結論からお伝えすると、1~5つの星で評価されるBELS(建築物エネルギー性能表示制度)は、将来を見越して5つ星の取得を目指すのがおすすめです。
現在日本政府は、2030年までにBELSの上位互換であるZEB・ZEHを対象とした「新築される住宅・建築物についてはZEB・ZEH基準の省エネ性能確保」を目標として掲げています。
住宅・非住宅においてZEB・ZEHの評価を取得するためには、BELSで5つ星を獲得しておく必要があるのです。
今後のZEB・ZEH化に向けて、今のうちからBELS5つ星を目指す姿勢は重要だと言えます。
しかしながら、実際にBELSで5つ星の獲得を目指すのは簡単ではありません。
BELS評価を計画的に上げていくためにも、BELS評価の仕組みや高評価を獲得している具体的物件事例について知っておく必要があります。
この記事では、BELS制度の概要や、5つ星を目指すべき理由について詳しく解説し、BELSの5つ星およびZEB・ZEHを意識した省エネ建築物を建てる魅力についてお伝えします。
今後のZEB・ZEH化を見据えた物件価値向上を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
BELSとは?
BELSとは、新築および既存建築物の「省エネ性能」を第三者機関が評価して認定するラベリング制度のことです。
ラベリング制度は、世界各国で様々な制度が設けられています。日本国内においては、BELSが有名かつ信頼性の高いラベリング制度となります。
BELSは、建築物省が公開している省エネ法第7条に基づいており、建築物の省エネ性能を5段階の星で評価しています。
以下に示す2つの評価項目から性能を確認することで、星の数が決定されます。
- 外皮性能(建築物の外壁、屋根、窓等がもつ断熱性といった性能)
- 一次エネルギー性能(空調設備や照明設備等が消費するエネルギー)
それでは、なぜ建築物のエネルギー性能を、星を用いることで「見える化」しているのでしょうか。
BELS評価を「見える化」する理由は、評価を受ける人だけでなく、ESG投資家や不動産購入者にとってもメリットがあるからです。
近年、ESG投資家という環境に配慮した企業に対して積極的に投資活動を行う投資家が増えています。そのような投資家が投資対象を決めるにあたって重要なのが、このBELSという指標です。
また、SDGsといった持続可能な開発目標の中でも省エネが謳われており、世界を通して環境問題に対する意識が高まっていると言えます。
BELSの概要について、より詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
参考:BELSの種類や計算方法、取得するメリットから費用まで、専門家が徹底解説
BELSとZEB・ZEHの違い
BELSと似た概念として、よく耳にするのがZEB・ZEH(ゼブ・ゼッチ)です。
ZEB・ZEHは、BELSの上位互換にあたるもので、次のような違いがあります。
- ZEB(Net Zero Energy Building):ビルに対するBELSの上位互換
- ZEH(Net Zero Energy House):住宅に対するBELSの上位互換
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業調査発表会2019」
ZEB・ZEHの評価は、BELSが持つ省エネ基準よりも高度なものであり、年間の一次エネルギー消費量をゼロ以下に抑える必要があります。そのため、ZEB・ZEHを取得するためには、BELSの5つ星評価が必須となります。
政府は、2030年までに「新築される住宅・建築物についてはZEB・ZEH基準の省エネ性能確保」を目指しているため、今のうちからBELSで5つ星を獲得できるよう準備をしておくと良いでしょう。
ZEB・ZEHについては下記記事で詳しく解説しているので、詳しく知りたい方はぜひ確認してください。
ZEB:ZEBとは?取得のメリットや事例紹介、補助金制度についても専門家が徹底解説
ZEH:ZEH(ゼッチ)とは?取得のメリットやZEHの種類を紹介、補助金制度についても専門家が徹底解説
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BELSで5つ星評価を取得するためには、BELSによるラベリング制度の特徴や、多くの企業が目標とする上位互換のZEB・ZEHなど、評価基準や適用条件といった専門的な知識を学ぶ必要があります。
しかし、これらの情報を1つずつ調べるのは時間がかかります。また勉強したからといって、目標とする星の評価を獲得できるとは限りません。
BELSを取得するためには、その制度を幅広く理解した「専門的な知識」が必要なのです。
BELSで高い評価を得たい方は、過去実績が2,600件を越える当社「環境・省エネルギー計算センター」にご相談ください。
BELS取得に特化した専門家が、素早くあなたのお悩みを解決いたします。
BELSのランクについて
BELSは、1~5つ星のランクで評価されます。
星の数は省エネ性能の高さを表しており、以下に示すように分類することが可能です。
星の評価は「評価値」と「用途」で変化し、住宅・非住宅によって評価のも評価の値が異なります。
建築物の「一次エネルギー消費量」と「外皮性能」から算定された値(BEI)が、表内の値を満たしていれば星として評価される仕組みです。
それぞれの星の特徴は次のように分かれており、星の数が多いほどESG投資家や不動産購入者からの評価が高まります。
- 1つ星:既存建築物の省エネ基準(最低値)
- 2つ星:新築建築物の省エネ基準(最低値)
- 3つ星:省エネ性能の向上を誘導すべき基準でありスタンダードな評価値
- 4つ星:BELSの中でも高い評価値であるが、5つ星を目指すのが望ましい
- 5つ星:BELSの最高評価であり、さらに計算値が高ければZEB・ZEHの取得が可能
星の数を増やすためには、外皮性能の向上もしくは一次エネルギー消費量を削減する必要があります。新築の場合は計画時に、既存建築物の場合は改修工事の際に対応する必要があります。
BELSは5つ星を満たすべき?
2022年現在において、BELS取得の条件は、新築建築物の場合は2つ星以上、既存建築物の場合は1つ星以上です。しかし、BELS取得に向けて金額的・時間的に余裕がある方は今のうちから5つ星獲得を目指すことをおすすめします。
その理由は、大手建築会社である住友グループの下記発表が関係しています。
■以下 住友グループの発表
「国が進めるベルスBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高ランクである5つ星に標準で対応しています。当社は戸建注文住宅についてBELSを全棟で申請しています。BELSは新築・既存の建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し認定する制度で、建物の省エネ性能、資産価値を示す指標となります。BELSの全棟申請は大手ハウスメーカーでは初めての取り組みです。」
住友林業株式会社~BELSの最高ランク5つ星に対応 断熱材・構造材・窓でしっかり断熱「360゜TRIPLE(トリプル)断熱」標準採用~より引用
この発表を受けて、多くの企業がBELSの最高ランクである5つ星の取得に乗り出しています。
実際にBELS取得にあたって、新たに建築する場合であれば、初期段階から高評価獲得のBELSを取得した建築物を建てることが可能です。しかし、既存の建築物であれば追加改築などにより費用負担が増えてしまうので、新築を検討している方はぜひBELSを意識して探してみると良いでしょう。
BELSを評価する計算方法
BELSは対象建物の省エネルギー性能を、「一次エネルギー消費量」と「外皮性能」の2つの指標を用いて算出されるBEI(一次エネルギー消費量基準)の値によって評価します。
以下の式を用いてBEIを算出します。
[BEI=設計一次エネルギー消費量➗基準一次エネルギー消費量]
また、非住宅建築物と住宅建築物によって、一次エネルギー消費量と外皮性能の基準値が変わります。
一次エネルギー消費基準 | 外皮基準 | |
非住宅建築物 | BEI≦1.0 | なし |
住宅建築物 | BEI≦1.0 | UA値と、ηAC値が、地域区分別に応じた基準値以下 |
より詳しい計算方法や評価項目について知りたい人は、下記記事を参考にしてください。
参考:BELSの計算方法とは?評価ランクや一次エネルギー消費量(BEI)の算出手法について解説
BELSは、住宅・非住宅で評価する計算方法が異なります。
それぞれ詳しく解説します。
非住宅のBELSの計算方法
非住宅で主に使用するBELSの計算方法は下記2つです。
- モデル建物法:決められたモデルに基づき、調査箇所を絞って評価を行う
- 標準入力法:対象建築物全体を調査して緻密な評価を行う
「モデル建物法」は、時間がかからず低コストで利用できるため、多くの評価調査で利用されている手法です。ただし、緻密な計算を行わないことから、評価値が低く見積もられるといった特徴があります。
一方、「標準入力法」では、対象箇所を1つずつ調査していくため、時間とコストがかかります。モデル建物法で目標の星の数が満足できなかった場合に利用されることが多く、時間が掛かる分、評価値が若干高く出される傾向があります。
BELSの評価値(BEI)の算出を行うという目標は同じですが、その精度に差が出るため、使い分けて利用されます。
BELSの非住宅についての詳細は「非住宅のBELS評価とは?商業施設・オフィス・ホテルの省エネ計算について専門家が解説」で解説しています。
住宅のBELSの計算方法
住宅で主に使用するBELSの計算方法は下記2つです。
- 標準計算ルート
- 簡易計算ルート
標準計算ルートは精緻な値を計算する方法で、外皮性能では部材毎の面積や長さを正確に計測することが可能です。
精緻な値を出せるので、BELSでのより高いスコアを目指すことができます。
対して、簡易計算ルートでは外皮計算の部材毎の数値に固定値を使用するなど、計算を簡略化することができ、業務へかかる時間や工数を削減することができます。
なお、共同住宅の場合「フロア入力法」という計算方法がありますが、BELSでは利用できないため注意してください。
住宅のBELSに関する詳細情報は「住宅のBELS評価とは?省エネ計算やZEHついて専門家が詳しく解説」で解説していますので、合わせて確認してください。
BELS5つ星の最新取得事例を3つ紹介
近年、BELS5つ星の取得を目標に動いている企業が増えています。すでに様々な物件が5つ星を獲得しています。
「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」では、BELSを取得した物件を簡単に確認することが可能です。この記事では、以下に示す取得内容が異なる3つの物件について解説していきます。
- 住宅:BELS5つ星取得
- 非住宅:BELS5つ星取得
- 非住宅:BELS5つ星取得+ZEB取得
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事例① 住宅:BELS5つ星取得
下記は「住宅」を対象としてBELS評価が行われた物件です。
住宅用途の基準である0.8を満足し、5つ星を獲得しています。
事例② 非住宅:BELS5つ星取得
下記は「非住宅(テナント)」を対象としてBELS評価が行われた物件です。
非住宅用途2の基準である0.7を大きく上回り、5つ星を獲得しています。
事例③ 非住宅:BELS5つ星取得+ZEB取得
下記は「非住宅(ビル)」を対象としたBELS評価が行われた物件です。
BELSの評価を大きく上回る0.38という値を出し、5つ星を獲得しています。
また、ZEB・ZEHの中でもZEB Readyの省エネ削減条件である0.50という基準を満たしていることから、5つ星に併せてZEB Readyを取得しています。
BELSの5つ星よりも上位のZEB・ZEHを目指す企業も
SDGsの浸透によって国としても総力を挙げて、BELS化に取り組んでいます。
2030年までに「新築公共建築物の平均ZEB化」という目標が掲げられているため、今では多くの企業が「BELS5つ星取得」と「ZEB・ZEH取得」に向けて省エネ建築物の準備を進めている状況です。
ZEB・ZEHが標準化された場合、ESG投資者や不動産購入者はBELSが取得された物件に対する投資が当たり前になるため、BELS評価を受けた物件に対する投資・購入する理由がなくなってしまいます。
BELS5つ星を目指している方は早めの獲得を目指し、今のうちからZEB・ZEHの評価獲得を視野に入れておくと良いでしょう。
5つ星のBELSを取得するメリット
BELSの5つ星を取得することができれば、対象建築物に様々な価値を付与することができます。
BELSを取得する上で最も大きなメリットは、星の評価を公式でアピールすることで物件価値の向上に繋げることができる点です。5つ星という最高ランクをアピールすることで、ESG投資家や不動産購入者に対して、星というビジュアルで訴求できます。
また、BELSは第三者機関によって評価される信頼度が高い指標であるため、入居者からも信頼を得ることができます。BELSで5つ星を取得しておくことは、入居者の募集という観点でも大きなメリットがあると言えるでしょう。
最後に、BELS5つ星取得に併せてZEB・ZEHの取得を目指す場合、様々な補助金制度を利用できます。関連設備の費用のうち一部を負担してくれるお得な制度も充実しているので、補助金制度を活用して動いてはいかがでしょうか。
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この記事では、BELS(建築物エネルギー性能表示制度)の評価基準と5つ星を取得すべき理由についてお伝えしました。
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