近年、環境や社会への配慮を証明する「BELS」の取得に向けた活動を進めている企業が増えています。
しかし、実際に建築物のBELS評価を行うにあたって、住宅と非住宅ではどのような評価基準の違いがあるのかをご存じない方も多いのではないでしょうか。
非住宅は住宅とは違い、建物自体に多種多様な用途が存在します。身近なものだとオフィスビルや商業施設などがありますが、施設を利用する人数の違いや居室の大きさや使い方などによっても、BELSの評価基準が異なります。
また、大規模な建築物だと、1つの建物に住宅やオフィス、商業施設などが含まれた複合建築物などが存在するため、評価方法が非常に複雑です。
この記事では、非住宅BELSの仕組みを専門家が詳しく解説しているので、非住宅でBELSを取得する方法を理解することができます。ぜひ参考にしてください。
非住宅のBELS(ベルス)の評価対象部分
非住宅のBELSを評価するにあたって、下図の通り様々な観点を踏まえた評価が必要になります。
建物全体での評価はもちろん、フロア毎やテナント区画毎、さらに共有部のみなど、任意の部分だけ評価することも可能です。
大型開発案件の場合、用途として非住宅と住居が混在しており、不動産所有者の権利も区画毎に設定されていることが多いため、所有者の意向に応じて個別でBELS認定ができるよう工夫されています。
評価対象単位 | 評価対象 |
建物 | 非住宅のみの建築物全体 |
フロア | 非住宅の任意の階(建築物全体が1フロアの非住宅用途である場合を除く) |
テナント | 任意の店舗等部分(建築物全体が1つの店舗等である場合を除く) |
部分 | 複合建築物の非住宅部分全体 |
任意の部分(上記評価対象を除く) |
非住宅のBELSの省エネ計算方法は2種類ある
非住宅の省エネ計算方法には、下記3種類の方法が用意されており、各種類に応じて入力する情報の精度が異なります。
- 評価入力法
- モデル建物法
- 小規模版モデル建築法
一般的には「標準入力法」が最も精度が高く、続いて「モデル建物法」「小規模版モデル建築法」の順に精度が低くなります。
また、「小規模版モデル建築法」の適用範囲は床面積300㎡未満の建物となり、BELSの対象から外れます。そのため、非住宅のBELSの省エネ計算は「モデル建物法」か「標準入力法」の2種類のうちいずれかが採用されます。
以下で、「モデル建物法」と「標準入力法」について簡単に解説します。
モデル建物法とは
BELS申請では、費用や審査機関、工事管理の観点において有利な簡易計算手法である「モデル建物法」で評価することが多いです。
モデル建築法とは、国が過去の実績を基にモデル化したデータを活用することで建築物の評価を行う、簡易的な計算方式になります。
あらかじめ定められたモデル建物用途にあてはめ計算を行うため、入力項目が少なく、かつ分かり易い計算方法です。
全ての室で計算を行うのではなく、設備ごとに決められている対象用途の室のみを計算します。例えば事務所ビルであれば「空調は全ての室」「照明は事務室用途のみ」などと定められています。
標準入力法とは
詳細計算である「標準入力法」は手間と費用がかかりますが、原則として全ての設備を評価するため、建物の省エネ性能をより詳細に算出することが可能です。
部屋単位で入力を行うため、複数用途の建築物であっても詳細に省エネ性能を評価することができます。
一般的には、モデル建物法よりも標準入力法の数値が1割から2割程度下がる傾向があり、BELSで多くの星を獲得したい場合などに有効です。
その反面、部屋数が多い建築物では入力が煩雑になるため、時間とコストがかかります。
非住宅部分の省エネ性能の計算
省エネ性能の計算とは、建築物のエネルギー性能を示すために行うものです。
BELSの星の数は後述するZEB(ゼブ)と同様の計算方法によって評価されます。
非住宅部分の省エネ性能の計算は、基準値と設計値を比較することで行いますが、基準値は地域・用途毎に定められた設備の仕様によって算出されます。
非住宅建築物における省エネ計算の具体的な方法としては、外皮性能を間接的に反映した「基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の比(BEI)」を求め、数値が1.0以下であれば基準適合と判断されます。
以下で、非住宅における評価観点を解説していきます。
外壁等の性能
非住宅のBELSにおける外壁等の性能は、「ペリメーターゾーン」で発生する熱と出入りする熱の量で計算することが可能です。
ペリメーターゾーンとは、各階の外気に接する壁の中心線から水平距離が5m以内の室内の空間、屋根直下の階の室内の空間及び外気に接する床の真上の室内の空間のことを指します。
外壁等の性能は、非住宅のBELSではクリアしなければならない基準ではなく、より高い性能を示す基準です。適合していなくてもBELSを取得することができます。
なお、外壁基準の性能は、PAL*(パルスター)の削減率BPI(ピービーアイ)で表示され、以下の計算で評価されます。
[BPI=設計年間熱負荷係数(設計PAL*)÷基準年間熱負荷係数(基準PAL*)]
外壁基準において適合となった場合は、BELS評価書の外壁基準欄に「適合」と表示され、さらにBPIの値の表示が可能です。
消費するエネルギー量
非住宅のBELSでは、BEI値によって評価を行います。
[BEI=設計一次エネルギー消費量➗基準一次エネルギー消費量]
評価対象となる建築物において、地域区分や床面積などの共有条件のもと、実際の建築物の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量が、標準仕様(平成28年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー消費量以下となることが求められます。
設計一次エネルギー消費量は以下の通り算出します。
[設計一次エネルギー消費量=(空調設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機が消費するエネルギー合計)ー(再生可能エネルギー相当量)]
以上の計算により、下記の基準を満たしているか確認します。
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非住宅のBELSの星の考え方
国が定める省エネ基準から、どの程度消費エネルギーを削減できているかによって、☆の数にて評価されます。
非住宅は「50% 以上の削減率」を上限とした 7 段階評価です。
省エネ基準は星1つ以上、誘導基準は星 3つ以上となります。
※ただし、大規模非住宅の場合、工場等は25 %以上削減、事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等は20 %以上削減、病院等・飲食店等・集会所等は15%以上削減することで省エネ基準達成となります。
国土交通省「事業者向けガイドライン概要版資料」より引用
ZEB(ゼブ)とBELSの違い
ZEBとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目的とした建物です。
ZEBを取得するには、BELSで6つ星を満たす性能に加え、エネルギーを創り出す必要があります。
なお、創り出すエネルギーは、評価対象建築物と同一敷地内に設置する太陽光発電設備のみで、設備の所有者は問いません。
BELSの星の算定においては、太陽光発電設備の電力を全量自己消費することが前提です。しかし、ZEBにおいては全ての電力量を電力会社に売ってしまう場合を除き、一部でも使用していれば全量をZEBの評価に含めることができます。
ZEBとBELSの違いについて、以下でより詳細に解説していきます。
評価対象部分はBELSよりも限定的
BELSでは、建物全体だけでなく、フロア毎やテナント区画毎の申請が認められていますが、ZEBの場合は太陽光設備を建物全体で導入する観点から、下図の通り評価対象がBELSよりも限定的になっています。
評価対象単位 | 評価対象 | BELS対象 | ZEB対象 |
建物 | 非住宅のみの建築物全体 | ◯ | ◯ |
フロア | 非住宅の任意の階(建築物全体が1フロアの非住宅用途である場合を除く) | ◯ | ✖️ |
テナント | 任意の店舗等部分(建築物全体が1つの店舗等である場合を除く) | ◯ | ✖️ |
部分 | 複合建築物の非住宅部分全体 | ◯ | ◯ |
任意の部分(上記評価対象を除く) | ◯ | ✖️ |
ZEBのランクについて
ZEBは、基準値からのエネルギーの削減率と再生可能エネルギーを見込めるかどうかによって下記4種類に分類されます。
- ZEB
- Nearly ZEB
- ZEB Ready
- ZEB Oriented
ZEBに種類があるのは、太陽光発電設備の設置が難しい場所や晴天が少ない地域でも評価ができるようにするためです。地域によって気候や環境が異なるため、ZEBの取得難易度を調整するよう配慮されています。
4つを分類する評価指標としては「太陽光発電設備から創り出される再生可能エネルギーを見込める場合/見込めない場合」の2つがあります。
「ZEB」と「Nearly ZEB」は太陽光発電設備の導入は必須とされており、それ以外の「ZEB Ready」や「ZEB Oriented」は太陽光発電設備が未導入の場合でも、基準値からのエネルギー削減量が十分に大きい場合は評価を受けることが可能です。
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BELS申請は非常に手間がかかる業務で、設計事務所が当該業務を行うと本来集中すべき設計などの業務に支障が出る恐れがあります。
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