱損失量÷外皮総面積 |
冷房期の平均日射熱取得率 | ηAC値 | 太陽日射の室内への入りやすさの指標で、値が小さいほど日射が入りにくく遮蔽性能が高い | ηAC=冷房期の日射熱取得量÷外皮総面積×100 |
BELSの認定書で表示される内容とは
認定書に表示される内容は下記の通りです。
参考:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「BELS 表示例」「ZEH 表示」
項目 | 説明 | |
① | BEIに応じた☆マーク | BEIの値が小さいほど、省エネ性能が高く、☆の数が多い |
② | 基準からの削減率 | 削減率=(1-BEI)✖️100で計算 |
③ | 設計一次エネルギー消費量 | 設計・基準一次エネルギー消費量、家電等は除く |
④ | 建築物エネルギー消費性能基準への適合可否 | 一次エネルギー消費量、外皮性能の「建築物エネルギー消費性能基準」への適合の要否を記載 |
⑤ | UA値またはηAC値 | 外皮基準においては、住宅部分のUA値またはηAC値を記載 |
⑥ | ZEHマーク | ネット・ゼロ・エネルギーハウスの基準を満たした住宅に付与される認定マーク |
認定書には、BELSの評価を表すために「③設計一次エネルギー消費量」「④建築物エネルギー消費性能基準への適合可否」「⑤UA値またはηAC値」などが記されています。
各評価の結果によって、最終的なBELS評価として「①BEIに応じた☆マーク」が表される仕組みです。
☆の数は「②基準からの削減率」に応じて5段階で評価されているので、各段階の基準について以下で解説していきます。
BELSランクの考え方
住宅のBELSの評価は、以下表の通りBEIの値によって、対象建築物の星の数が決定します。
このBEIが1.0以下であれば省エネ基準に適合していることになり、数値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。
なお、既存の建物は☆(星1つ)の場合もありますが、省エネ基準を満たしている新築住宅は☆☆(星2つ)以上の格付けが得られます。
※BELSのご申請で新築の建物は外皮基準(現行基準)+☆☆(星2つ)以上での申請が可能になります。
評価 | 基準値からの削減率 | ||
☆☆☆☆☆(キラ星) | 20%以上(BEI≦0.8)+α | ||
☆☆☆☆☆ | 20%以上(BEI≦0.8) | ||
☆☆☆☆ | 15%以上20%未満 (0.8<BEI≦0.85) | ||
☆☆☆ | 10%以上15%未満 (0.85<BEI≦0.9) | ||
☆☆(国が定める基準) | 0%以上10%未満 (0.9<BEI≦1.0) | ||
☆(既存建築物の基準) | 10%増加 (1.0<BEI≦1.1) |
なお、省エネ基準の10%オーバー(1.1)までは星がつく仕様になっています。
ZEH(ゼッチ)とは?
ZEHを取得すると、BELS評価書の星が、キラ星5つ表示となり、評価書の下部に「ZEH」といった認定マークが記載されます。
ZEH(ゼッチ)は住宅に付与される認定で、消費するエネルギーを全て太陽光発電等の再生可能エネルギーで賄い、エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目標にした指標です。
ZEHは、BELSにて5つ星を取得した上で、省エネにて低減した電力使用量などを自ら太陽光発電等で創り出す、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせた概念です。
これら認定マークを取得することで、BELS評価を最高ランクまで引き上げることができ、住宅流通市場での更なる評価向上を図ることができます。
ZEHについて詳細を知りたい方は下記の記事を参考にしてみてください。
参考:ZEH(ゼッチ)とは?取得のメリットやZEHの種類を紹介、補助金制度についても専門家が徹底解説
住宅のBELS申請で分からないことがあれは専門家に無料で相談しよう!
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BELS申請の手続き
BELSの申請は非常に簡単です。申請に必要な書類が複数枚ありますが、どれも各BELS評価機関のホームページからダウンロードできます。
以下で、BELS申請の流れ・必要な書類について解説していくので、実際にBELS評価を検討されている方は参考にしてください。
BELS申請から評価書交付までの流れ
住宅のBELS申請に必要な書類を準備の上、BELS評価機関に審査を依頼します。なお、BELS評価機関へは、一般社団法人住宅性能評価・表示協会のホームページよりアクセス可能です。
申請後、BELS評価機関による審査を経てBELS評価書及び認定マークを受け取ることができます。
また、他の制度で省エネ性能の評価を受けている場合は、重複する書類の提出や審査を省略できるため、BELS評価機関にお問合せください。
BELSを申請するタイミング
住宅のBELS評価は、建築物の着工前・着工後・竣工後のいずれのタイミングでも申請可能です。新築の場合は、設計が完了し設置する設備が決まっていれば、BELS申請ができます。
省エネ計画書・省エネ適合性判定通知書の写しによるBELS評価の申請は、計画が確定した際に行うことが効果的です。
評価は基本的に提出図書上の内容をもとに実施されるため、実際にBELS評価機関が現地をチェックすることはありません。
BELS申請に必要な書類
住宅のBELS申請に関する必要な書類は、以下の通りです。
書類名・部数 | 内容 |
BELSに係る評価申請書 2部 | BELS申請の頭紙になる書面 |
設計内容(現況)説明書 2部 | 省エネ性能に関する設計の概要を示したもの |
BELSに係る評価物件掲載承諾書 2部 | ホームページに掲載することに関する承諾書 |
申請添付図書 2部 | 配置図・仕様書・平面図・求積図・設備仕様書等 |
一次エネルギー消費量及び外皮計算書 2部 | 消費エネルギー量と外皮などの性能を示す計算書 |
BELSアイテム制作依頼書 2部 | 金属パネル等の作成依頼 |
その他審査に当たって必要な書類 | その他書類 |
これら書類は、各BELS評価機関のホームページでダウンロード可能です。
新築住宅でZEHの取得が一般的になっている
先述したように、ZEHとは、BELSにて5つ星を取得した上で、省エネにて低減した電力使用量などを自ら太陽光発電等で創り出す、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせた概念です。
2021年6月7日付けの住宅産業新聞社の記事では、主要住宅企業14社のうち上位2社が2020年度ZEH普及率において、90%を超えたことを示しています。
中には、ZEH取得件数が累計6万棟を超えた大手ハウスメーカーも存在しており、ZEH普及率は年々増加傾向にあります。
このようにZEH取得が一般化される社会において、自社が後れを取らないためにも、早いうちからZEH取得に向けて動き始めましょう。
ZEHの種類
ZEHには取得難易度に合わせて、複数の種類が存在します。
ZEHは一戸建ての場合、削減できるエネルギー量などによって3種類に分けられます。
- ZEH
- Nearly ZEH
- ZEH Oriented
ZEHは、再エネを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量を削減できる住宅を指します。3つの種類の中で最も難易度が高いです。
一方、Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)は、再エネを加えて、基準一次エネルギー消費量から75%以上削減できる住宅を指します。両者の一次エネルギー消費量削減率は以下の通りです。
- 強化外皮基準+再生可能エネルギーを除いた量削減率:ZEH、Nearly ZEH共に20%以上
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量削減率:ZEHは100%以上、Nearly ZEHは75%以上
ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド)は、再エネ等を除き、基準一次エネルギー消費量からを20%以上削減できる住宅を指します。ZEH Orientedでは再生可能エネルギーの活用は必須ではありません。一次エネルギー消費量削減率は以下の通りです。
- 強化外皮基準+再生可能エネルギーを除いた量削減率:20%以上
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量削減率:導入不要
ZEH-Mについて
集合住宅(マンション)のZEHは、住戸単位で評価する「ZEH」と、住棟全体を対象とする「ZEH-M」が存在します。
ZEH-Mは、下記4つの種類に分けられます。
- ZEH-M
- Nearly ZEH-M
- ZEH-M Ready
- ZEH-M Oriented
ZEH同様、年間の一次エネルギー消費量がプラスマイナスゼロになるのは「ZEH-M」のみです。
「ZEH-M Oriented」の取得には、地域毎に設定された強化外皮基準のクリアと、年間の一次エネルギー消費量を20%以上削減する必要があります。
それ以外のZEH-Mの種類は下記です。
■ 集合住宅全体におけるZEHの定義と目指すべき水準(住棟単位)
■ 集合住宅におけるZEHの定義と目指すべき水準(住戸単位)
ZEHの種類について詳細を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
参考:ZEHの種類|それぞれの特徴と違いについてZEHの専門家が徹底解説【令和4年度版】
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BELS申請は非常に手間がかかる業務で、設計事務所が当該業務を行うと本来集中すべき設計などの業務に支障が出てしまう恐れがあります。
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