近年、長期優良住宅について関心を持つ人が増えてきました。
長期優良住宅とは、気密・断熱性能が高いことで住み心地が良く、一定水準の耐震性能を備えた家です。
長期優良住宅だと将来的にもリフォームがしやすく、売却時も高い金額での販売が期待できます。
一方で、長期優良住宅だと通常より多くの建築費や維持費などが必要になるというデメリットもあります。
この記事では長期優良住宅として認められることのメリット、デメリットについて解説しています。
長期優良住宅の認定を受けるべきか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、長い期間良好な状態で暮らすための措置が講じられた住宅です。
長期優良住宅は、国によって定められた『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』に基づいて認定されます。
長期優良住宅は劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、維持保全計画などの項目ごとの基準を満たしているため、住み心地が良く快適な造りになっています。
実際に認定を受けるのは新築戸建て住宅がほとんどですが、マンションなどの共同住宅や中古物件でも長期優良住宅の対象です。
長期優良住宅は、制度が始まった2009年度から2021年度までに、累計で135万戸以上に増えています。
出典:住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について(新築版)」
長期優良住宅の4つのメリットとは
長期優良住宅として認定されると、税制面や住宅ローンの金利面でメリットがあります。
長期優良住宅を建てる具体的なメリットは以下の通りです。
- 各種税金の引き下げを受けられる
- 住宅ローンの引き下げを受けられる
- 地震保険料の割引を受けられる
- 補助金を受けられる可能性がある
以下で各メリットの詳細を解説します。
①各種税金の引き下げを受けられる
長期優良住宅として認定されると、各種税金の引き下げを受けることができます。
所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税が対象です。
特に所得税の引き下げは、住宅ローン減税を受けない方でも減税を受けることができます。
以下で各税金に対する引き下げの詳細について確認します。
所得税の引き下げ
所得税の減税は、投資型減税の形態をとります。
具体的には、仮に長期優良住宅として認定を受けた住宅を新たに建てる場合、上限650万円までの性能強化費用相当額の10%分が所得税から控除されます。
そのため、所得税から最大65万円が控除されることになります。
(令和4年1月1日から令和5年12月31日までに入居した者が対象)
また、住宅ローン減税が拡充しました。借入金額、控除期間が変わり、最大控除額が増えます。
居住年 | 借入限度額 | 控除期間 | 控除率 | 最大控除額 | |
新築住宅・買取再販 | 令和4年〜5年 | 5,000万円 | 13年 | 0.7% | 455万円 |
令和6年〜7年 | 4,500万円 | 409.5万円 | |||
既存住宅 | 令和4年〜7年 | 3,000万円 | 10年 | 210万円 |
参考:国土交通省「認定長期優良住宅に対する税の特例」
登録免許税の引き下げ
住宅取得時には物件名義を施主名義にする不動産保存登記が必要で、一般的な住宅では0.15%の登録免許税が必要になります。これが長期優良住宅になると0.1%に軽減されます。
また、移転登記でも軽減を受けることができ、一般住宅では0.3%必要なところ、0.2%に軽減されます。
(令和6年3月31日までに取得した者が対象)
不動産取得税の引き下げ
不動産取得税も引き下げがあります。
一般住宅であれば課税金額から1200万円の控除ですが、長期優良住宅では1300万円の控除になります。
(令和6年3月31日までに新築された住宅が対象)
固定資産税の引き下げ
一般的な戸建て住宅の場合、最初の3年であれば固定資産税の2分の1を軽減できますが、長期優良住宅の場合は軽減期間が5年間に拡大します。
このように、長期優良住宅の認定を受けることで、各税金が軽減されるメリットがあります。
(令和6年3月31日までに新築された住宅が対象)
②:住宅ローン金利の引き下げを受けられる
長期優良住宅と認められることで、住宅ローン控除が受けられます。
具体的には、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している、長期固定金利住宅ローン制度であるフラット35Sの利用が可能です。
一般的な規模の戸建て住宅で長期優良住宅とそうでない住宅を比べた場合、控除の総額が150万円ほどになることもあります。
長期優良住宅の認定を受けることより、住宅購入のコストを抑えられることもメリットです。
出典:住宅金融支援機構「フラット35S」
③:地震保険料額割引を受けられる
長期優良住宅の認定を受けることで地震保険料を下げることができます。
長期優良住宅の認定基準には、最低限の耐震性能を保証する耐震等級1(倒壊等防止)以上の性能が求められます。
※構造や計算方法によって認定基準が異なります。
耐震等級は最高で3まであり、割り引き額も等級に応じて上乗せされます。耐震等級1なら10%、2なら30%、3なら50%の割引を受けることが可能です。
長期優良住宅として認められることで、地震保険料の引き下げにつながります。
④:補助金を受けられる可能性がある
長期優良住宅の認定を受けることで、これまで紹介してきた控除や割引とは別に補助金を受けられる可能性があります。
例えば、「こどもエコすまい支援事業」では、所持する住居が一定水準以上の省エネ性能を有する場合、認定長期優良住宅は1戸あたり100万円の補助を受けられます。
これは23年度の事業ですが、これまでも「こどもみらい補助金」で1戸当たり80万円補助されるなど、長期優良住宅に対する補助対策がありました。
出典:国土交通省「こどもエコすまい支援事業」
長期優良住宅のデメリット・リスク
これまで長期優良住宅の概要や利点について触れてきました。
しかし、長期優良住宅の認定を検討する上で注意したいデメリットもあります。
具体的なデメリットは以下です。
- 長期優良住宅の認定には費用と時間がかかる
- 長期優良住宅の基準適合に追加で費用がかかる可能性がある
- 着工に時間がかかる可能性がある
- 定期点検をする必要がある
以下で詳細に解説します。
①:長期優良住宅の認定には費用と時間がかかる
長期優良住宅の認定を受ける場合は、通常に比べて費用と時間がかかるケースが多いです。
長期優良住宅として認定を受けるためには、省エネルギー性・耐震性などの認定基準を満たす必要があります。
認定を受けるにあたり、省エネルギー性能を高めるために壁の中の断熱材の量を2倍にしたり、高性能サッシや高効率給湯器などを採用したりしなければなりません。
また、認定を受けるまでに費やす時間も増える可能性があります。
設計段階で基準を満たす詳細な数値の算出が求められるため、必要な時間が上乗せされるのです。
長期優良住宅の認定を受けるには、通常の場合と比べて費用と時間がかかります。
②長期優良住宅の基準適合に追加で費用がかかる可能性がある
長期優良住宅としての基準を満たすために、建材の確保など追加で費用がかかります。
仮に、最初の段階で長期優良住宅認定を受ける想定がなかった戸建て注文住宅を途中から変更した場合を想定します。
気密・断熱と省エネ性能の向上や耐震性能の確保のため、特別な性能を持つ建材が必要になり、当初の見積より数100万円以上、場合によっては1000万円以上の費用がかかる可能性があります。
長期優良住宅として認定を受けるには、通常の場合と比べて費用が増えるケースが多いです。
③着工に時間がかかる可能性がある
長期優良住宅の認定を受ける場合、着工前の設計段階で一般的な住宅より詳細な省エネ計算を行なう必要があります。
そのため、通常のケースと比べて着工までに時間がかかります。
また、施主の要望により途中で変更を加える場合も、その都度計算し直す必要があります。
さらに、担当者の経験によっても着工までの時間が変わります。経験が浅い担当者の場合だと、途中で仕様変更する際の対応に時間がかかる可能性が高いです。
長期優良住宅の認定の取得を希望する場合は、あらかじめ伝えておくことが重要です。
④定期点検をする必要がある
長期優良住宅では、定期点検が必要になります。
長期優良住宅の場合、建築前に提出した「維持保全計画」に従って、住宅性能の維持が必要です。
梁や柱などの主要構造材に対しては10年に1度の点検が必要であり、状況によっては補修や交換などのメンテナンスを必要とします。
また、地震などの自然災害に見舞われた際も臨時点検が必要です。
設計段階から一般的な戸建て住宅にはない小さな点検ハッチをいくらか設ける必要があり、わずかですが建築コストが上乗せされます。
住宅性能評価を検討しているなら「環境・省エネルギー計算センター」に相談しよう!
今回は、長期優良住宅のメリットとデメリットについて詳しく解説してきました。
長期優良住宅は、各種税金の引き下げや住宅ローンの引き下げなど、多くのメリットがあります。
これと類似するのが、住宅性能評価です。
住宅性能評価は長く住み続けることに限らず、住宅全体の品質の良さを評価された住宅を指します。
2022年10月の法改正により、長期優良住宅と住宅性能評価を一緒に申請することが可能となりました。
「環境・省エネルギー計算センター」では煩雑な設計住宅性能評価の申請書作成の代行を行っているので、ぜひご相談ください。
※補助金の詳細に関しましては管轄している事務局や行政庁にご確認ください。
このコラムに関して詳細を確認したい場合や、省エネ計算届出に関しての質問などはお気軽にお問い合わせください。
※個人の方はまずは身近な設計事務所や施工会社にご相談された方が手続きがスムーズです。